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第4章 誕生、ユニークなハンター?
第51話 春風、罪の意識に苛まれる
しおりを挟むそれは、春風が旅立つ3日前のことだった。
「よし、だいぶオリジナル魔術を使いこなせる様になったな」
その頃の春風は、ヘリアテスから、
「ジャンジャン魔術を作りまくって、バンバン使いまくってください」
と言われて以来、新しいオリジナル魔術を作っては、主に戦闘訓練などで使いまくっていた。ただ、その後すぐに頭痛に襲われるのだが……。
そんなある時だった。
『春風兄ちゃーん!』
「ん?」
いつもの様に訓練をしていた春風が、「何だろう?」と声がした方に振り向くと、そこには赤、青、オレンジ色の髪をした10歳くらいの少年少女達が数人、春風に向かって走って近づいてきていた。
「あれ? 皆、どうしたの?」
春風がそう尋ねると、赤い髪の少年が、
「春風兄ちゃん、俺達、今日、小さい兄弟達を助けたんだよ!」
「小さい兄弟達?」
すると、赤い髪の少年の背後から、いくつもの小さな光の粒が現れた。
春風は「それ」が何なのかすぐにわかった。
「もしかして、精霊達?」
『うん!』
春風の質問に、少年少女達は元気良く答えた。
さらに赤い髪の少年は話を続ける。
「あのね、この子達、魔術を使おうとする人の側で凄く苦しそうにしていてね、このままじゃ危ないって思って、俺達、それを止めようとしたんだ。そしたら、上手く魔術を止める事が出来て、その後すぐにこの子達を連れてその場を離れたんだ」
「そうだったんだ。小さい子達を助けるなんて、凄いな君達は」
春風がそう褒めると、赤い髪の少年の後ろにいた、青い髪の少年が前に出て、
「春風兄ちゃんのおかげだよ」
「俺?」
「うん。春風兄ちゃんが僕達に『力』をくれたから、この子達を助ける事が出来たんだ」
青い髪の少年がそう言うと、今度は長いオレンジ色の髪の少女が前に出て、
「そうだよ! 春風お兄ちゃんが魔術を使ってきたおかげで、私達こんなに大きく成長したんだよ!」
と、元気よくそう言った。
そう、実はこの少年少女達も精霊で、春風が魔術を使いまくってきた所為か、最初は小さな光の粒だった彼らは、今では見た目的には10歳くらいの大きさにまで成長していたのだ。
「そう……なんだ」
少年少女達の話を聞いて、春風は照れ臭そうに顔を真っ赤にした。
その後、ハッとなって首をブンブン振るうと、
「うん。それなら俺、もっと頑張って使いまくんなきゃね」
と、真面目な表情でそう呟くと、少年少女達に向かって、
「じゃあ皆、俺、君達と君達の兄弟姉妹の為に、いっぱい頑張っちゃうから、応援、よろしくね!」
と笑顔で言うと、少年少女達も、
『うん!』
と、元気いっぱいの笑顔で答えた。
そして、それから3日後の現在。
「どおおおしよおおおおおおおっ!」
春風は今、「白い風見鶏」の自室で頭を抱えていた。
「まさか、あの時そんなことが起こっていたとは……」
その姿を、零号から出てきたジゼルが、困った様な表情で見ていた。
勿論、部屋にはリアナもいるのだが、彼女は無言だった。
「『魔術を阻止した』とは聞いていたけど、まさか相手を火だるまにしていたなんて……」
赤い髪の少年から話を聞いた時、てっきり春風は「ちょっと驚かしたんだろう」と思っていたが、実際はもっと凄い事になっていたと知ってしまい、ショックを受けていた。
ジゼルは落ち込む春風を見てオロオロしていたが、
「で、ですが、春風様のおかげで、小さい精霊達は助かったわけですから、そんなに気にする事では無いと思います……」
と、必死で春風を励ました。
「そうだ。確かに精霊達は助けることが出来ました。だけど……」
「?」
「だけど、だからといってそれで人を傷つけて良い理由になるんですか?」
「! そ、それは……」
「俺、まだほんのちょっとだけど、この世界の常識についての勉強はしました。確かに、精霊達を苦しめるこの世界の魔術も、それを使う魔術師達も許せません。でも、全ての魔術が戦う為の道具ってわけじゃありません。中には人を助ける為の魔術だってあります。だけど、そんな魔術が、俺の所為で使えなくなってしまったらって思うと……」
そう言って、春風は再び頭を抱えた。
「春風様……」
ジゼルが心配そうに見守っていると、
「ねぇ、ハル……」
と、それまで無言だったリアナが口を開いた。
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