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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第122話 激しい戦いの中で
しおりを挟むそれは、激しい戦いだった。
襲いくる魔物達を相手に、騎士、リアナを含む金級ハンター、そして異世界から召喚された勇者達は必死になって戦ったが、やはり魔術師達の支援が無い為、戦況は魔物達の方が優勢だった。
それでも金級ハンター、特に紅蓮の猛牛のメンバーは、日頃から様々な状況下で魔物を相手にしていたので、全員、
「これくらいなんだ!」
と言わんばかりの勢いで、次々と魔物を倒していった。
そんな彼らの姿を見て、リアナをはじめとした他の金級ハンターや、セイクリア王国とウォーリス帝国の騎士達も、
「こっちだって絶対負けてなるものか!」
と、持てる力を最大限発揮していった。
そして、鉄雄ら「勇者」達はというと、
「ウォオオオオオオオッ!」
目の前にいる黒いオーラを纏った狼の様な魔物、「邪神の眷属」を相手にしていた。今、鉄雄の拳による打撃が、その邪神の眷属に向かって放たれた。
ズゴン!
自身の武器である頑丈な籠手で覆われた拳が、邪神の眷属の額に当たった。
だが、邪神の眷属には効いてなかった。寧ろ、「で?」と言っているかの様に、真紅の両目を細めて鼻で笑った。
「こ、こいつ!」
それが、鉄雄の怒りをさらに加速させた。
「このぉっ!」
そこへ、勇者の1人である詩織が、持っている小振りの剣を振るった。
剣は邪神の眷属の後ろ足を斬りつけたが、その傷は瞬時に消えた。
「うそぉ!?」
詩織が驚いていると、そこへ邪神の拳による後ろ足蹴りが襲いかかってきた。
「危ない!」
だが、間一髪の所で、詩織は歩夢によって救助され、攻撃を受けずに済んだ。
その時、
「「「はぁっ!」」」
残りの勇者である、恵樹、美羽、彩織による魔術(春風が作った指輪にインストールされたもの)が炸裂した。因みに、恵樹が土魔術の「アース」、美羽が風魔術の「ウインド」、彩織が水魔術の「ウォーター」だ。
3人の魔術を見て、一部のハンターが
「な、何であいつら魔術使えるんだ!?」
と驚きの声をあげた。それは神官達も同様だった。
するとそこへ、
「んなもん、『勇者』だからに決まってんだろ!?」
と、別のハンターがそう答えたので、先に驚きの声をあげた者は、
「そうか。それじゃあ仕方がないな」
と言って、納得した表情を浮かべた
話を戻して、3人が放った魔術が、邪神の眷属にもろにヒットしたが、それでも多少体勢を崩しただけで、それほどダメージ与える事が出来なかった。
鉄雄達の攻撃が終わると、邪神の眷属はジィッと彼らをジィッと睨んだ。
すると次の瞬間、邪神の眷属の額がパックリと割れて、そこから何かが出てきた。
それは、両目と同じ真紅に染まった「第3の目」だった。
「う、キモッ!」
詩織が小声でそう呟いたその時、邪神の眷属はその第3の目をギラリと輝かせた。
「ウォ!」
「まずい!」
鉄雄達は咄嗟に防御の体勢をとったが、それから少し時間が経っても、どこも異常は無い事に気がついて、
「にゃろう、ぶっ潰してやる!」
と、ただのハッタリかと思った鉄雄は、怒りのままに邪神の眷属に突撃した。それと同時に、詩織、歩夢も、武器を構えて突撃した。
しかし、彼らは知らなかった。
邪神の眷属がしたのは攻撃では無いということと、その対象になったのは鉄雄ら「勇者」達でも、リアナや他のハンター達、さらに騎士達でも無いということ。
ならば対象になったのは誰か?
それは、シャーサルの内部にいる、ちょっとユニークな1人の少年だった。
残念なことに、それに気付いたのはこの場には誰一人いなかった。
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