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第6章 結成、ユニークなレギオン?
第85話 ルーシー・トワイライト
しおりを挟むその後、ルーシーはぎこちなさそうに、自身についてと「あの日」の出来事について話し始めた。
ルーシー・トワイライトは、元々アリシア達の村の生まれではなかった。
彼女は生まれた時から、既に職能を持っていた。
固有職能「呪術師」。それは、相手に悪い影響を及ぼす「呪い」と、逆に良い影響を及ぼす「呪い」を操る職能である。
彼女はこの職能の所為で、幼い時に両親に捨てられた。寂しさと飢えに苦しむ中、彼女は1人の年老いた男性に出会い、以後は彼の孫として世界中を旅した。その後、2人の安住の地として立ち寄ったのが、アリシア達の村だったのだ。
ルーシーは最初、中々村人達に心を開く事が出来ずにいたが、村の少女であるフィオナとの出会いをキッカケに、彼女の姉のアリシア、フィオナと同い年のケイト、アデル、クレイグと仲良くなり、ルーシーは少しずつ村に馴染んでいった。
それから数年後。15歳になったフィオナ、アデル、クレイグ、ケイトの順に職能が授けられた。授かった職能は、フィオナが「薬師」、アデルが「軽戦士」、クレイグが「重戦士」、ケイトが「狩人」だ。
フィオナ達が職能を授かった事に喜んでいる中、ルーシーは1人、不安に苛まれていた。何故なら、既に固有職能を持っていた彼女にとって、職能を授かるという事は、自分の正体が知られてしまう事になるからだ。ただでさえその所為で実の両親に捨てられたというのに、大切な友達であるアデル達、特に一番の親友であるフィオナに嫌われてしまったらどうしようという恐怖が、彼女の心を蝕んでいた。
そんな彼女を励ましたのは、ずっと側にいてくれた祖父だった。実は、彼もまた固有職能「人形使い」の固有職保持者だったのだ。
祖父はルーシーに優しく言った。
「それなら、ここを出てまた旅に出ようか。なあに、私だってまだまだ動ける。若いもんには負けないよ」
祖父の言葉に、ルーシーは少しだけ恐怖が和らぐのを感じた。
(そうだ。バレて嫌われるくらいなら、いっそこのまま村を出てしまおう)
と、そう考える様になっていた。
しかし、それから間も無くして、「事件」が起こった。
村長の一人息子が、フィオナを無理矢理自分のものにしようとしたのだ。
彼は、村の誰よりも強力な職能を授かっていた。普段はアリシアによって止められていたが、当の彼女は教会にスカウトされて村を出ていた。さらに不幸な事に、15歳になったフィオナは村で一番の美少女だったので、それが彼の歪んだ欲望に拍車をかけていた。
当然、アデル達はそれを阻止しようとその息子に立ち向かったが、職能を授かったばかりの彼らでは、息子どころかその取り巻き達にも勝てなかった。
そして、いよいよフィオナが連れて行かれようとしたその時、ルーシーの怒りが爆発した。
「ゆ、許さない!」
ルーシーは息子と取り巻き達に向かって叫んだ。
「呪われろっ!」
すると、息子達に次々と不幸が襲い掛かり、1人、また1人と倒れた。特に息子が一番の不幸に襲われ、彼もまたその力の前に倒れた。
こうしてフィオナは救われたが、同時にルーシーの正体が知られる事になった。
その後、断罪官がアリシアを連れて村に来て、彼らによって村人達が殺害され、祖父もまたルーシーを庇って死んだ。そして、アリシアによって隊員たちが倒され、生き残ったルーシー達は村人達を全員埋葬し、住んでいた村を後にし、各地を放浪した後、シャーサルの近くの森に隠れ住み、盗みを働いて、春風に出会ったという。
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