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第一章・僕が公爵家に居るワケ

14・護衛騎士ギルバート

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 あれから結局、リンダさんのお店には行けず日を改めて貰った。
 オリヴァーには重々僕が謝っていたことを伝えてもらって、新たに会う日を…って。

 そして、その時は護衛騎士を連れていかなくてはならない。
 前回のようにオリヴァーの服で行く訳にはいかないよね?

 となると、貴族なのはバレるな…。だけど、名前は隠しておきたいんだよなぁ。
 ギルバートさんに頼んで、カイトって呼んで貰おうと思う。それしかない!
 
 これから三人で行く事になっているけど、前途多難だな~!ヤダヤダ…

 それから僕はあまり貴族然とした装いじゃなく、なるべく大人しい服に着替えてオリヴァーと玄関に向かった。すると…
 
 ──えっ、何でいるの?

 ギルバートさんと一緒に、何故だかミシェルも玄関で僕を待ち構えていた。

 「あの…ミシェル様?どうして…」
 僕はミシェルの行動の意味を計り兼ねて思わずそう言った。

 「いや…あの…お、お見送りだよ!あんな事があった後だから、私が顔を見せた方が出掛けやすいかと思って。」

 僕は、そんな気遣い不要なんですけど?って思ったけど、無視されるよりいいのかもな…って。
 それで、ワザワザありがとうございますって言って、愛想笑いをしながら三人で正面玄関から出掛けた。
 背中にミシェルの視線を感じたので、そのまま進んで角を曲がったところで振り向く。

 「ギルバートさん、あなたはグランバード公爵家の護衛騎士なのは分かっています。だけどそれでも敢えてお願いします。これから先は僕の事を『カイト』と呼んで下さい。店主の方には僕の本名を知られたくないんです。お願い…出来ますか?」

 僕はそう真剣にギルバートさんにお願いしてみたけど…ダメ?

 「分かりました。カイト様とお呼びしますね!」

 ──なんと!!だけど理解早すぎない?んで、いいの?
 ギルバートさんにアッサリと了承され過ぎて面食らう。

 もしかして護衛騎士って、こういう柔軟な対応が求められる訳?そういう人が向いてるのかしら?

 そんな様子の僕を見ていたオリヴァーも、同じようにビックリしたようだけど、更に補足して説明してくれる。

 「ギルバート様には申し訳ないんですが、マリン様はご自分の立場が人に知れて詮索されるのを憂慮されているのです。だけど、決してご迷惑お掛けする事はありませんので。」

 ──そう!流石オリヴァー、そう言いたかったんだよね~なんて口達者なっ。

 僕はオリヴァーの説明に便乗して、ミシェル様にもギルバートさんにもご迷惑はかけません!って宣言した。

 「理由についても理解しました。確かに憂慮されるお気持ちもよく分かりますし、私も偽名を使われた方がいいと思いますから。」
 そう言ってギルバートさんは笑顔を見せた。

 ──神!ギルバートさんって、親切で良かったー!

 そうして、そんな事を言っている間にリンダさんのお店に着いて、三人で目配せしながら入って行った。

 この前の事を怒ってないかな?って心配だったけど、にこやかな笑顔で現れたリンダさんに安堵する。

 「リンダさん。先日は本当にすみませんでした。約束を守れず…。今日改めてこうやって会っていただけるのに感謝致します。」
 僕は頭を下げながらそう言ってまずは謝罪した。

 「カイトさん、大丈夫ですよ。何か事情がお有りだったのでしょう。それよりも…護衛の方でしょうか?それとお召し物が前とはかなり違うようですが…?」
 リンダさんは前とは明らかに違った様子の僕達に困惑していた。

 「そうなんです…その件についても謝罪しなくては!前はお店に商品を置いていただけるのか分からず、偽っていました。実は僕は貴族です。おまけにこの作品は…僕が作った物なんです。」

 僕が謝りながら正直にそう言うと、リンダさんは深く頷いてから口を開いた。

 「もしかして、そうじゃないかと思ってました。貴族の方…までは分からなかったですが、ご身分の有る方かな?って。もう雰囲気が違いますからね!それにカイト様は刺繍にお詳しいのでご自分で作られたのだと最初から思っておりましたが?」

 ──凄い!流石、商売をされている方だ。やっぱりきちんと人を見ているね?何もかもお見通しってヤツだ。

 「ですから大丈夫ですよ!これからもお取り引き、是非させていただきたいです。」
 にっこりと微笑むリンダさんは、さながら女神様のよう~。

 ──良かった!ギルバートさんといい、リンダさんといい。
 僕の周りの人は、柔軟で親切で信用のおける人達だ。

 そして僕は心のかせを取り去って、新たな気持ちでリンダさんと商品についての話しをし始めたんだ。
 
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