ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第5章 対決、断罪官

第62話 ちょっとしたトラブル

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 「邪魔をするぜ」

 扉を開けて入ってきたのは、銀の装飾が施された黒い鎧を纏った、2人組の柄の悪そうな男性達だった。

 春風はその男性達を見た瞬間、喫茶店内の空気が変わるの感じた。他の客達が、全員、恐怖で萎縮し始めたのだ。

 春風とメイベル、そして客達は、男性達の正体を知っていた。

 (この人達って、確か『断罪官』だったな)

 そう、彼らは、「断罪官」だ。

 「い、いらっしゃいませ」

 断罪官達を前に、喫茶店の女性店員が話しかけると、

 「お、飯を食いに来たんだが、空いてる所はねぇか?」

 と、断罪官の1人が何とも悪そうな笑みでそう答えた。

 「え、えっと、空いてる所でしたら……」

 女性店員が恐る恐る空いている所を探していると、

 「おい、あそこなんか良いんじゃねぇか?」

 そう言って、もう1人の断罪官が指差したのは、がいるテーブルだった。

 「お、良いねぇ。じゃ、あそこにするか」

 2人の断罪官達は嫌らしそうに笑いながら、春風達のテーブルに向かって歩き出した。女性店員は止めようとしていたが、奥から現れた店長らしき男性に阻まれていた。

 そうこうしているうちに、断罪官達が春風達のテーブルにたどり着いた。メイベルは怯えていたが、春風はどこか落ち着いている様子だ。

 そして、断罪官の1人が春風達に話しかける。

 「いよぉ、方。俺達と食事しようぜぇ?」

 「ヤダ」

 それは、春風の即答だった。

 「「グホァ!」」

 その瞬間、断罪官達は

 いや、実際には血は吐いていないのだが、状況的にはまさにそう表現せざるを得ないものだった。メイベル、店長、女性店員、そして他の客達は、何が起きたのかわからずポカンとしていた。

 「ぐ、お、おい何だ? 何が起きたんだ?」

 「わ、わからねぇ」

 苦しそうに口元を拭う仕草をする断罪官達。そんな彼らを見て、春風はハッとした表情で、

 「あ、すいません。言い方を間違えたので、もう一回お願いします」

 と、申し訳なさそうにそうお願いした。

 それを見た断罪官達は、お互い顔を見合わせると、

 「「わ、わかった」」

 と頷いて、もう1度春風達に話しかけた。

 「いよぉ、。俺達と食事しようぜぇ?」

 「嫌です」

 「「ゴフッ!」」

 「無理です」

 「「ガハッ!」」

 「ごめんなさい」

 「「ブオッファアッ!」」

 「あと、俺は男だぁっ!」

 「「バ、バカなぁあああああああっ!?」」

 春風、怒涛の連続即答。断罪官達は9999のダメージを受けて、その場に倒れた。

 一連の出来事に、喫茶店内がシーンと静まり返るが、すぐにハッとなった女性店員が、断罪官達の下に駆け寄った。

 「だ、大丈夫ですか!?」

 女性店員が話しかけると、断罪官達は苦しそうに声を揃えて言う。

 「「お、俺達の純情を……返せ」」

 その言葉に対して、春風はニコリと笑うと、

 「うーん、無理!」

 「「そ、そんな」」

 春風、トドメの一撃。断罪官達は、今度こそ動かなくなった。

 再び、喫茶店内がシーンと静まり返った。

 (あ、ヤッベェ! やっちまったぁ!)

 冷静になった春風が、自分の行いを後悔し始めたその時、

 「騒がしいな」

 『!』

 突然のその声に反応したかの様に、春風を含むその場にいる者全員が、一斉に声がした方に振り向くと、1人の40代くらいの男性が立っていた。

 男性は威厳に満ちた雰囲気を出していて、断罪官達と同じく黒い鎧を纏っていたるが、施されている銀の装飾は断罪官達より少し立派なもので、それが男性の雰囲気をさらに強くしていた。

 男性は近寄り難いオーラを出しながら春風達のテーブルに近づくと、目の前に倒れている断罪官達を見て、

 「何があった?」

 と、春風達に尋ねた。

 「えっと……あの……」

 メイベルが何か答えようとすると、春風は落ち着いた表情で、

 「すみません、ナンパされたので、丁重にお断りをしました」

 と、笑顔で答えた。当然周囲から、

 (うおい! 何言ってんだ!?)

 と言わんばかりの視線が春風に突き刺さった。

 「そうか」

 と、男性が一言そう言うと、倒れている断罪官2人を両肩に担いで、

 「迷惑をかけてすまなかった」

 と言って、喫茶店の外に出て行った。

 「すみません店員さん」

 三度静まり返った喫茶店内で、春風が女性店員を呼ぶ。

 「は、はい! 何でしょうか!?」

 突然話しかけられて驚く女性店員に、春風は優しく話しかける。

 「俺と彼女、2人分のお会計をお願いします」

 「は、はい。わかりました」

 その後、女性店員から提示された金額を払うと、春風は未だ固まっているメイベルに向き直って、

 「ご馳走様でした。ここは俺が払いましたので、この辺りで失礼します」

 と言うと、そそくさと喫茶店を出るのだった。
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