上 下
42 / 67
第三章・伯爵家当主マリン

41・噂の的

しおりを挟む
 僕は今、城内の…いや!国中の噂の的になっている。

 『皇太子殿下の婚約者は、ロテシュ伯爵のマリン様で決まりらしい!』

 この噂があっという間に広まり、さらに噂に尾ひれが付いて有る事無い事言われてしまっている。これはマズいね?

 その「尾ひれ」が何だと言うと、僕とレオが城下街で逢引していただの、城の温室で愛を育んでいるだの、もう既に王公認の仲だの、皇太子と結婚したいが為にミシェルと婚約破棄しただのと…

 状況や意味合いが違うだけで、起きた事はおおむね事実なのが辛い!!

 お城でのあの時、王様には仲が良過ぎる故の冗談です!って説明したんだけど、他にも僕達の会話を聞いた人が居たようで。壁に耳あり…ってやつだ。
 それにお城、顔パスになったからって頻繁に訪ね過ぎたかな?
 
 でもさ、城の中での事は仕方がないとしても、城下街でも意外と人に見られてたんだね?ビックリだよ!
 もしかして、この噂をミシェルも聞いたかな?

 ──こ、これは、ちょっと…いや!相当マズくないかい?きっとミシェル、怒ってる!

 だんだんと心配になってきて、思わずギルフォード公爵家に様子を見に行ってみる。
 ずっと忙しくて行けなかったんだ…僕の第二のお家~!

 お屋敷の皆んな、元気かな?僕が居なくなって寂しい?それにミシェルも…。そんな事を思いながら遠くから覗いてみる。

 「マリン様、そんなの怪しい人みたいですよ?正面から訪ねていけばいいじゃないですか?かつて知ったる家!なんですから…」

 一緒に付いて来てくれたオリヴァーにそう言われたけど、ちょっと入りにくいんだよね…また叱られたらどうしょ?怖い~!

 建物の陰から公爵家を覗いて、どうしようかな…って悩む。

 ──顔なじみの門番の人に、ミシェルいる?って聞いてみようかな。偶然、ギルバートさんとか出て来てくれるといいんだけどなぁ~。

 ──ちょん、ちょん。肩を突つかれる。

 「ん、オリヴァー?分かってるって!訪ねてみろっていうんだろ?でもさ、あの嘘の噂を真に受けてミシェルが怒ってたら…って思うと~。それに愛想を尽かされてるかも?って思うと怖いんだよ。クリスを選んで、僕とは結婚しない!って言われちゃうかもしれないよ?」

 ──ちょん、ちょん。

 「ああもう~肩叩かなくても分かってるってー!僕はミシェルが大好きだから結婚したいんだって!心配なんだよなぁ…」
 僕はしつこく肩を突つくその手を払って振り返る。えっ┉なんで?

 「あわわ!どうしてここに!?ミシェル…」
 そこには何とも言えない表情のミシェルが立っていた。

 「ど、どうした…のかな?ミ、ミシェル。んで、その表情何よ?」
 僕は突然のミシェルに、動揺しまくりでオロオロしてしまう。

 「それでミシェル…その顔はどういう意味なのかな?呆れてる…それとも怒ってる?もしかして嬉しいの?」
 何とも形容し難い表情のミシェルに困惑してしまってそう尋ねた。それにミシェルは…

 「この馬鹿!それ全部だよ!呆れて怒って嬉しいんだー!!」
 いきなりミシェルが、めいっぱい叫ぶ。

 あのいつも冷静沈着で、貴公子然としたミシェルが!
 僕は驚き過ぎて固まっていたけど、そんな僕をミシェルはぎゅっと抱き締める。まるでもう離さない!というように。

 「何を言ってる?私がマリンとの結婚を辞めたいだなんて言う訳ないだろう?こんなに好きなのに!それにクリス?何故私がクリスと結婚しないといけないんだ!そもそもクリス令息が私達の結婚にどう関係してるって言うんだ?」
 ミシェルは信じられない!といった表情で、そう僕に断言した。

 ──えっ、どういう事なの?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

BL / 完結 24h.ポイント:832pt お気に入り:2,340

ろくでなしの君と

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:81

なんだか泣きたくなってきた 零れ話集

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:159

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない

BL / 連載中 24h.ポイント:766pt お気に入り:2,911

処理中です...