ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第3章 異世界エルードの真実

第29話 出会ったのは、小さな「希望」

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 (何だよそれ……何なんだよそれ!? 何が『邪神』だ! 何が『悪しき種族』だ! 本当の悪党は、テメーらの方じゃねぇか!)

 500年前の真実とヘリアテスの話を聞いて、春風の心の中は激しい怒りに満ち溢れ、身体は小刻みに震えていた。

 そして、その怒りの矛先は、セイクリア王国の王族達と、彼等が崇める5柱の神……否、侵略者の親玉達に向かっていた。

 春風が今にも飛び出しそうになっていると、

 「落ち着いて春風君」

 と、アマテラスはポンと春風の方に手を置いた。

 「アマテラス様……」

 ハッとなった春風がアマテラスの方を向くと、彼女は穏やかな表情で、

 「君の気持ちはよくわかるよ。だけど、今の君は『力』に目覚めたばかりの未熟者で、今行ったところで返り討ちに遭うのは目に見えている。それはわかっているよね?」

 と、優しく厳しい事を言った。

 「っ!」

 それを聞いて、春風は急速に頭が冷えていくのを感じて、

 「申し訳ありませんでした」

 と、アマテラスに深々と頭を下げた。

 それを見て、アマテラスは「うんうん」と頷くと、

 「それで、封印から解放された後は何をしていたの?」

 と、ヘリアテスに向き直って質問した。

 ヘリアテスは涙を拭いながら答える。

 「はい、私はその後、奴等に見つからない様に生き残った精霊達に助けられながら、同じく封印から解放されたループスと再会しました。力を奪われたと言っても、まだほんの僅に残っていましたので、居場所はすぐにわかりました」

 「そう」

 「ですが、力の無い私達に出来る事はなく、マール達精霊王と共に作ったこの空間に隠れ住む事にしたのです。変わり果ててしまったこの世界で、私達は絶望するしかない日々を過ごしていました」

 「……」

 「ですが、それから3年経ったある日、私達にある出会いがあったのです」

 「出会い?」

 「はい、それは……」

 その後のヘリアテスの説明によると、きっかけは、幼い精霊達が大きな籠を運んできた事だった。なんでも、川に流されていたところを拾ってきたというのだ。

 中を見てみると、そこには布に包まれた泣いている白い髪の赤ん坊が入っていた。それは、この世界を襲った侵略者と同じ種族「人間」の女の子の赤ん坊だった。

 しかしよく見ると、女の子の耳は僅に尖っていて、お尻には小さな狐の尻尾が生えていた。尖った耳は妖精族、尻尾は獣人族の特徴だった。

 ヘリアテスとループスは、僅に残った神の力で、その赤ん坊を調べた。その結果、赤ん坊は妖精族、獣人族、そして人間の、3つの種族の血を引いている事がわかった。

 ヘリアテスはすぐに精霊達に、赤ん坊の親と故郷を探して欲しいと頼んだ。

 しかし、その後わかった事は、という事だった
 
 ヘリアテス達はどうしたものかと悩んだ。いくら自分達が生み出した種族の血を引いているとはいえ、そこにさらに憎き侵略者の血も混じっているからだ。

 だが、悩んでいる彼女達を見て面白そうに笑う赤ん坊を見て、いつの間にか自分達も笑う様になっていて、しまいには悩んでいるのが馬鹿らしく思う様になっていた。

 さらに赤ん坊からもう1つ、あるものを感じ取った。

 それは、大きく深い「愛」だった。

 その時、ヘリアテス達は思った。

 (この子はきっと、これからの世界の『希望』、もしくはそれに近いものかもしれない)

 赤ん坊を包んでいる布をよく見ると、そこには「リアナ・フィアンマ」と書かれていた。

 きっとこの子の名前に違いないと思ったヘリアテス達は、その赤ん坊ーーリアナを育てる事を決意したのだった。

 「……これが、私達とリアナとの出会いでした」

 『……』

 ヘリアテスの説明が終わると、ログハウスの中は沈黙に包まれた。

 暫くすると、その沈黙を破ったのは、春風だった。

 「あの、『白い髪』って、どういう事ですか?」

 春風はチラリとリアナを見てそう質問すると、リアナはスッと椅子から立ち上がり、首につけているチョーカーを外した。

 すると、リアナの体が一瞬光って、茶色だった髪は雪の様に真っ白になり、左右の髪の間からピョコンと尖った耳が、お尻から白い大きな狐の尻尾が現れた。

 「これが私の、本当の姿です」

 そう言われると、春風とアマテラスはその姿に見惚れた。その後、リアナは再び椅子に座った。

 そして、ヘリアテスはまた話し出した。

 「それから私とループスは、ファンテーヌ達に手伝ってもらいながらリアナを育てていました。子供を育てるのは初めてでしたので、最初は苦労したのですが、成長していくリアナを見ていると、そんな苦労も吹っ飛んでいくのを感じて、とても楽しい日々でした。ですが……」

 「? どうかしたの?」

 「外の世界では、人間達の間で、ある『予言』が広まっていたのです」

 「!」

 その言葉を聞いた瞬間、春風はそれが、謁見の間でウィルフレッドから聞いた、あの「予言」だと思い出した。

 春風は恐る恐るヘリアテスに質問した。

 「あの、その『予言』について、貴方は何か知っている事があるのですか?」

 「それは……」

 ヘリアテスが答えようとしたその時、

 「それは私が答えましょう」

 と、何処からか老婆の声が聞こえた。

 春風とアマテラスは「誰だ!?」と周りを見回すと、

 「ここですよ」

 そう言って、春風達の前にスーッと現れたのは、老婆のだった。
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