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第二章・小説の中の僕

26・乃恵留からの手紙

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 正直、まだまだ乃恵留と話したい事もあるし、小説の内容だって確認したかった。
 だけどミシェルがもう限界だ…こんなに嫉妬されるとは思ってもみなかったな~

 僕は乃恵留からヘレボルスの花を受け取りながら「この花でブローチ、お作りしますね!」と、ワザと大きな声で言って一礼した。

 それからミシェルが僕の腰を抱いて帰るように促す。
 僕はミシェルを安心させようと笑顔で頷いて、それでは失礼します!とその場を後にした。

 それから馬車に乗り込んでホッとした帰り道…僕は何故だかミシェルの膝の上に座らされる。

 「重いよね?脚、痺れちゃうよ?もう降りていいかな…」
 ミシェルの顔色を伺いながらそう言ったけど、全然重くない!の一点張りで…

 「マリン…皇太子殿下と仲良くし過ぎじゃないのか?第一、あの方は距離感が近過ぎる!もう少し離れて接するべきだろ?マリンには私という婚約者がいるのに!」

 ミシェルは…お怒りだ。この上なくお怒りで、困っちゃったな…。乃恵留のこと気にはなるけど、直ぐには会いにいけそうにないやぁ。

 やっぱりブローチ出来たタイミングだろうね?次に会えるのは。だけど、もちろんミシェルも付いて行く!って言うだろうな…

 それにしても今日は疲れた!最初から気を張っていたし、乃恵留だと分かってからは驚きすぎて疲れたっていうか。

 ちょっと眠気でうつらうつらしだした僕の頭をミシェルはそっと抱き寄せ、自分の胸に寄り掛かからせる。

 「でも嬉しかったよ…。マリンが私を切られまいと庇ってくれただろう?近衛が切りかかってきたとしても、おめおめと切られる私ではないが、本当にマリンが頼もしかった。」

 熱い眼差しで僕にそう言うミシェルにこそばゆい思いがしたけど、そんなふうに感じてくれたんだ…と嬉しかった。
 
 ミシェルの厚い胸は温かくて、良い香りがして落ち着くんだ。
 それから頭を撫でられて気持ち良さでいつの間にか眠ってしまった。

 次、目を覚ますと自分の部屋でなんと!朝だった…

 ──ちょっと寝すぎじゃない?やんなっちゃう~。
 
 「あっ!やっとお目覚めですか?マリン様。あんまり起きないんで、心配してミシェル様が夜何度も様子を見に来られてましたよ?」
 そう言ってオリヴァーが水の入ったカップを渡してくれる。

 寝すぎて喉、カラッカラだったわ!オリヴァーってば気が利くねぇ~。
 それにしても恥ずかしい…こんなに長時間寝て子供みたいだよね?食事もせずにさぁ。
 何よりもミシェルに寝顔見られた…ヨダレ垂れてなかっただろうね?うっ!

 「それから今朝マリン様に、皇太子殿下からまた手紙が届いてましたよ。昨日会ったばかりなのに…って、ミシェル様が物凄く嫌なお顔されてましたけど!」

 ──えっ、乃恵留から?すること早くなーい?昨日あんな事あったのに手紙を送って来るなんて!
 そう言えば、ミシェルが皇太子殿下は変わった人だって言ってたよね?こういう所がそう言われちゃうところだよね~。

 獅子頭乃恵留…前世で僕の親友だった人。
 前世の乃恵留も今と同じく、イケメンで頭も良かった。
 だけどね、やっぱりちょっと変わってるんだよね~。
 自分がこうだと思ったら、それに突き進むタイプ?面白いし僕は気が合ったけどね!
 ここでも変わってるって言われるなんて、この世界でどうやって育ったんだろう?って興味あるな。

 オリヴァーから乃恵留の手紙を渡されて、早速読んでみる。

 ん?…今度、リンダさんのお店で会おうって書いてある。
 確かにその方がいいかもね?ミシェルにバレずに会う事が出来るかも。ギルバートさんから伝わってしまうと思うが、偶然会った事にすれば大丈夫だろうし。それで…ってこの先を読もうとすると、その瞬間心が凍りつくような衝撃の一文があったんだ。

 乃恵留からの手紙には…

 『マリンがもし望むなら、クリスも一緒に連れて行こう』と。

 もしかして、ミシェルの「真実の愛」の相手…クリス!!
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