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第5章 対決、断罪官
第66話 襲撃再び
しおりを挟む泥棒を捕まえる為に、森の中を突き進んでいく春風。
「ふぅ。結構暗いな」
森の外からも見たが、実際に中に入ると、昼間だというのに中はとても暗かった。しかし、それでも陽の光は所々にさしていたので、それほど怖いというものは感じなかった。
(うーん。随分と進んだけど、泥棒どころか魔物の気配も感じないとわな)
そんな事を考えながら暫く歩いていた、その時、
ーーヒュッ!
「!」
不意に何かが来るのを感じたの春風は、咄嗟に後ろに飛び退いた。
次の瞬間、それまで春風が立っていた地面に、何かが刺さった。よく見ると、それは1本の矢だった。
(あっぶねぇな、おい……て、来やがったかなぁ?)
春風は刺さった矢を見てそう考えていると、
「変な叫び声が聞こえたと言うから来てみれば……」
春風の周囲に、数人の人影が現れた。全員、見た感じ春風の同い年くらいの少年少女達だった。そして、春風の目の前に、
「まさかまたお前とはな」
一昨日、春風を襲った少年が現れた。
「よぉ、一昨日ぶりだな」
春風は目の前の少年に向かって太々しい態度でそう言うと、
「何しに来た?」
と、少年は春風を睨みつけて尋ねた。
春風はその問いに、ニヤリと笑うと、太々しい態度を崩さずに、
「いやぁ、実は俺が拠点にしている宿屋に昨日泥棒さんが入ってなぁ、ソイツを追いかけてたらここに着いちまったんだよねぇ。で、だ。アンタら、何か知らないかなぁ?」
と、何ともわざとらしく笑いながら答えた。
その答えを聞いて、少年はますます春風を鋭く睨みつけた。
「それを知って、どうするつもりだ?」
その瞬間、春風は周囲の空気がガラリと変わるのを感じた。
(ふーん。こりゃ、当たりかもしれないな)
そして、春風はさらに太々しい態度で答える。
「そんなの決まってんだろ? とっ捕まえて自分らがやった事マジで後悔させてから、ギルドに突き出すんだよぉ!」
すると、人影の1人である少女が、手にした弓を構えて、春風に向かって矢を放った。
だが……。
ーースパン!
『!?』
放たれた矢は、春風の直前で真っ二つにされた。
春風に矢が当たる寸前、手にした刀ーー彼岸花で、飛んできた矢を2つに切り裂いたのだ。
「オイオイ、危ねぇじゃねぇか」
春風は矢を放った少女を睨みつけながらそう言うと、少女はそれに怯んだのか、持っていた弓を落としそうになった。春風はそれを見ると、大きく溜め息を吐きながら頭をボリボリかいた。
(今の一撃からして、さっき矢を放ったのはこの娘で間違い無いな)
そして、周囲の少年少女達を見回し、質問する。
「ああ、アンタらの態度から察するに、もしかして泥棒さんの事知ってるってところかな?」
その質問に答える様に、少年少女達は剣や斧といった武器を構え出した。
(ふん。それが答えなわけか……)
春風は「ハハハ」と苦笑いしながらそう考えると、手にした彼岸花の切先を少年少女達に向けた。
「そうかい。それじゃあ後は……テメェらの体に、直接聞くとしますかねぇ!」
春風のその言葉に、少年少女達は一瞬ビクッとなりながらも、春風に向かって武器を構えた。その瞬間、その場は一触即発の雰囲気になった。
だが、その時、
「待て!」
突然の声に驚く春風と少年少女達。
(何だ? 今の声……)
『あ……』
少年少女達が一斉に後ろを振り向くと、
「全員、そこまでにするんだ」
そこには、断罪官と同じ黒い鎧を纏った、長い茶髪の女性が立っていた。
女性は春風に問う。
「君は、ハンターでいいのかな?」
女性のその問いに、春風は警戒しながら彼岸花の切先を下ろすと、気持ちを落ち着かせて丁寧な口調で答える。
「はい、ハンターのハルと申します。それで、貴方は?」
女性は胸に手を当てると、真っ直ぐ春風を見て名乗った。
「私は、アリシア・ランフォード。元・断罪官だ」
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