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第10章
第179話
しおりを挟む突然響いた獣の雄叫びを聞き、フリーエルは一旦上空に飛んで辺りを見回した。そしてある一点を見て、目を見開いた。
遠い空に浮かぶ島から、1匹の龍がこちらに向かって飛んできていた。
「ヴァルガザーグ?!なぜ古龍が目覚めて…」
「ねぇ!」
「ぅわっ?!」
古龍に呆気にとられていると、突然背後から声をかけられて心臓が飛び出そうになった。声はレイと共に来たエレナのもので、隣にはエレナに似た翼を生やした幼女までいる。
「あの龍って空島の護り神みたいな子なんでしょ?」
「え、えぇ…天翼族を護る・古龍ヴァルガザーグ。ですが目覚める事はないと聞いていました」
「でも元気たっぷりでこっちに来てるね」
「だから止めなくては…!」
急いで古龍のもとへ飛んで行こうとするフリーエルの手を、エレナは掴んでその場に引き止めた。
「私も行くよ!レイにも手伝うよう頼まれてるし」
「で、でもかなり危険かもしれませんし…」
「大丈夫!私、こう見えても龍だから」
「…わかりました、一緒に古龍を止めるのを手伝ってください!」
「エレナにお任せ!」
フリーエルはすぐさま飛んでいき、エレナもその後を追おうとした。しかし姫のやる気のない顔を見て、姫の手を強引に掴んだ。
「ほら、あなたも行くよ!」
「………めんどう」
「ダーメ!終わったら空島のスイーツも食べられるんだから!」
「………それは美味しい?」
「うん!甘くてとろけるような感じで…思い出しただけでもやばいよ」
「………じゃあ行く」
姫は少し目をキラキラさせ、フリーエルの後を追いかけた。その後ろ姿を見て、エレナは何か引っかかるのを感じた。
「あの翼…やっぱりあの子、どっかで会ったような気が…」
己の記憶を探ろうとしたが、古龍の雄叫びが辺りに響き渡り目の前の問題に集中する事にした。
「ここは?」
「私の中ですよぉ。レイ君が来るのは2回目ですね♬」
「…そーだな」
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。
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「それで…僕をここに連れてきたのは何故かな?僕を拘束してから話す事と、何か関係があるのかな」
フォルカスはそっとカップを戻すと、俺とジョーカーを交互に見た。
「はぁ…仕方ない、時間もあまりないだろうから手短に話すぞ」
「助かるよ」
「この世界はー」
「今からおよそ20年後、完全になくなりまぁ~す🎶」
俺を遮って放たれたジョーカーの言葉に、フォルカスは一瞬目を見開いたがすぐに妖しい笑みを浮かべた。
俺が知っている事はこれだけなので、あとはジョーカーに任せる事にする。
「…確かに、いきなりそれを言われて信じろという方が難しい。それでその根拠は?」
「私にはレイ君のスキル《世界眼》とは別モノ、《未来眼》があります。それで見たので間違いはありませんよぉ♪」
俺はその言葉に息を呑んだ。以前ジョーカーに殺されかけた時は、「この世界は無くなりますよぉ♬」と言われただけなので、そこまで詳しい事は知らなく半信半疑だった。
そしてもう1つ、俺が驚いた点があった。それはー
「未来眼。確かに古い本でその存在を読んだ事があるが、それを使えたのは僕が知る限り1人しかいない。それも勇者が持っていたもので、複製する事は不可能だとか。」
「俺も第二王女に歴史を教わった時に聞いけど…それを使えるのは数百年前に魔王を倒した勇者の仲間、大賢者アナスタシアだけのはずだ」
「はい、だからそれが私ですよぉ?」
俺たちの言葉に、ジョーカーはあっさりとそれを認めて紅茶に口をつけた。話が急展開すぎてついていけない。
「なら君は、数百年前に死んだはずの大賢者様というわけか…。もし君が本当に大賢者なら納得するが、僕には信じがたい話だね。本には大賢者は人属だと書いてあったし、それほど寿命を延ばす魔法もないはずだ」
「確かに私は数百年前に死にましたぁ…。でもそれを蘇らせてくれた、ある1人の少年がいたんですよぉ~」
そう言うと同時に、ジョーカーとフォルカスの視線が俺に向いた。2人の目は、俺の予想の答えを代弁しているようなものだった。
「おい…まさかそれって」
「えぇ、レイ君。あなたですよぉ~」
もう俺の頭はパンク寸前だった。
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