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第二章・小説の中の僕

28・真実の予感

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 これから乃恵留に会いに行く。もちろん表向きはリンダさんのお店に行く…なんだけどね。

 あれから僕は、起こってもない事で不安になり過ぎるのはやめようと思い直した。
 この一日、一瞬が大切だから。

 ましてやミシェルは小説の事なんて全く知らないんだ。
 小説の中だというと、なんだか絵空事えそらごとのような気がするだろうが、僕達は間違いなくここで生きている──。 

 現実がここにある以上、何もかもが「小説の強制力」に従って進むとは限らないと思う。
 現に、僕とミシェルは明らかに小説とは違う関係性だから。
 あらがえるべきことなら、精一杯やってみようと思っている。僕達の未来の為に。

 それで新たな気持ちで、まずは乃恵留に会わなければならないと思っているけどミシェルは特に疑ってはなさそうだ。
 まさか皇太子殿下がお忍びで来るとは思ってもいないだろうし。でも、よく考えたら元々僕の作品を見つけた時だってお忍びで街に来てた時なんだろうけど?と言うことは、結構お忍び…してるのかもよ?

 僕、オリヴァー、ギルバートさんのいつもの三人で午前中から出掛ける。
 お昼からだと帰るの遅くなったらミシェルに心配掛けちゃいそうだから。

 乃恵留には手紙で、あくまでも偶然を装って貰う事を頼んである。僕一人で出掛ける訳じゃないし仕方がない。
 オリヴァーとギルバートさんを騙したようになるのは気が引けるけど…

 そしていつものように三人で公爵家を出た。
 行き際にミシェルが、危ない所に行くなよ!って子供相手なような事を言ってきたけど、買い食いしてるのバレてるのかな?

 最近、ほんの少し春めいてきて今までの凍るような寒さじゃなくなったから街へ出やすくなった。
 だからもう少し行動範囲を広げてもいいかもな?と思う。

 ミシェルから許されるなら、違う街にも行ってみたいし、突然出て行ったままの故郷の村にも行きたい!
 出来ることならミシェルに村を見せたいな~。
 何もない平凡な村だけど、景色は最高だし人々は暖かくって居心地がいいんだ。

 貴族の令息のミシェルがそれを望んでいるかは分からないけど、僕の産まれた所を一度だけでも見て貰えるといいな!

 そんな事を考えながら足取り軽く歩いていると、リンダさんのお店の前に馬車が止まっているのが見えた。その中からレオ殿下が颯爽と現れる。

 ──あっ、乃恵留。タイミングが抜群だね!

 だけどその瞬間、護衛のギルバートさんが僕を守るように前に立ちはだかる。

 「えっ、ギルバートさん?皇太子殿下だよ!忘れちゃった?」

 僕が驚いて声を上げると、ギルバートさんは首を横に振りながら答えた。

 「いいえ。もちろん分かってます。ミシェル様がマリン様の半径1メートルには近づけるな!と仰せですので。」

 ──もうミシェル~なんて過保護!!それに嫉妬が凄いよ…

 「ハッハッハ!ミシェルは相変わらずだねぇ。マリンも愛されてて嬉しいだろ?でも偶然会った皇太子にそれは酷いなぁ。それにしてもグランバード公爵家って面白いね?今度、遊びに行こうかなー!」

 ──乃恵留、我が道を行くのがパワーアップしている…全くどうじてねぇよ!
 
 僕はギルバートさんに、大丈夫だからね?って言い聞かせてレオ殿下に近付き、一礼しながら挨拶をした。

 「先日はお招きいただきましてありがとうございました。まさかこんな所で再びお会い出来きるとは!嬉しいです。」

 そう言う僕の隣ではまだギルバートさんが睨んでいる気がするんだがヤメて…不敬罪で罪に問われるからね?

 「いやいや、私も嬉しいよ。こんなに早く会えてね~。さあ、一緒に店に入ろう。新作を持って来たんだろう?私にも見せておくれ!」

 それで皆んなでお店に入ったんだが、いきなり大所帯で現れた僕達を見てリンダさんは驚いている。
 それでレオは、自分の護衛三人に外で待機するように言った。

 「リンダさん驚かせてすみません!ちょうどレオ…いや、知り合いと会ったもので一緒に。ご迷惑はお掛けしませんので!」

 僕はリンダさんにまずは謝ってから、新作を見てもらう。

 今回はブローチの試作品を持って来た。
 直すべきところがあったら教えてもらってから販売を…って思っていたんだけど、思いの外好感触で。だからこのまま販売してみて、買っていただいた方にリクエストをお願いすることにした。

 それで思ったよりも早く用事がすんだ僕達を、レオ殿下が時間があるならお茶を飲もうか?と誘ってきた。
 僕は直ぐにはい!って返事をして、この先にいい店があるよ!と言う殿下の後に付いて行く。

 ちょっとギルバートさんが嫌な顔をしていたけど、仕方なしにオリヴァーがそれをなだめていた。

 ──ついに聞ける。僕に情報をちょうだい!! 
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