30 / 67
第二章・小説の中の僕
29・俺の辿った道
しおりを挟む
小洒落たカフェに着いて、店の中に入る。
護衛を寒空の下に長時間待たせるのも可哀想だと思ったのか、レオ殿下は僕達のテーブルから少し離れた席に座らせて待機するように言った。
僕はオリヴァーとギルバートさんにも、君達まで皇太子殿下と同席する訳にはいかないから、同じく離れた席でお茶でも飲んでてくれない?って頼んた。
しぶしぶといった感じで了承してくれたけど、目線はじっとこちらを見ている。
だけど余程の大声でもない限り、こちらの話しを詳細に聞く事は無理だと思う。
ケーキと紅茶を注文して、一息ついてから落ち着いて話し始める。
「俺はさぁ、何て言うかな…永遠に続くかのような孤独を味わったね。俺が前世を思い出したのは5歳の時だった。まだ身体も小さくて…だけど頭の中は大人並みだっただろ?だから余計辛くてね…。今だったら誰にも言わないんだけど、当時は黙っていられなかったんだ。だから俺は頭のオカシイ王子決定でさ。」
僕はショックを受けた…一見、この世界でも明るい性格のように感じた乃恵留が、そんな思いをして過ごしていたなんて…
僕が思い出したのは最近になってだけど、やっぱり小さな頃だったら同じような思いをしていたんだろうと思う。
そんな居た堪れない表情の僕を見て、乃恵留はフッと笑って今は大丈夫だよ?…って。
「それにね、僕を唯一馬鹿にしなかったのは兄上だった。だからこの世界でも俺らしくいられたんだと思うよ。」
──そうだ!亡くなられた第一王子の。亡くなるまでは皇太子殿下だったお方だ。
僕は何とも言えない気持ちだった…だって乃恵留を唯一理解してくれた方が亡くなっただなんて…
「乃恵留…いやレオ殿下、お兄様の事、お悔やみ申し上げます。どんなにか辛かっただろうね。」
僕は鎮痛の面持ちでそう伝えたけど、それに乃恵留は何故かポカンとした表情で…それからハッと気付いた様子で慌てて声を上げた。
「いや!実は死んでないんだ。俺は小説の内容を知っているからね?死ぬって分かっているのに指をくわえて待ってなんていないよ!兄上のその運命を変えたよ…俺が。」
──小説の内容を…変えただって!?死ぬ運命だった人を変えられるの?
だけどそれなら何で今、死んだ事になっているんだろうか?
「ミシェルからレオ殿下は最近までずっと王城を離れていたって聞いたけど、それと関係あるのかな?もしかして第一王子の運命を変える為に国を出ていた?」
僕のそんな疑問に乃恵留はどこか嬉しそうな顔をしながら大きく頷いた。
「流石俺の親友だな、察しがいいぜ!その通りだ。俺はずっと隣国のガシアンに居たんだ。表向きは留学していたんだけど┉実は兄上の伴侶になるべく人を探しに行っていたんだ。そして兄上は今、ガシアンに居る。今はまだ訳があって秘密になっているけど、いずれ俺が王になった時に晴れて、国内や諸外国にも公表するつもりだ。この上なく幸せに暮らしているから安心してくれ!」
乃恵留は嬉しそうにそう言って笑った。
詳細までは分からないが、乃恵留の活躍で兄の運命を変えたのだろう。
もしかして、僕とミシェルの運命も変える事が可能なのかも知れない。
だったら僕だってやってみる!そう心に決めた。
「ところで海人。手紙ではまだクリスと会うのは心の準備が出来ていないと言ってたろ?だけど俺は一度だけでも会っておいた方がいいと思うんだ。お前の気持ちは痛い程分かるし、無理にとは言わないが…それに変わりはないか?」
──とうとうクリスの話題が!僕達には避けては通れないのがそのクリスだ…
「だけど乃恵留、君の口ぶりだとかなり仲が良いというか、近しい間柄なんじゃないか?って思わせるんだけど…一体どういう関係なの?」
ずっと不思議だった…。僕にとってクリスはどうしたって避けて通りたい人物なのは知っている筈だろう?なのに会ってみろだなんて…。何か理由があるのかな?
「クリスは…俺の婚約者だ。だから海人はミシェルにとって、いずれ別れる事になる婚約者だ。そして俺は当て馬の立ち位置だな!」
乃恵留がクリスの婚約者で…当て馬!?
護衛を寒空の下に長時間待たせるのも可哀想だと思ったのか、レオ殿下は僕達のテーブルから少し離れた席に座らせて待機するように言った。
僕はオリヴァーとギルバートさんにも、君達まで皇太子殿下と同席する訳にはいかないから、同じく離れた席でお茶でも飲んでてくれない?って頼んた。
しぶしぶといった感じで了承してくれたけど、目線はじっとこちらを見ている。
だけど余程の大声でもない限り、こちらの話しを詳細に聞く事は無理だと思う。
ケーキと紅茶を注文して、一息ついてから落ち着いて話し始める。
「俺はさぁ、何て言うかな…永遠に続くかのような孤独を味わったね。俺が前世を思い出したのは5歳の時だった。まだ身体も小さくて…だけど頭の中は大人並みだっただろ?だから余計辛くてね…。今だったら誰にも言わないんだけど、当時は黙っていられなかったんだ。だから俺は頭のオカシイ王子決定でさ。」
僕はショックを受けた…一見、この世界でも明るい性格のように感じた乃恵留が、そんな思いをして過ごしていたなんて…
僕が思い出したのは最近になってだけど、やっぱり小さな頃だったら同じような思いをしていたんだろうと思う。
そんな居た堪れない表情の僕を見て、乃恵留はフッと笑って今は大丈夫だよ?…って。
「それにね、僕を唯一馬鹿にしなかったのは兄上だった。だからこの世界でも俺らしくいられたんだと思うよ。」
──そうだ!亡くなられた第一王子の。亡くなるまでは皇太子殿下だったお方だ。
僕は何とも言えない気持ちだった…だって乃恵留を唯一理解してくれた方が亡くなっただなんて…
「乃恵留…いやレオ殿下、お兄様の事、お悔やみ申し上げます。どんなにか辛かっただろうね。」
僕は鎮痛の面持ちでそう伝えたけど、それに乃恵留は何故かポカンとした表情で…それからハッと気付いた様子で慌てて声を上げた。
「いや!実は死んでないんだ。俺は小説の内容を知っているからね?死ぬって分かっているのに指をくわえて待ってなんていないよ!兄上のその運命を変えたよ…俺が。」
──小説の内容を…変えただって!?死ぬ運命だった人を変えられるの?
だけどそれなら何で今、死んだ事になっているんだろうか?
「ミシェルからレオ殿下は最近までずっと王城を離れていたって聞いたけど、それと関係あるのかな?もしかして第一王子の運命を変える為に国を出ていた?」
僕のそんな疑問に乃恵留はどこか嬉しそうな顔をしながら大きく頷いた。
「流石俺の親友だな、察しがいいぜ!その通りだ。俺はずっと隣国のガシアンに居たんだ。表向きは留学していたんだけど┉実は兄上の伴侶になるべく人を探しに行っていたんだ。そして兄上は今、ガシアンに居る。今はまだ訳があって秘密になっているけど、いずれ俺が王になった時に晴れて、国内や諸外国にも公表するつもりだ。この上なく幸せに暮らしているから安心してくれ!」
乃恵留は嬉しそうにそう言って笑った。
詳細までは分からないが、乃恵留の活躍で兄の運命を変えたのだろう。
もしかして、僕とミシェルの運命も変える事が可能なのかも知れない。
だったら僕だってやってみる!そう心に決めた。
「ところで海人。手紙ではまだクリスと会うのは心の準備が出来ていないと言ってたろ?だけど俺は一度だけでも会っておいた方がいいと思うんだ。お前の気持ちは痛い程分かるし、無理にとは言わないが…それに変わりはないか?」
──とうとうクリスの話題が!僕達には避けては通れないのがそのクリスだ…
「だけど乃恵留、君の口ぶりだとかなり仲が良いというか、近しい間柄なんじゃないか?って思わせるんだけど…一体どういう関係なの?」
ずっと不思議だった…。僕にとってクリスはどうしたって避けて通りたい人物なのは知っている筈だろう?なのに会ってみろだなんて…。何か理由があるのかな?
「クリスは…俺の婚約者だ。だから海人はミシェルにとって、いずれ別れる事になる婚約者だ。そして俺は当て馬の立ち位置だな!」
乃恵留がクリスの婚約者で…当て馬!?
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
2,106
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる