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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第105話 仕事が終わって……
しおりを挟むクラスメイトと王女達の案内を終えた春風達「七色の綺羅星」は、フレデリックから報酬を受け取ると、今日はもう遅いということで、自分達の拠点に帰ることにした。帰り際、女性騎士のルイーズにずっと睨まれたままだったが、いちいち気にしても疲れるだけだと考え、そのままスルーすることにした。
一方クラスメイト達はというと、「また春風達の拠点に行きたい」と言っていたが、五神教会からお目付役として配属された神官達が、
「人類の希望である勇者様方は、あの様な連中と一緒にいるべきではない」
と言って許してくれなかった。
当然クラスメイト達は文句を言ったのだが、それでも許してくれなかった為、皆渋々諦めることにして、用意された宿へと向かった。
さて、春風達だが、貰った報酬がけっこうな額だった為、拠点に向かう途中で何か買っていこうかと相談しあったが、結局どこにも寄らないということになり、その後厄介事に遭遇することなく拠点に着いた。
「ただいま」
と、春風がそう言って玄関の扉を開けると、
「「「おねにーちゃん達おかえりなさい!」」」
と、幼いイアン、ニコラ、マークが元気良く迎えてくれた。
「おぉ~、みんな良い子にしてたかい?」
春風はそう言って3人の頭を優しく撫でると、
「「「うん!」」」
と、また元気良く返事をした。
その後、3人の背後にフィナが現れて、
「おかえりなさい」
と、穏やかな笑みで言った。
「ただいま、フィナ。今日は報酬結構貰ったよ。もし何か欲しいものがあったら、すぐに買いに行ってくるから」
「それなら大丈夫。丁度今、夕ご飯が出来たところだから」
「そっか、それじゃあ今日はもう出かけないかな……て、あ、そうだ!」
「どうしたの?」
「アリアさんの様子はどう?」
「うん、イブリーヌ姫様達が来た時は凄く警戒してたけど、今は落ち着いてるよ」
「そう」
フィナとそうやり取りした後、春風はホッと胸を撫で下ろした、まさにその時、
「あ、そうだ!」
と、フィナが何かを思い出したかの様に声をあげた。
そして視線を春風からルーシーに向けると、
「ルーシー、あなたに見てほしいものがあるの!」
「わ、私に?」
「うん、ちょっと待ってて! 今、ケイトを呼んでくるから!」
そう言うと、フィナは奥の方へと駆け出した。
それから少しすると、
「お待たせ!」
と言って、フィナがケイトを連れて戻ってきた。連れられてきたケイトをよく見ると、彼女は何かを抱えているようだった。
「えっと、どうしたのケイト?」
ルーシーがケイトにそう尋ねると、
「あのね、これなんだけど……」
そう言って、ケイトがルーシーに差し出したのは、布製の小さな人形だった。それは、三角帽子をかぶった、人間の子供の様な見た目だった。
春風がその人形を見て、
(なんだか、童話に出てくる『小人』みたいだな)
と考えていると、ハッとなったルーシーが、
「あ、これ!」
と、驚きに満ちた声を上げた。
それを見て春風が、
「ど、どうしたの?」
とルーシーに尋ねると、
「こ、これ、おじいちゃんが作った人形、です!」
と答えた。
その答えに春風が「へ?」と首を傾げていると、ルーシーはケイトに詰め寄って質問した。
「ど、どうしたの、これ!?」
「う、うん、今日買い物の途中で道端に落ちてたんだ。ルーシーのおじいちゃんが作ってたのを思い出して、もしかしてって思って拾ったの」
ケイトはルーシーを落ち着かせようとしてそう説明した、その時……。
ブルッ!
『!?』
突然、持っていた人形が震えだしたので、ケイトは驚いたその手を離し、人形を床に落とした。
春風達が何事かとその人形から一歩下がると、人形は先程以上にブルブルと震えだし、次の瞬間、ゆっくりと起きて立ち上がり、周囲をジィッと見回した。
そして、最後にルーシーの方を向くと、
「る、ルーシー? ルーシーなのかい?」
と、声を発したのだ。
その声に驚いた春風達は、それぞれ武器を構えようとすると、
「ま、待ってください!」
と、何故かルーシーが大慌てで止めに入った。
春風は「ど、どうしたの?」とルーシーに尋ねようとすると、ルーシーはその人形に近づいて、
「そ、その声、もしかして、おじいちゃん?」
と、起き上がったその人形に尋ねた。
その言葉に春風達は、
『……え?』
と「?」を浮かべて、一斉に視線をルーシーに向けた。
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