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間章2
間話11 深まる謎と、大きくなる不安
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*間章2最終話です。
「ちょっと待ってください」
水音の話によって、食堂内にいる全員が顔を真っ青にして沈黙する中、最初に口を開いたのは、第一王女のクラリッサだった。
「あの男があの表情をした理由が、私達があの男の『大切なもの』を傷つけたからなのですか?」
信じられないという表情をしながら震えた声で尋ねるクラリッサを見て、水音は答えることを躊躇ったが、
「恐らく、そうだと思います」
と、真っ直ぐクラリッサを見てそう言った。
その答えを聞いて、クラリッサはガタっと音を立てて椅子から立ち上がると、
「そんなの信じない! 信じられるわけない!」
と叫んで、そのまま食堂を出ていった。
「マーガレット、クラリッサを頼む」
「はい、わかりました」
ウィルフレッドにそう言われて、マーガレットも食堂を出ていった。
「ふう、さて水音よ」
「はい」
「先程の話からして、兄弟子殿はそのまま子供達を救出に向かったのだな?」
「……はい」
「師匠殿は、止めなかったのか?」
「……いいえ、普通に送り出してました。その際、一振りの刀を持たせて」
「刀?」
「祖国の剣の総称です」
水音がそう言った瞬間、クラスメイト達が、
「冗談だろ?」
「兵器持った連中相手に刀一本って……」
と言ってざわざわしだした。
そんな彼らを他所に、ウィルフレッドは恐る恐る水音に質問する。
「……それで、彼はその後どうなったのだ。こうして其方達と共に召喚されたという事は、彼は成功したのか?」
「はい、その後、彼は無事に帰ってきました。さらわれた子供達を全員救出しただけじゃなく、敵の最新兵器というおまけ付きで」
『幸村(君)スゲェ!』
「……そうか」
ウィルフレッドはその答えを聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。
「これが、2年前に遭遇した出来事の全てです」
「凄い少年なのだな、其方の兄弟子殿は」
「はい、本当に……凄い奴なんです」
水音がそう言った瞬間、食堂内は再び沈黙に包まれた。
だが、それからすぐに、
「あのぉ、ちょっと良いかな?」
と、1人の眼鏡をかけた「お調子者」を思わせる印象の少年が手を上げた。
「どうした? 野上」
小夜子に尋ねられて、野上と呼ばれた少年はポリポリと頭を掻きながら気まずそうに答える。
「いやぁ、桜庭君の話を聞いて、幸村君が凄い奴だってのは理解出来たんですけどぉ、やっぱりどうしてもわからないことがあるんですよねぇ」
「わからないこと?」
「幸村君が言ってた『他の世界に迷惑をかけた』って部分だけど、今までの話からして、この『他の世界』って、俺達が暮らしてた『日本』……いや、『地球』ってことになるんですよね?」
「まぁ、そういうことになるな」
「で、その『地球』が今、この世界……ていうより、セイクリア王国に迷惑をかけられたから、彼はあんなに怒ってたってことになるんですよね?」
「……何が言いたいんだ?」
ギロリと小夜子に睨まれて、ビクッとなった野上は焦りながら答える。
「あぁ、いや、えっとですね、『地球が迷惑をかけられた』って話ですが、問題は、幸村君が、どうしてそれを知っていたのかってことと、そのことを『いつ』、『どこで』、『どうやって』知ったのかがわからないなぁってことなんですけど……」
『!?』
その瞬間、勇者達とウィルフレッド、そして第2王女のイブリーヌの中で、疑問が生まれた。
「確かにそうだ!」
「俺ら、全然知らないよな?」
「どうして幸村君だけ?」
と、勇者達が再びざわざわしだすと、
「あ、あの、私達もちょっと、良いですか?」
と、今度は同じ顔をした黒いショートヘアの2人の少女が手を上げた。
「ど、どうしたんだ? 氷室」
小夜子に氷室と呼ばれた2人の少女。1人は何かに怯える様に体を震わせていて、もう1人はそんな彼女を心配そうに見ているが、こちらも何やら青ざめた表情をしていた。
「あ、あの、私……」
震えている方の少女は答えようとするが、思う様に言葉を出せずにいたので、青ざめた表情をしたもう1人が代わりに口を開いた。
「あのさ、幸村の方もわけわかんないけどさ、それと同じくらい、大事なことなんだけど……」
「な、なんだ?」
すると、震えている方の少女も、どうにか言葉を紡ぎ出す。
「あ、あの、もし、幸村君の言う様に、この国の所為で、『地球』に何かが起こったなら……」
ーーご、ゴクリ。
「私達、この世界を救っても……『地球』に帰れるのかな?」
『!?』
その瞬間、勇者達も王族達も、一斉に青ざめた表情になった。
彼らは口を動かして何か言おうとしたが、残念なことに、答えられる者は誰もいなかった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で間章第2弾は終了し、次回からは本編新章を開始します。
「ちょっと待ってください」
水音の話によって、食堂内にいる全員が顔を真っ青にして沈黙する中、最初に口を開いたのは、第一王女のクラリッサだった。
「あの男があの表情をした理由が、私達があの男の『大切なもの』を傷つけたからなのですか?」
信じられないという表情をしながら震えた声で尋ねるクラリッサを見て、水音は答えることを躊躇ったが、
「恐らく、そうだと思います」
と、真っ直ぐクラリッサを見てそう言った。
その答えを聞いて、クラリッサはガタっと音を立てて椅子から立ち上がると、
「そんなの信じない! 信じられるわけない!」
と叫んで、そのまま食堂を出ていった。
「マーガレット、クラリッサを頼む」
「はい、わかりました」
ウィルフレッドにそう言われて、マーガレットも食堂を出ていった。
「ふう、さて水音よ」
「はい」
「先程の話からして、兄弟子殿はそのまま子供達を救出に向かったのだな?」
「……はい」
「師匠殿は、止めなかったのか?」
「……いいえ、普通に送り出してました。その際、一振りの刀を持たせて」
「刀?」
「祖国の剣の総称です」
水音がそう言った瞬間、クラスメイト達が、
「冗談だろ?」
「兵器持った連中相手に刀一本って……」
と言ってざわざわしだした。
そんな彼らを他所に、ウィルフレッドは恐る恐る水音に質問する。
「……それで、彼はその後どうなったのだ。こうして其方達と共に召喚されたという事は、彼は成功したのか?」
「はい、その後、彼は無事に帰ってきました。さらわれた子供達を全員救出しただけじゃなく、敵の最新兵器というおまけ付きで」
『幸村(君)スゲェ!』
「……そうか」
ウィルフレッドはその答えを聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。
「これが、2年前に遭遇した出来事の全てです」
「凄い少年なのだな、其方の兄弟子殿は」
「はい、本当に……凄い奴なんです」
水音がそう言った瞬間、食堂内は再び沈黙に包まれた。
だが、それからすぐに、
「あのぉ、ちょっと良いかな?」
と、1人の眼鏡をかけた「お調子者」を思わせる印象の少年が手を上げた。
「どうした? 野上」
小夜子に尋ねられて、野上と呼ばれた少年はポリポリと頭を掻きながら気まずそうに答える。
「いやぁ、桜庭君の話を聞いて、幸村君が凄い奴だってのは理解出来たんですけどぉ、やっぱりどうしてもわからないことがあるんですよねぇ」
「わからないこと?」
「幸村君が言ってた『他の世界に迷惑をかけた』って部分だけど、今までの話からして、この『他の世界』って、俺達が暮らしてた『日本』……いや、『地球』ってことになるんですよね?」
「まぁ、そういうことになるな」
「で、その『地球』が今、この世界……ていうより、セイクリア王国に迷惑をかけられたから、彼はあんなに怒ってたってことになるんですよね?」
「……何が言いたいんだ?」
ギロリと小夜子に睨まれて、ビクッとなった野上は焦りながら答える。
「あぁ、いや、えっとですね、『地球が迷惑をかけられた』って話ですが、問題は、幸村君が、どうしてそれを知っていたのかってことと、そのことを『いつ』、『どこで』、『どうやって』知ったのかがわからないなぁってことなんですけど……」
『!?』
その瞬間、勇者達とウィルフレッド、そして第2王女のイブリーヌの中で、疑問が生まれた。
「確かにそうだ!」
「俺ら、全然知らないよな?」
「どうして幸村君だけ?」
と、勇者達が再びざわざわしだすと、
「あ、あの、私達もちょっと、良いですか?」
と、今度は同じ顔をした黒いショートヘアの2人の少女が手を上げた。
「ど、どうしたんだ? 氷室」
小夜子に氷室と呼ばれた2人の少女。1人は何かに怯える様に体を震わせていて、もう1人はそんな彼女を心配そうに見ているが、こちらも何やら青ざめた表情をしていた。
「あ、あの、私……」
震えている方の少女は答えようとするが、思う様に言葉を出せずにいたので、青ざめた表情をしたもう1人が代わりに口を開いた。
「あのさ、幸村の方もわけわかんないけどさ、それと同じくらい、大事なことなんだけど……」
「な、なんだ?」
すると、震えている方の少女も、どうにか言葉を紡ぎ出す。
「あ、あの、もし、幸村君の言う様に、この国の所為で、『地球』に何かが起こったなら……」
ーーご、ゴクリ。
「私達、この世界を救っても……『地球』に帰れるのかな?」
『!?』
その瞬間、勇者達も王族達も、一斉に青ざめた表情になった。
彼らは口を動かして何か言おうとしたが、残念なことに、答えられる者は誰もいなかった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で間章第2弾は終了し、次回からは本編新章を開始します。
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