10 / 67
第一章・僕が公爵家に居るワケ
9・ある日突然マリンが(ミシェルSide)
しおりを挟む
あの日、庭園で騒然としている使用人達に気付く。そんなことは普段公爵家では有り得ない事だ。
それに胸騒ぎを覚えた私は、護衛騎士のギルバートと共に庭園にと急ぐ。すると池の辺りに人だかりが出来ていて…
近付いた瞬間ハッと息を呑む!
「マ、マリン?どうしたんだ…」
顔面蒼白なマリンがずぶ濡れになって横たわっている。その直ぐ側には彼の侍従のオリヴァーが、同じくずぶ濡れで蹲り、ハァハァと肩で息をしている。
──マリンが池に落ちたのか?それを侍従が助けたのだろうか…
やがて侍従が落ち着きを取り戻し、マリンの頬を軽く叩きながら名を呼んでいる。だけど全くといっていい程反応がない状態で…
──これはマズいぞ…このままでは死んでしまう!
咄嗟に私は、急いでマリンに駆け寄り人工呼吸をする。周りの者達は一様にその行動にざわついたけど、人命が掛かっているし一刻を争うことだ。
顎を上げ気道を確保してから、鼻をつまみ口にフーッ!と息を吹き込んだ。一度では反応はなく、何度もそれを繰り返す。それでも諦めずに繰り返すと、マリンはゴホッ!と水を吐き出して…
私はそれに満身創痍でその場に倒れ込んでしまう。それからオリヴァーがマリンを部屋まで運び、私はギルバートに抱えられて部屋に戻った。それから三日間、マリンの意識は戻ることはなく…
その間に私は考える。もしかしてあの時、放っておけば良かったんじゃないか?と。
誰かが助けたかもしれないが、あれが私である必要あったのだろうか?分からない…自分で自分の行動の意味が分からなかった。かく言う今も、意識のないマリンの様子を見に部屋まで来てしまっている。
おまけにずっと寝ずの看病を続けていたオリヴァーを、休むようにと命令したから仕方がないだろ?って言い訳をしてまで…
ハァーッと大きな溜息を吐きながらマリンの部屋に入る。すると…マリンと目が合った。
──えぇーーーっ!!
そのままカチコチに固まった!もう動く事は出来ない。
目の前のマリンはほぼ裸で、腰にタオルを巻きつけているだけの無防備すぎる格好だった。
茫然と押し黙る私に、マリンは悪びれた様子もなく「ノックは?」と一言。
──た、確かに!ノックしなかったけど…だからってその格好はあり得ないだろう?
おまけにマリンは不思議なことに、そんな裸同然の格好を私に見られているのは平気なようだった。な、なんでだよ?
心の中でツッコミをいれながら憮然とする私に、マリンは形式だけの謝罪をしながら待ってくれと言って、クローゼットから下着とパジャマを取り出すのが見えて…
──えっ…それ、どうするつもりで?
その瞬間、殴られたような衝撃を受ける!後向きにはなっているけど、マリンは腰のタオルを躊躇なく取り去って…
その美しい裸体にドキッとする。濡れた髪から垂れている水滴を弾いて、白く滑らな肌が露わになっている。そしてどうしても目に入るのは、ツンと上を向いている丸い桃尻。思わず触りたくなるほど…
それたら動く度にチラチラと視線をかすめる桃色の蕾が!
──な、なんだ?私がマリンに対して、そんな不埒なことを思ってしまうなんてー!
心臓がドキドキとして顔は真っ赤になる。そんなあり得ないほど動揺しまくる私の様子に気付いたマリンは、不思議そうな顔をしながら尻をなぞったり、胸先を確認しようとしているのにだんだんと腹が立ってきて…
それで救助した私に何か言う事ないのか?と聞いてみる。なのに…ちょっと謝ってから突然何かを悩み出している。そして暫く考えてから出てきた言葉が「部屋から出ろ!」だと?
──何か、可怪しくないか?
いつもオドオドとして挙動不審だったマリンとは何もかもが違う。視線も行動も…一体何があったのか?
間違いないのは池に落ちてから変わったっていう事だ。
それから暫くしてから起こしたのは、今回の屋敷を抜け出すという不可解な問題…
──マリン、何を考えている?
私はマリンの気持ちも、そして自分の気持ちさえも分からないこの状況に、すっかりと途方に暮れた…
それに胸騒ぎを覚えた私は、護衛騎士のギルバートと共に庭園にと急ぐ。すると池の辺りに人だかりが出来ていて…
近付いた瞬間ハッと息を呑む!
「マ、マリン?どうしたんだ…」
顔面蒼白なマリンがずぶ濡れになって横たわっている。その直ぐ側には彼の侍従のオリヴァーが、同じくずぶ濡れで蹲り、ハァハァと肩で息をしている。
──マリンが池に落ちたのか?それを侍従が助けたのだろうか…
やがて侍従が落ち着きを取り戻し、マリンの頬を軽く叩きながら名を呼んでいる。だけど全くといっていい程反応がない状態で…
──これはマズいぞ…このままでは死んでしまう!
咄嗟に私は、急いでマリンに駆け寄り人工呼吸をする。周りの者達は一様にその行動にざわついたけど、人命が掛かっているし一刻を争うことだ。
顎を上げ気道を確保してから、鼻をつまみ口にフーッ!と息を吹き込んだ。一度では反応はなく、何度もそれを繰り返す。それでも諦めずに繰り返すと、マリンはゴホッ!と水を吐き出して…
私はそれに満身創痍でその場に倒れ込んでしまう。それからオリヴァーがマリンを部屋まで運び、私はギルバートに抱えられて部屋に戻った。それから三日間、マリンの意識は戻ることはなく…
その間に私は考える。もしかしてあの時、放っておけば良かったんじゃないか?と。
誰かが助けたかもしれないが、あれが私である必要あったのだろうか?分からない…自分で自分の行動の意味が分からなかった。かく言う今も、意識のないマリンの様子を見に部屋まで来てしまっている。
おまけにずっと寝ずの看病を続けていたオリヴァーを、休むようにと命令したから仕方がないだろ?って言い訳をしてまで…
ハァーッと大きな溜息を吐きながらマリンの部屋に入る。すると…マリンと目が合った。
──えぇーーーっ!!
そのままカチコチに固まった!もう動く事は出来ない。
目の前のマリンはほぼ裸で、腰にタオルを巻きつけているだけの無防備すぎる格好だった。
茫然と押し黙る私に、マリンは悪びれた様子もなく「ノックは?」と一言。
──た、確かに!ノックしなかったけど…だからってその格好はあり得ないだろう?
おまけにマリンは不思議なことに、そんな裸同然の格好を私に見られているのは平気なようだった。な、なんでだよ?
心の中でツッコミをいれながら憮然とする私に、マリンは形式だけの謝罪をしながら待ってくれと言って、クローゼットから下着とパジャマを取り出すのが見えて…
──えっ…それ、どうするつもりで?
その瞬間、殴られたような衝撃を受ける!後向きにはなっているけど、マリンは腰のタオルを躊躇なく取り去って…
その美しい裸体にドキッとする。濡れた髪から垂れている水滴を弾いて、白く滑らな肌が露わになっている。そしてどうしても目に入るのは、ツンと上を向いている丸い桃尻。思わず触りたくなるほど…
それたら動く度にチラチラと視線をかすめる桃色の蕾が!
──な、なんだ?私がマリンに対して、そんな不埒なことを思ってしまうなんてー!
心臓がドキドキとして顔は真っ赤になる。そんなあり得ないほど動揺しまくる私の様子に気付いたマリンは、不思議そうな顔をしながら尻をなぞったり、胸先を確認しようとしているのにだんだんと腹が立ってきて…
それで救助した私に何か言う事ないのか?と聞いてみる。なのに…ちょっと謝ってから突然何かを悩み出している。そして暫く考えてから出てきた言葉が「部屋から出ろ!」だと?
──何か、可怪しくないか?
いつもオドオドとして挙動不審だったマリンとは何もかもが違う。視線も行動も…一体何があったのか?
間違いないのは池に落ちてから変わったっていう事だ。
それから暫くしてから起こしたのは、今回の屋敷を抜け出すという不可解な問題…
──マリン、何を考えている?
私はマリンの気持ちも、そして自分の気持ちさえも分からないこの状況に、すっかりと途方に暮れた…
324
あなたにおすすめの小説
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
王太子専属閨係の見る夢は
riiko
BL
男爵家のシンは、親に売られて王都に来た。
売られた先はこの国最大の相手!? 王子の閨係というお仕事に就いたのだった。
自分は王子が婚約者と結婚するまでの繋ぎの体だけの相手……だったはずなのに、閨係なのに一向に抱いてもらえない。そして王子にどんどん惹かれる自分に戸惑う。夢を見てはいけない。相手はこの国の王太子、自分はただの男娼。
それなのに、夢を見てしまった。
王太子アルファ×閨担当オメガ
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語、お楽しみいただけたら幸いです!
運命の番は姉の婚約者
riiko
BL
オメガの爽はある日偶然、運命のアルファを見つけてしまった。
しかし彼は姉の婚約者だったことがわかり、運命に自分の存在を知られる前に、運命を諦める決意をする。
結婚式で彼と対面したら、大好きな姉を前にその場で「運命の男」に発情する未来しか見えない。婚約者に「運命の番」がいることを知らずに、ベータの姉にはただ幸せな花嫁になってもらいたい。
運命と出会っても発情しない方法を探る中、ある男に出会い、策略の中に翻弄されていく爽。最後にはいったい…どんな結末が。
姉の幸せを願うがために取る対処法は、様々な人を巻き込みながらも運命と対峙して、無事に幸せを掴むまでのそんなお話です。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!
竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。
侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。
母が亡くなるまでは。
母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。
すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。
実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。
2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。
運命だなんて言うのなら
riiko
BL
気が付いたら男に組み敷かれていた。
「番、運命、オメガ」意味のわからない単語を話す男を前に、自分がいったいどこの誰なのか何一つ思い出せなかった。
ここは、男女の他に三つの性が存在する世界。
常識がまったく違う世界観に戸惑うも、愛情を与えてくれる男と一緒に過ごし愛をはぐくむ。この環境を素直に受け入れてきた時、過去におこした過ちを思い出し……。
☆記憶喪失オメガバース☆
主人公はオメガバースの世界を知らない(記憶がない)ので、物語の中で説明も入ります。オメガバース初心者の方でもご安心くださいませ。
運命をみつけたアルファ×記憶をなくしたオメガ
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる