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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第121話 戦いの始まり
しおりを挟むシャーサルの門の外では、既にセイクリア王国とウォーリス帝国の騎士達、そして、金級以上のハンター達が集まっていた。
エルードを代表する2つの大国の騎士達は、それぞれ装備を整えしながら、来る戦いに備えていた。
一方ハンター達はというと、その殆どは武闘派集団である巨大レギオン「紅蓮の猛牛」のメンバーで、全員が邪神の眷属と大量の魔物達の到着を、今か今かと待ち構えていたが、一部のハンターの中には、少々暗い表情をしている者もいた。何故なら、いくら実力があるとは言っても、魔術師達がいない状態では何処までいけるのかわからず、不安で仕方がないからだ。
そんな状況の中、シャーサルの門を潜って、リアナと鉄雄ら「勇者」達が合流した。
五神教会の神官達に迎えられた鉄雄達に、ウォーリス帝国の騎士達とハンター達の、期待と疑念に満ちた視線が向けられる。
その視線を受けて、鉄雄らは少々萎縮したが、神官達に励まされて、なんとか自身を奮い立たせた。
その時、
「おいみんな、あれを見ろ!」
と、ハンターの1人が目の前を指差してそう叫んだ。
騎士とハンター達が一斉にその方向を向くと、遠く離れた位置に、1つの大きな集団が見えた。
それは大小様々な種類の魔物の群勢だった。その数は100を軽く超えていて、それら全てが、このシャーサルに向かってゾロゾロと近づいてきた。
そして、その中心にいるのは、黒いオーラを纏った、大きな狼の様な魔物だった。
別のハンターが呟く。
「奴だ、『邪神の眷属』だ」
その呟きが聞こえたのか、勇者の1人、鉄雄が心の中で呟いた。
(あいつが、邪神の眷属!)
そう呟いた瞬間、鉄雄の顔をたらりと冷や汗が流れた。
鉄雄だけじゃない。美羽達も同様だった。
一方リアナはというと、目の前にいる邪神の眷属と呼ばれた狼の様な魔物を見て、とても複雑な思いを抱いていた。
「お父さん……」
周囲に聞かれない様に小さい声でそう呟いたリアナの脳裏に浮かんだのは、赤ん坊の頃から自分を育ててくれた、もう1柱の神である「ループス」だった。
3年前、リアナが14歳になったある日、
「すまない、ちょっと準備したい事がある」
とそう謝罪すると、ループスは家を出ていったまま1度も帰ってこないで、やがて音信不通になった。
それから1年後、15歳になったリアナは家を出てシャーサルに向かい、そこでハンター活動を始めた。
さらに1年後、ハンターとしての生活に慣れてきた頃、
「『邪神の眷属』を名乗る魔物が現れた」
という噂を聞き、それがループスの仕業だと確信する。
そして、17歳になったある日、仕事中に精霊達を通してヘリアテスから、
「セイクリア王国で『良くない事』が起こってます!」
と聞かされて、急いでセイクリア王国に向かい、その『良くない事』が起こった王城の中に侵入し、そこで春風に出会い、共に騎士達をぶちのめし、王国を脱出した。
その後、ヘリアテスのもとに戻り、春風の事情を知り、共に世界を救おうと誓い合い、現在に至る。
さて、話が逸れたが、リアナがそんな感じに思いに耽っていると、魔物の群勢はシャーサルの数メートル前でピタッと動きを止めた。それと同時に、騎士やハンター、そして鉄雄ら勇者達も、それぞれ武器を構えた。
両者がジィッと睨み合っていると、「邪神の眷属」が一歩前に出て、目の前を見回した。まるで「血」を思わせる真紅の両目が、騎士やハンター達を僅かにビビらせた。
そして、一通り見終えると、「邪神の眷属」は、
「オオォーーーンッ!」
と、天に向かって大きく吠えた。
それが合図なのか、次の瞬間、それまで止まっていた大量の魔物が、一斉に突撃した。
それに対抗する様に、セイクリアの騎士であるディックが、声高々に叫ぶ。
「全員、戦闘開始っ!」
その叫びに続く様に、騎士、ハンター、勇者達も、一斉に魔物の群勢に向かって突撃した。
かくして、シャーサルを守る為の戦いが始まった。
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