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第6章 結成、ユニークなレギオン?
第84話 異端者
しおりを挟む「ほう、彼女がそうなのですか?」
「ええ、そうです」
春風のその言葉に、総本部長室内に緊張が走った。
アリシア達は何か言おうとしたが、それよりも早くルーシーが口を開いた。
「……ど、どうして、そう思ったんですか?」
気の弱そうな口調でそう尋ねられて、春風は落ち着いた表情で答える。
「ウォーレン大隊長に技(正確にはそう呼べる代物じゃないけど)を放とうとした時、何か温かいものに包まれた感覚がして、その後『大丈夫』って言う声が聞こえたんだ。で、その声がした方向をチラリと見て、その先にいたのが君だったんだ」
「そ、それだけじゃ、私だとは限らないじゃないですか?」
「勿論それだけじゃないよ。さっきも言ったけど、あの温かいものに包まれたあの感覚、あれスキル使ったでしょ? それも、特別なスキルを。実は俺、その辺りの『力』を感じ取る事が出来るんだ。だからわかったんだ、声と一緒にスキルを使ったのも君だということがね」
「……」
「そしてここからが重要なことだけど、ルーシーさん」
「は、はい」
春風は一旦深呼吸すると、真剣な表情になって、
「君は、『固有職保持者』だね?」
「!?」
その言葉が出た時、その場は先ほど以上の緊張が走った。
「ど、どう、して……」
ルーシーはなんとか質問しようとしたが、驚きのあまり思う様に口を動かせずにいた。
春風はそんなルーシーに、真剣な表情を崩さずに答える。
「君が使った特別なスキルを受けた時に感じたんだ。『あ、これ俺が専用スキルを使った時の感覚に似てるな』ってね」
春風がそう答えたその時、
「ちょ、ちょっと待て! 『専用スキル』だと!? き、君は一体!?」
と、驚いたアリシアが春風に問い詰めてきた。
「俺? 俺は……」
春風はそう言いかけて、チラリとリアナの方を見ると、
「ごめん、リアナ」
と一言謝罪して、再びルーシーに向き直り、自身のステータスウインドウを開いて、とある項目を見せた。
「俺は、君と同じ『固有職保持者』だよ。職能名は、『見習い賢者』だ」
それを聞いた瞬間、リアナは「ちょ、ハル!?」と驚き、アリシア達は『ええっ!?』と叫び、フレデリックは険しい表情になった。
「わ、私と、同じ?」
「ああ、そうだよ。君と同じさ」
狼狽えながら尋ねるルーシーに春風がそう答えると、ハッとなったアリシアが春風に詰め寄った。
「ま、待ってくれ! 君は……君は『賢者』なのか!?」
「いえ、『賢者』は『賢者』でも、未熟な『見習い賢者』ですが」
「だが『賢者』なのだろう!?」
「……まぁ、そうですね」
そのやり取りを見て、ソファに座っているフィオナが、アリシアに質問した。
「姉さん、何か知ってるの?」
「ハッ! いや、それは……」
アリシアがどう答えていいのか迷っていると、それまで黙っていたフレデリックが口を開いた。
「『賢者』とは、この世界で最初に生まれた固有職保持者の職能で、教会からは『最初の固有職保持者』の他にも、『始まりの悪魔』とも呼ばれていますね?」
フレデリックにそう尋ねられると、アリシアは気まずそうに、
「……はい、その通りです」
と答えた。
重苦しい雰囲気の中、春風が「あーはいはい」と軽い感じで口を開いた。
「ま、俺の事はひとまず置いといて、だ。ある人の話によれば、教会では固有職保持者を『国殺しの悪魔』として異端視しているという。そんで、断罪官なんていう物騒な連中が、神にあだなす『異端者』をぶっ殺している。つまり、奴ら……ていうか教会が言っている『異端者』てのは、固有職保持者だという事で間違いないだろう」
「……」
「で、ここからは余計な事なんだけど、アリシアさん達から聞いた話からして、君の事が断罪官に知られたのって、もしかして何かのキッカケで人前でその力を使ってしまって、それを見た誰かが教会に話してしまった……って感じかな?」
「!」
「あ、あの、それは……」
春風の問いかけにビクッとなったルーシーを見て、フィオナがソファから立ち上がったが、
「いいの!」
と、ルーシーが叫んでそれを止めた。ルーシーはフィオナの方を振り向いて、
「ご、ごめんね、フィオナ。でも、ここまできたら、もう隠す事は出来ない、から」
「ルーシー……」
その後、ルーシーは春風に向き直ると、
「あ、あなたの、言う通り、です」
そして、意を決したかの様に春風を真っ直ぐ見て言った。
「わ、私は、固有職能『呪術師』の、固有職保持者です」
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