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第一章・僕が公爵家に居るワケ

12・少しだけバラす

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 「それで何故あのようなことをしたのですか?それにこれは一体…」

 僕達は重い足取りで執務室までやって来て、僕はミシェルと相向かいにソファに座って、ギルバートとオリヴァーはそれぞれの後ろに立っている。

 ──ヤバいな~どうしたもんかなぁ…

 もう恐らく、全てを誤魔化す事は不可能だ。
 まず、僕がお金を手に入れようとしているのはバレるだろう。
 だけど、その理由は?なんだよね~。

 本当の事を言うのは無理だ!だって頭が可怪しいと思われる。
 この世界は、小説の中なんですよ~なんて言ったら一発アウト!!即、病院行きだ。

 ──となると?どう言ったら無難なんだろうか…それはもう、情に訴えるしかない!

 あの時は不安になったけど、僕には切り札があるよね?
 そう!部屋の中には何も無かった事件があるんだよ~!

 あれで結構お金使ってる!それで蓄えがなくなった事にしようと思う。
 って言うか、もうそれしか選択肢ないけどね?

 それで、執務室のテーブルに広げられた僕の作品をミシェルに見せながら答える。

 「これは僕が作ったものです。一つ一つ手作りで制作しています。もちろんデザインも。何故?って思ってますよね?もちろんお金を稼ぎたいからです。僕にはもうお金がないんです!」

 思ってもみない理由だったのか、目の前のミシェルもギルバートも唖然としている。
 それからミシェルは、急にガバっと僕の作った作品を手に取ってマジマジと見ていた。

 「これを…マリンが作ったんですか?どこでこんな技術を…」
 ミシェルは信じられないと言った表情でそう聞いてくる。

 ──僕が作ったらそんなに可笑しい?この世界では服飾なんかに携わっている男性っていないのかな?
 こういった主に女性が使う物を男性が作っちゃいけないのだろうか…?

 だけど一番肝心の何故お金が欲しいのかは…聞いてこないね?やっぱり後ろめたい気持ちあるんじゃないのー!こっちから言っちゃうよ?

 「ご存じのように僕はほんの数年前まで平民でした。まぁ、その時から出来た…という事で。さらにね、こちらに来る時に父からは僅かばかりのお金しか貰ってないんですよ。なのにほら!家具なんか自分で買わないといけなかったでしょ?ですから自分の特技を活かしてお金を稼ぐよりなかったんですよ…」

 僕は大袈裟に、よよよ…と泣く真似をしながら精一杯情に訴えた。

 ちょっとワザとらしかった?でも嘘ではないし。
 ついでに僕がこの公爵家を出る時には手切れ金とか少しでもくれたら助かるんだけど…って。
 まあ、それは考えない方が無難かもね?

 「うむ…それを言われたらこちらも何も。だけど、それなら最初からそう言えば良かったのではないか?それに…んんっ!あの…お尻の…あれは一体何だったんだ?」

 ──ミシェル様は痛いトコ突いてくるなぁ~!絶妙だね?
 困ったな…お尻の一件はちょっと言い訳考えてなかったわ…

 「あ、あれは…ちょっと。いや!その…お返しって言うかぁ。僕だけあんな声出しちゃって…照れ隠しって感じですかね?」

 ──く、苦しい!苦し過ぎる言い訳。
 だけどね、小説であなたに捨てられるの決定で悔しいから…なんて事は言えないからね?

 「そ、そうか…分かった。それじゃお互い様と言う事で。それとお金の件だが、これからは正面からきちんと出ていくように!それとお金を持ち歩くなら護衛騎士は一緒に行かせる。これを守れないならダメだ!それでどうだ?」

 えっ、それでいいの?なんか意外…護衛騎士は邪魔だけど仕方がないよね。
 まだまだ稼がなきゃならないし…となると屋台で買い食いとかもう出来ないんだろうか?残念!

 どんなにか厳しい沙汰さたがあるかと心配だったけど、意外と甘い対応のミシェルに拍子抜けする。
 だけどこれで商売を続けられるし嬉しいな!だけど何か┉忘れてない?
 ま、待てよ!そういえばリンダさんとの約束は~?うわぁ~。

 そう言ってワーワー騒ぎながら右往左往うおうさおうする僕を見て、ミシェルが密かに笑っていたなんて、僕はまるで気付いてなかったんだ。
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