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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第104話 勇者&王族一行、ご案内
しおりを挟む「折角こうして同郷の方々と再会したわけですから、このシャーサルの中を案内しながら、勇者の皆さんとお話しすると良いでしょう。なぁに、別にこの都市の全てを説明しなさいというわけではありませんよ。あなたが今日までお世話になった場所だけで良いですので。あぁ、勿論、報酬の方もきちんと用意しますから」
と、フレデリックにそう説明された春風達「七色の綺羅星」は、少し納得出来ないと思いながらも、クラスメイト達と王族達を案内する事になった。といっても、フレデリックの言う様に「都市全部」というわけじゃなく、春風がこの都市に来てから今日までに、沢山お世話になった所を中心に案内した。
そして現在、
「ここが俺達の拠点です」
『おぉーっ!』
春風達は住宅区にある「七色の綺羅星」の拠点前に来ている。立派な造りをした大きな一軒家を前に、クラスメイト達と第2王女イブリーヌは驚きを隠せないでいた。
すると、玄関の扉がガチャリと開いて、
「あれ? ハル兄さん達、どうしたの?」
と、中から1人の少女が出てきた。
「あぁ、フィナ。今フレデリック総本部長さんからの依頼でね、彼らを案内していたんだ」
「彼ら?」
「俺の同郷って言えばわかるかな?」
「! あぁ……」
そう言うと、少女フィナはクラスメイト達の方を向いて、
「はじめまして、『七色の綺羅星』のメンバー、フィナ・フォードといいます」
と、丁寧に挨拶をした。
それを見て、ハッとなったクラスメイト達は、
「どうも。勇者の朝日鉄雄です」
「同じく勇者の、野上恵樹でーす」
「天上美羽です」
「氷室彩織です」
「双子の妹の、氷室詩織でーす」
「海神、歩夢です」
と、1人ずつ挨拶を返した。
そして、
「はじめまして、わたくしは、セイクリア王国第2王女の、イブリーヌ・ニア・セイクリアといいます。そしてこちらにいる2人の騎士は、男性の方はディック、女性の方はルイーズ。2人共わたくしの護衛です」
と、イブリーヌも丁寧なお辞儀でそう返し、それに続く様に、ディック、ルイーズと呼ばれた2人の騎士もお辞儀した。
それを見てフィナは、
「お初にお目にかかります、フィナ・フォードと申します。この様な格好で出てきてしまい、申し訳ありません」
と言ってクラスメイト達以上の丁寧なお辞儀をすると、
「ああ、そんなに畏まらないでください! 突然来てしまったこちらが悪いですので、どうか顔を上げてください!」
と、イブリーヌは慌ててフィナに顔を上げるようにと言った。
「……では、失礼します」
フィナはそう言ってゆっくり顔を上げると、
「ハル兄さん、お茶の用意とかは要りますか?」
と、春風の方を向いて尋ねた。
「いや、今は仕事中だよ。これからもう少しこの都市を案内するから」
「そうですか、わかりました」
「ところで、イアン達はどうしたの? なんか静かな様子だけど」
「イアン達ならケイトとクレイグと一緒に買い物に出かけました」
「そっか、わかったよ」
「ああ、それと……」
「? 何?」
そのやり取りの後、春風とフィナはクラスメイト達から少し離れた位置に移動して、
「姫様達が来たのを見かけて、姉さんがすぐに隠れてしまったんですけど」
「あー、それなら俺達は、すぐにこの場を離れるよ」
「ありがとうございます」
周りに聞こえないようにそうやり取りした後、春風はフィナから離れて、
「さぁみんな、案内の続きだよ」
と、手を叩きながらそう言うと、若干ポカンとしている者達を連れてその場を後にした。
それから暫くの間、少々一悶着ありながらも、春風達はシャーサルの中を案内すると、ギルド総本部に戻り、フレデリックに終了の報告をした。
一方その頃、シャーサルの門では、いつもの様に門番のロナルドが仕事をしていると、
「ん? おい、今何か通らなかったか?」
と、ふと「何か」が通り過ぎた気配を感じて、相方に尋ねた。
「え? さあ、気のせいじゃないか?」
と、本当に気づいてない様子の相方がそう答えると、
「うーん。そうかもしれないな」
と言って、ロナルドは再び仕事に戻った。
しかし、彼らは気づかなかった。
何故なら、それは決して気のせいではなく、確かに小さな「何か」が、シャーサルの門を潜って都市内部に入ったのだ。
そして、その小さな「何か」は、周囲の人達に見つからない様にシャーサルの中を進んでいた。
すると、
「アレェ? これって……」
と、1人の少女がその「何か」の存在に気づいて、それを拾い上げた。
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