ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第6章 結成、ユニークなレギオン?

第87話 それぞれの「想い」

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 「……どういうつもりですか?」

 突然の提案に、フレデリックはギロリと春風を睨みつけながら質問した。それに対して、春風は臆せずに答える。

 「事情があったとはいえ、アデル君達は罪を犯しました。とても許される事じゃないとはわかっているのですが、俺は、彼らには生きてその罪を償ってほしいと思っています。でも、もし彼らがルーシーさんのことを恨んでたり憎んでたりしていたら、彼女が側にいるとその恨みと憎しみが邪魔してしまうんじゃないかとも思っているんです」

 「なるほど。それを防ぐ為に、彼女の身柄を預からせてほしいというわけですか」

 「はい、勝手なことを言ってるのは重々承知の上です」

 「それは、同じ固有職保持者としての言葉ですか?」

 「まぁ、そうですね。多分、それも理由に入っていると思います」

 「ルーシーさん本人の意志は無視ですか?」

 「そんなわけないでしょう。当然、ルーシーさんともキチンと話し合いはしますし、彼女の意志も尊重します」

 「ふむ」

 春風とのやり取りの後、フレデリックは暫く考え込むと、アデル達の方を向いて、

 「それで、あなた達はどうしますか?」

 と質問した。

 「お、俺は……」

 アデルは必死で答えようとしたが、震えているのか、その先は言えないでいた。ケイトやクレイグ、そして、アリシアも同様だった。

 ところが、

 「嫌です!」

 と、突然の声にびっくりした春風達が、一斉に声がした方に視線を向けると、そこにはソファから立ち上がっていたフィオナがいた。

 フィオナは震えた声でさらに言う。

 「私は、ルーシーと、離れるなんて、嫌です!」

 そんな彼女に、春風は真剣な表情で質問する。

 「それは、友達だから離れたくないって意味かな? それとも、恨みからそう言ってるのかな?」

 その質問に、フィオナは俯いたまま答える。

 「……恨みは、無いって言えば嘘になります。心のどこかで、ルーシーの事を恨んでいるのかもしれません。だけど……」

 そう言うと、フィオナはバッと顔を上げて、

 「だけど、それ以上に、ルーシーは私の、大切な親友です!」

 と、そう叫んだ彼女の目から、大粒の涙が溢れていた。

 春風達が視線を向ける中、フィオナはルーシーの方を向いて、

 「ごめんね、ルーシー。私、『あの時』から、ずっと言えなかったことがあるの。ブレントに、村長の息子に無理矢理連れていかれそうになった、『あの時』から」

 「!」

 その瞬間、ルーシーはフィオナを助ける為に、「呪術師」の力を使った時の事だと思い出した。

 その後、フィオナはルーシーに深々と頭を下げると、

 「あの時は、助けてくれて、ありがとう」

 と、お礼の言葉を言った。

 その姿を見て、いつの間にか震えが止まっていたアデルは、

 「そうだ。ルーシーは、大切な『友達』だ」

 そう言うと、アデルはルーシーの前に立ち、フィオナと同じ様に深々と頭を下げて、

 「ごめん、ルーシー! 俺が悪かった! あの時、俺が弱かったばっかりに、フィオナを守れなかったばっかりに、ルーシーに力を使わせてしまった! 本当に、ごめん!」

 と、謝罪の言葉を述べた。

 すると、それに感化されたのか、ケイトもクレイグも、

 「アデルだけじゃないよ! あたしも、フィオナを守れなかったから、だから、ごめんなさい、ルーシー!」

 「……俺も、ごめん」

 と、ルーシーを前に頭を下げて謝罪した。

 「み、みんな」

 ルーシーが戸惑っていると、今度はアリシアもルーシーの前に来て、

 「いや、それなら私の方が一番悪いよ」

 その言葉を聞いて、ルーシー達はアリシアの方を見た。

 「村のみんなが殺されたあの日、私がもっと早く小隊長達を止めていれば、父さんや母さんが、みんなの家族が死なずに済んだ。それを罪と呼ぶなら、私の罪の方が、一番悪くて、重い。だから……」

 アリシアは床に両膝をつくと、アデル達以上に頭を下げて、

 「みんな、ごめんなさい!」

 と、謝罪した。

 目の前で起こった一連の出来事を見て、ルーシーは、

 「ど、どうして?」

 『?』

 「どうして、みんなが、謝っているん、ですか?」

 「ルーシー?」

 「も、元はと言えば、わ、私の所為で、村のみんなが、死んだのに! 私が、お爺ちゃんや、村のみんなを、殺した、様な、ものなのに! わ、私……」

 そう叫ぶルーシーの目は、フィオナ以上の大粒の涙が溢れていた。

 そして、

 「わ、私も、ごめんなさいぃい」

 ルーシーも、涙を流しながら謝罪した。

 フィオナはそんなルーシーを、優しく抱いた。

 その側には、アデル、ケイト、クレイグ、アリシアだけでなく、いつの間にかソファから立ち上がっていたイアン、ニコラ、マークも寄っていた。

 そんな彼女達を見て、リアナは「うぅ」と涙を流し、フレデリックは「ふふ」と穏やかな笑みを浮かべていた。

 そして春風は、

 (良かったね、ルーシーさん)

 と、にこりと笑顔をルーシー達に向けた。
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