お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

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第十章・不思議の国のエリィ

78・迷い

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 ──なに、この人…ふざけてる?

 そう思って目の前のルーカスを見つめた。マルドゥ伯爵家って言ってたから、伯爵家の令息なんだよね。それなのに、何ていうか…残念てぇの?変わった人なんだと思う。
 そんなことを思っているのを本人は知ってか知らずか、ルーカスはニコニコしながら僕達を眺めている。それにしても早く魔法石の取引してくれよ?そう思っていると…
 
 「だけど君達兄弟は、全然似ていないよね?見た目がまるで違うなぁ」

 そうルーカスに言われて、いきなり何言ってんの?って思う。おまけに隣にいるジェイの顔が、苦しそうに歪む。
 だけど兄弟ってさ、普通は似てるって言われた方が嫌じゃない?怒った顔で、似てねーよ!とか言ったりして…だけどジェイは、凄く悲しそうにしているんだ。ジェイから聞くところによれば、僕達の母親は少し前に事故で死んで、父親のことは分からないらしい。ということは二人は、父親が違うのかも知れない。だけど、正真正銘兄弟だ!弟を傷つけるやつは兄貴の出番だなって…

 「似てますよ!性格なんてソックリなんですよ?だから僕達は気の合う兄弟なんです」

 そう言って隣のジェイに微笑みかける。そんな僕に対してジェイは、少し驚いたようだったが、直ぐに嬉しそうに微笑んだ。

 「そうなの?ゴメンゴメン。お詫びにケーキも出しちゃうよ!さあ、こっちに」

 そうルーカスが謝って、僕達は商談する為の部屋へと通された。僕が一緒に行っても、全然分かんないんだけどね?まあ、付き添だけでもとジェイの隣に座った。
 商談に入ると、先程までのフザけた態度は一変して真面目な顔になるルーカス。それからいくつかの魔法石を取り出して、その石が持つ効果やどのような物を造れるかの専門的な話を始めた。ジェイが持つ知識や技術から、ただ聞いているだけでなく自分の意見や考えも伝えて、二人は白熱した意見の交換をしている。僕はというと、ふんふん相槌を打ちながらも、チンプンカンプンで全くお手上げ状態だ。それで出していただいたケーキを美味しく平らげて、紅茶を飲みながら窓の外へと視線を移した。

 この店はメイン通りにあり、少し先にはさっき見た櫓が組まれた広場がある。今は正午をちょっとだけ過ぎたところだから、これからどんどん屋台も立ち並んで、収穫祭を楽しもうとする人達が詰めかけるんだろう。もしかして、踊っちゃったりなんかもするんだろうか?

 「どうも祭に興味があるようですね?えーっと、お名前はなんだったかな…」

 突然そう声を掛けられて、ハッとして顔を前に戻す。

 「すみません余所見していて。後で弟と一緒に行こうかと思っているんです。申し遅れました、僕はエリィと申します」

 「エリィさんか!いい名だ。今日はアジャンタに泊まるんだったね?夜は櫓が灯されて、皆んなで酒を飲みながらダンスを踊るんだ!楽しいから是非参加してみてくれ」

 ダ、ダンスって?そんなの踊れる気がしないけど…そう戸惑っていると、ルーカスはそれを察したようで、途端にアハハと笑い出す。

 「ダンスといっても難しいものじゃない!自由でいいんだよ?それに皆んな酔っていて、他人の踊りなんか見てなんかないさっ。それに…言い伝えがあって、祭の夜に一緒に踊った恋人同士は幸せになれるんだ!ということでどう?俺と一緒に」

 そう言ってルーカスは、またまた僕にウインクを投げる。この人なぁ…良い人なんだろうけど、やっぱり残念な人だなぁ~と呆れる。見た目はちょっとだけ王子みたいなのよ?長いブロンドの長髪を横に垂らすように結んで、青い瞳は澄んでいて。それなのに、そこはかとなく漂う偽物感!可哀想に…。僕はハッキリと、遠慮しておきますね!と返した。

 打ち合わせと魔法石の購入を終えて、ジェイがすくっと立ち上がる。

 「今日はありがとうございました!お話できて、勉強になりました」

 「いやいや!こちらこそ。ジェイ君は若いのに凄く頭がいいね?このまま田舎にいるのは勿体ないくらいだ。王都に出る気はない?いくらでも仕事を紹介するから。その方が稼げると思うけど…」

 帰り際にそう挨拶をしたジェイに、ルーカスは王都行きを勧める。そりゃそうだよねって、僕だって思う。だけどそれにジェイは…

 「いいえ。僕は兄さんの側にいたいので。ですがそう言っていただいてありがとうございます光栄です!」

 そう言って頭を下げるジェイ。それに僕は、申し訳ない気持ちで一杯に…それから僕達は用事が済んで商会を後にした。
 一旦魔法石を宿屋に置きに行こうと、広場とは逆の方へと歩く。

 「ジェイ…前から思っていたんだけど、兄さん為に王都へ戻れないのだと思っているのなら止めて欲しい!遠慮せず自分の気持ちに正直になって欲しいんだ。そして、ジェイのやりたい事をやって欲しい…って」

 それにジェイは、首を横にふる。そして…

 「兄さん、ありがとう。だけど僕の気持ちは、さっきルーカスさんに言った通りなんだよ。あの田舎の家で、二人で家族として当たり前のことをして過ごしたい。それが僕の望みなんだ!」

 ジェイはそう力強く僕に訴える。正直、そう言って貰って嬉しい。あの穏やかな日々がこれからもずっと続くのなら幸せだ…そう思う。そう思うんだけど…

 僕は心のどこかで、違う感情が生まれているのを知っている。幸せな日常を送っているのに、どこか虚しい…どこか悲しいんだ!この気持ちはなんだろう?って…

 
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