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第3章 異世界エルードの真実
第28話 500年前の真相
しおりを挟む「そ、そんなこの世界が、アマテラス様の世界を道連れに消滅? それ程までに、この世界は弱まってしまったのですか!?」
「うん、そうだよ」
アマテラスから告げられた事実に、ヘリアテスはショックを受けた。その隣で、リアナも顔を真っ青にしていた。そんな彼女達を見て、
(まぁ、そりゃそうなるよな)
と、春風は心の中で呟いた。
現在ログハウスの中では、春風、アマテラス、リアナ、ヘリアテスは四角いテーブルを挟んで、一方が春風とアマテラス、それに向かい合う形でリアナとヘリアテスが椅子に座っているという構図になっている。
「ま、そういうわけで、今は春風君を通してこの世界の現状を見ながら、コッチはコッチで神様総動員で地球を消滅させない様に頑張ってるわけなのよ。で、この状況、一体どうしてくれるわけ?」
「そ、それは……」
責める様に問い詰めるアマテラスに、プルプルと震えているヘリアテス。
「それに、見たところもう1柱もいないけど、あの子は何処にいるのかしら? いや、それ以前に、最後に会った後の500年の間に何があったの? そして何でそんなに小さくなってるの? 何か理由があるなら、勿論聞くよ?」
「……」
アマテラスの怒涛の質問に、ヘリアテスは何とか答えようとするが、ショックが大き過ぎて思う様に言葉を出せずにいた。
するとそこへ、
「それは、私達がお答えいたします」
そう言って、眩い光と共に春風達の前に現れたのは、白い衣服に身を包んだ4人の男女だった。
1人目はシンプルな白いドレス姿の長い青髪の女性で、2人目は白い袖無しシャツと長ズボンを着た、ヘリアテスよりも薄い赤い短髪の筋骨隆々の男性。3人目は白いローブに長い杖を持ったオレンジ色の髪と髭を持つ老人で、最後に4人目は動きやすそうな白い半袖シャツにハーフパンツ姿の、短い緑色の髪をした、春風と同い年くらいの少女だ。
「おや、君達は?」
アマテラスがそう尋ねると、4人の男女は、長い青髪の女性から順に、
「水霊女王ファンテーヌ」
「炎霊王ボルカン」
「地霊王ランダ」
「風霊女王アイレ」
『我等はヘリアテス様に仕えし精霊の王』
と、自らを精霊の王と名乗った。
「ほう」
少し驚いたアマテラスの前に、青髪の女性ーーファンテーヌが一歩近づき、その場に跪いた。
「異世界の神様。そしてその契約者様。今回の事態、大変申し訳ありませんでした。御二方のお怒りは重々承知の上ですが、どうか私達の話を聞いてください」
ファンテーヌの言葉を聞いて、アマテラスは「ふぅ」と息を吐くと、
「わかった、話を聞かせて」
と言って、説明を求めた。
ファンテーヌは「ありがとうございます」とお礼を言うと、
「実は、ヘリアテス様ともう1柱の神であるループス様は、共に神としての力を奪われて、以後500年の間、封印されていたのです」
「!」
その言葉を聞いて、春風はウィルフレッドから聞いたこの世界の昔話を思い出した。
「『奪われた』と言ったね。それはどう言う事なの?」
さらに説明を求めるアマテラスに、ファンテーヌは答えた。
「全ては500年前、この世界に『侵略者』が現れたのが原因なのです」
そして、ファンテーヌは500年前にこの世界に起こった出来事を話した。
今から500年前、この世界は「太陽と花の女神ヘリアテス」と、「月光と牙の神ループス」、そして彼らによって生み出された、「妖精族」と「獣人族」という2つの種族によって、平和な時代が築かれていた。
ところがある日、空が大きく割れ、そこから一隻の大きな船が現れて、世界に攻撃をしてきたのだ。時には船から光の矢の様なものが放たれ、時には船から妖精や獣人とは違う人の姿をした兵士達と、彼等が操る異形の生き物が現れて、妖精や獣人達を殺しまわっていた。
ヘリアテスとループスは世界を守る為に戦う事を決意し、その船に突撃したのだが、船の中から現れたのは5人の少年少女達は、「神」である自分達以上の強大な力の持ち主だった。
なす術もなく敗北したヘリアテスとループスは、彼等に神としての力を奪われ、それぞれエルードの別々の場所に封印されたのだった。
「そんな事があったとはね」
マールの説明に納得したアマテラスを見て、ヘリアテスは漸く口を開いた。
「そして今から20年前に、封印は弱まって、私は解放されたのです」
その言葉を聞いて、ヘリアテスの方を向く春風とアマテラス。ヘリアテスは震えながら、さらに話を続ける。
「私が目覚めた時、平和だったこの世界は、見るも無惨に変わり果てていました。山や森は切り拓かれて見たこともない街や都市が出来ていて、私とループスが生み出した妖精族と獣人族は、数を減らして散り散りになり、沢山いた精霊達が苦しみの末に消されて、挙句外は侵略者達が放った異形の生き物が、『魔物』として蔓延っていました」
「「……」」
「そして、肝心の侵略者達の船は、この世界に降り立ってそのまま1つの『国』となりました」
話を聞いたその瞬間、もの凄く嫌な予感がした春風は、恐る恐るヘリアテスに質問した。
「あの、その国ってひょっとして……」
春風が言い終わる前に、ヘリアテスは答える。
「そうです、その国とは、今回ルール無視の異世界召喚を行った、セイクリア王国なのです!」
そう言ったヘリアテスの顔は、大粒の涙で濡れていた。
そんなヘリアテスに、春風は質問する。
「あの、ひょっとしてあの国に住んでいる人達……ていうか、王族達って……」
「はい、侵略者の末裔です」
「じ、じゃあ、彼ら崇める5柱の神様って……」
「私達から神としての力を奪った少年少女達。恐らく、彼等が侵略者の親玉でしょう」
「そ、そんな」
春風はあまりの事実に、言葉を失うのだった。
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