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第二章・葛藤
14・贖罪の果てに(ドミニクSide)
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あの時起きたことは、俺が死んでしまうと思ったサウラによる聖力の暴走。ほんの少しの聖力…そう言っていたのに、俺を死なせたくないという強い思いが、そうさせたのだろうか…?
俺は死ぬ筈だった…あの尋常じゃない苦しみはそれを物語っていたから。万が一助かったとしても、きっと毒で片脚は失っていた。それが…
あれから一月後、意識を取り戻した俺は、何が起きたのかを理解するのに時間が掛かった。身体の不調に意識の混濁…そんなものが一気に襲ってきて、まともな判断が難しい状態だったから…
そんな中、少しずつ頭の中がすっきりしてくると、次に襲われたのはある違和感。サウラが全く姿を見せない…そんなことは有り得ない!
あれ程の仲良しで、おまけに目の前で死にかけていた俺に会いに来ないなどあるのか?そう思って悶々とする日々。だけどそれは、両親が俺に負担をかけないようにする為に黙っていただけだった。
それから本来の体力まで戻すのに、約半年ほど掛かる。脚に後遺症は殆どなくて、あるのはくっきりと残った噛み跡だけ。そうなってからやっと、サウラの真実を知ることに…
あれ程嫌がっていたのに、サウラは聖者として神殿にいる…その事実に愕然とする。俺のせいだよね?きっとそうだ…そう心で繰り返した。それから俺は意を決して、サウラにもう一度会う為に神殿に向かう。
聖力が強大なサウラは、民心を集め尊敬され、全くの別人になっていた。あれからほんの一年も経っていないのに…
サウラの聖者としての人気は凄さまじく、俺でさえ容易に近付く事も出来ない。ただ、遠くから見ているだけ。そんな俺が、強く思ったのは…
「サウラはあんな顔で笑ったりしない!」
本来のサウラは、花が綻ぶように笑う。あんな作り物のように、貼り付いた笑顔なんかじゃない!そうなったのはきっと、俺のせいなんだな…
それから俺は罪の意識に苛まれる。あの時、あんな所に行かなければ!そしてぼうっとしなければ…サウラが不幸になる事など無かったんじゃないのか?
それからはずっと、そう思いながら生きて来た。この先は贖罪のように、心動かされたり幸せを感じたりする資格はないと。それが罰なんだと…
それからは尚一層、剣に励んで騎士団に入り、それから程なく近衛に抜擢される。その頃には父も退団していて、その代わりに俺が近衛として職務に励もうと決める。サウラも聖者として頑張っているのだから、俺だって頑張れる!そうがむしゃらに励んで、副団長にまで上り詰めた。
──だけど俺の心は空虚なまま…
そんな時、第一王子のルーカス殿下が来年度から学園に通われる事が決定する。普通なら近衛ではなく、第一騎士団の管轄なのだが、久しぶりに王族が通学するとなると警備の上で、何重もの安全チェックが必要になる。それで同僚のブロン卿と共に学園に向かうことに。
リチャード・ブロンは、騎士を多く輩出している伯爵家の出身。我がスレイド家と同じく、武を重んじる家系となる。それ程親しくはしていないが、お互いが切磋琢磨して通じる所があるように思う。そして寡黙な性格というのも、親近感を抱く一因だ。そんなことを思いながら生徒達がまだ居ない早朝に、通学経路の確認や、警備をする上で需要な死角の有無。そして設備の危険などを一つ一つ把握をしていると、早々と一人の生徒が登校して来たのに気付く。
──パタン…パタ、パタ。
微かな足音に気付いて、誰だ?と振り向く。その瞬間、時が止まったかのような気がした…
艶のある銀の髪を揺らして足取り軽く駈けて来る細身の男子生徒。俺達の視線に気付いて立ち止まり、じっと見つめてくる。その深い蒼の瞳に惹きつけられ、瞬きする度に煌めくのには目を離せない!
──な、何だろう?この感じは。俺はその人に一瞬で心を奪われた。だ、誰なんだ?
「あっ…?」
俺達に驚き、思わずといった感じで声を漏らすその人。小さな赤い唇からそう漏れ聞こえるのにゴクリと唾を飲んだ。
俺は心を動かされる人に出会ってしまった。ただ、それは俺だけではない!隣に立っているリチャード・ブロンも…
その人は、そんな俺達の気持ちなど知らずに、微笑みながら会釈し通り過ぎて行く。俺達は呆然として、その後ろ姿を見送っていた…
──欲しい!そう思う存在は初めてだ…
幼い頃からどこか醒めていて、もちろん結婚に興味があるはずもない。そんな俺の生まれて初めての渇望…そのことに興奮する。だけど…
俺が…俺だけが、赦されるのだろうか?サウラは俺のせいで、まだ神殿に囚われているのいうのに…どうしたらいいんだ?
俺は死ぬ筈だった…あの尋常じゃない苦しみはそれを物語っていたから。万が一助かったとしても、きっと毒で片脚は失っていた。それが…
あれから一月後、意識を取り戻した俺は、何が起きたのかを理解するのに時間が掛かった。身体の不調に意識の混濁…そんなものが一気に襲ってきて、まともな判断が難しい状態だったから…
そんな中、少しずつ頭の中がすっきりしてくると、次に襲われたのはある違和感。サウラが全く姿を見せない…そんなことは有り得ない!
あれ程の仲良しで、おまけに目の前で死にかけていた俺に会いに来ないなどあるのか?そう思って悶々とする日々。だけどそれは、両親が俺に負担をかけないようにする為に黙っていただけだった。
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あれ程嫌がっていたのに、サウラは聖者として神殿にいる…その事実に愕然とする。俺のせいだよね?きっとそうだ…そう心で繰り返した。それから俺は意を決して、サウラにもう一度会う為に神殿に向かう。
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サウラの聖者としての人気は凄さまじく、俺でさえ容易に近付く事も出来ない。ただ、遠くから見ているだけ。そんな俺が、強く思ったのは…
「サウラはあんな顔で笑ったりしない!」
本来のサウラは、花が綻ぶように笑う。あんな作り物のように、貼り付いた笑顔なんかじゃない!そうなったのはきっと、俺のせいなんだな…
それから俺は罪の意識に苛まれる。あの時、あんな所に行かなければ!そしてぼうっとしなければ…サウラが不幸になる事など無かったんじゃないのか?
それからはずっと、そう思いながら生きて来た。この先は贖罪のように、心動かされたり幸せを感じたりする資格はないと。それが罰なんだと…
それからは尚一層、剣に励んで騎士団に入り、それから程なく近衛に抜擢される。その頃には父も退団していて、その代わりに俺が近衛として職務に励もうと決める。サウラも聖者として頑張っているのだから、俺だって頑張れる!そうがむしゃらに励んで、副団長にまで上り詰めた。
──だけど俺の心は空虚なまま…
そんな時、第一王子のルーカス殿下が来年度から学園に通われる事が決定する。普通なら近衛ではなく、第一騎士団の管轄なのだが、久しぶりに王族が通学するとなると警備の上で、何重もの安全チェックが必要になる。それで同僚のブロン卿と共に学園に向かうことに。
リチャード・ブロンは、騎士を多く輩出している伯爵家の出身。我がスレイド家と同じく、武を重んじる家系となる。それ程親しくはしていないが、お互いが切磋琢磨して通じる所があるように思う。そして寡黙な性格というのも、親近感を抱く一因だ。そんなことを思いながら生徒達がまだ居ない早朝に、通学経路の確認や、警備をする上で需要な死角の有無。そして設備の危険などを一つ一つ把握をしていると、早々と一人の生徒が登校して来たのに気付く。
──パタン…パタ、パタ。
微かな足音に気付いて、誰だ?と振り向く。その瞬間、時が止まったかのような気がした…
艶のある銀の髪を揺らして足取り軽く駈けて来る細身の男子生徒。俺達の視線に気付いて立ち止まり、じっと見つめてくる。その深い蒼の瞳に惹きつけられ、瞬きする度に煌めくのには目を離せない!
──な、何だろう?この感じは。俺はその人に一瞬で心を奪われた。だ、誰なんだ?
「あっ…?」
俺達に驚き、思わずといった感じで声を漏らすその人。小さな赤い唇からそう漏れ聞こえるのにゴクリと唾を飲んだ。
俺は心を動かされる人に出会ってしまった。ただ、それは俺だけではない!隣に立っているリチャード・ブロンも…
その人は、そんな俺達の気持ちなど知らずに、微笑みながら会釈し通り過ぎて行く。俺達は呆然として、その後ろ姿を見送っていた…
──欲しい!そう思う存在は初めてだ…
幼い頃からどこか醒めていて、もちろん結婚に興味があるはずもない。そんな俺の生まれて初めての渇望…そのことに興奮する。だけど…
俺が…俺だけが、赦されるのだろうか?サウラは俺のせいで、まだ神殿に囚われているのいうのに…どうしたらいいんだ?
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