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第4章 誕生、ユニークなハンター?
第52話 春風の心配事
しおりを挟む「ねぇ、ハル」
自身がしてしまったことの大きさにショックを受けて落ち込んでいた春風に、リアナが声をかけた。
「? 何、リアナ」
春風は頭を抱えた状態のまま返事をした。そんな春風に、リアナは質問する。
「ハルが心配してるのって、他の魔術師達? それとも、セイクリアに置いてきた『勇者』のことかな?」
リアナの質問にピクッとなった春風は、頭から手を離すと、
「『両方』って答えたいけど、後者の方が強い」
と、リアナの目を見て答えた。
さらにリアナは質問を続ける。
「どうして?」
「俺、この世界の魔術師達の事、全然知らないから。でも、先生やクラスメイト達はそうじゃない。まぁ、嫌な奴もいるけど、だからって見捨てる理由も無いし。それに、絶対に失いたくない人もいるんだ」
その時、春風の脳裏に浮かんだのは、共に「師匠」と呼ぶ女性の弟子となった少年と、1人の少女だった。
春風は真っ直ぐリアナを見てさらに答える。
「だから、もしクラスの皆の中から『魔術師』の職能に目覚めたのが出てきて、それが俺の所為で嫌な思いとかをしていたらって思って……」
そう言うと、春風はがくりと俯いた。
「そっか……」
春風の答えを聞いて、リアナは少し考えた後、「うん」と頷いて春風の側に近づくと、
「ハル」
と、再び声をかけて、両手で春風の手を握った。
「リアナ?」
突然の事にキョトンとなった春風に、リアナは続けて言う。
「それなら、今以上に『力』をつけよう。『力』をつけて、この問題をどうにか出来る様になって、もしハルが言ってた様な事が起きていたら、ぶっ飛ばされるのを覚悟で全部話して、でもって謝って、そして身につけた『力』で、その人を助けよう。他の魔術師達の方は、そのついでで良いから、ね?」
そう言うと、リアナは春風にニコリと笑いかける。それを見て、ジゼルも穏やかな笑顔になって、
「そうですよ春風様。ショックを受けるのもわかりますが、今はまだ、問題に対処出来る程のお力は備わってはおりません。リアナ様の言う通り、まずはこの都市で、知恵と力を身につける事に専念した方が良いと思います」
と、優しく諭した。
「ジゼルさん……」
2人の話を聞いて、それまで落ち込んでいた春風は、暫く考え込むと、
「うん、わかった。俺、今以上に強くなるよ」
と、2人にそう固く誓った。
リアナはそれを見て、再び「うん」と頷くと、
「それじゃあ、そうと決まれば、明日からハンターの仕事、頑張ろ!」
と、笑顔で春風にそう言った。
春風もそれを見て、
「うん!」
と、静かだが、力強く頷いた。その様子に、ジゼルも「ホッ」と一息ついた。
「よおし、そうと決まれば、早速ハンターの仕事について私がレクチャーするね!」
「「え?」」
いきなりそう言うリアナに、春風とジゼルは思わず「?」を浮かべた。
「な、何? どうしたの2人とも?」
そんな2人の態度に、リアナも思わず「?」を浮かべた。
そんなリアナに、春風は質問する。
「リアナ、レクチャー出来るの?」
「失敬な! 確かに私はまだ半人前を卒業したばかりだけど、基本的な事なら教えられる自信はあるよ!」
と、リアナはプンプン起こりながら言うと、春風は「ハァ」と言って、
「わかりました。レクチャーよろしくお願いします」
と、リアナに敬語でそう言った。
それから春風とジゼルは、リアナからハンターの仕事について基本的な事を教わった。そして数時間後、すっかり遅くなったので、リアナを部屋に送った後(といっても隣なのだが)、春風は寝る支度をして、明日から始まるハンターとしての仕事に備えて、ぐっすりと眠りについた。
因みに、ジゼルはというと、
「この中、すっかり気に入ってしまいました」
と言って、また零号の中に戻るのだった。
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