異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

文字の大きさ
199 / 210
第10章

第179話

しおりを挟む

突然響いた獣の雄叫びを聞き、フリーエルは一旦上空に飛んで辺りを見回した。そしてある一点を見て、目を見開いた。
遠い空に浮かぶ島から、1匹の龍がこちらに向かって飛んできていた。

「ヴァルガザーグ?!なぜ古龍が目覚めて…」

「ねぇ!」

「ぅわっ?!」

古龍に呆気にとられていると、突然背後から声をかけられて心臓が飛び出そうになった。声はレイと共に来たエレナのもので、隣にはエレナに似た翼を生やした幼女までいる。

「あの龍って空島の護り神みたいな子なんでしょ?」

「え、えぇ…天翼族を護る・古龍ヴァルガザーグ。ですが目覚める事はないと聞いていました」

「でも元気たっぷりでこっちに来てるね」

「だから止めなくては…!」

 急いで古龍のもとへ飛んで行こうとするフリーエルの手を、エレナは掴んでその場に引き止めた。

「私も行くよ!レイにも手伝うよう頼まれてるし」

「で、でもかなり危険かもしれませんし…」

「大丈夫!私、こう見えても龍だから」

「…わかりました、一緒に古龍を止めるのを手伝ってください!」

「エレナにお任せ!」

 フリーエルはすぐさま飛んでいき、エレナもその後を追おうとした。しかし姫のやる気のない顔を見て、姫の手を強引に掴んだ。

「ほら、あなたも行くよ!」

「………めんどう」

「ダーメ!終わったら空島のスイーツも食べられるんだから!」

「………それは美味しい?」

「うん!甘くてとろけるような感じで…思い出しただけでもやばいよ」

「………じゃあ行く」

姫は少し目をキラキラさせ、フリーエルの後を追いかけた。その後ろ姿を見て、エレナは何か引っかかるのを感じた。

「あの翼…やっぱりあの子、どっかで会ったような気が…」

己の記憶を探ろうとしたが、古龍の雄叫びが辺りに響き渡り目の前の問題に集中する事にした。



「ここは?」

「私の中ですよぉ。レイ君が来るのは2回目ですね♬」

「…そーだな」

俺とジョーカー、それからフォルカスの3人は以前来たジョーカーの中にある小さな家にいた。相変わらず家の周りの柵の外には魔物が大量におり、薄気味悪い場所だ

俺たちは庭の丸テーブルを囲むように座り、ジョーカーとフォルカスは優雅に紅茶に口をつけた。
古龍が目覚めた後、ジョーカーの体から黒い手が飛び出し、俺とフォルカスは手に引っ張りれて飲み込まれたのだ。ちなみにエレナは古龍の方に向かい、ロゼッタとフローリアは不死蝶の方に向かってくれている。

「それで…僕をここに連れてきたのは何故かな?僕を拘束してから話す事と、何か関係があるのかな」

フォルカスはそっとカップを戻すと、俺とジョーカーを交互に見た。

「はぁ…仕方ない、時間もあまりないだろうから手短に話すぞ」

「助かるよ」

「この世界はー」

「今からおよそ20年後、完全になくなりまぁ~す🎶」

俺を遮って放たれたジョーカーの言葉に、フォルカスは一瞬目を見開いたがすぐに妖しい笑みを浮かべた。
俺が知っている事はこれだけなので、あとはジョーカーに任せる事にする。

「…確かに、いきなりそれを言われて信じろという方が難しい。それでその根拠は?」

「私にはレイ君のスキル《世界眼》とは別モノ、《未来眼》があります。それで見たので間違いはありませんよぉ♪」

俺はその言葉に息を呑んだ。以前ジョーカーに殺されかけた時は、「この世界は無くなりますよぉ♬」と言われただけなので、そこまで詳しい事は知らなく半信半疑だった。
そしてもう1つ、俺が驚いた点があった。それはー

「未来眼。確かに古い本でその存在を読んだ事があるが、それを使えたのは僕が知る限り1人しかいない。それも勇者が持っていたもので、複製する事は不可能だとか。」

「俺も第二王女に歴史を教わった時に聞いけど…それを使えるのは数百年前に魔王を倒した勇者の仲間、大賢者アナスタシアだけのはずだ」

「はい、だからそれが私ですよぉ?」

俺たちの言葉に、ジョーカーはあっさりとそれを認めて紅茶に口をつけた。話が急展開すぎてついていけない。

「なら君は、数百年前に死んだはずの大賢者様というわけか…。もし君が本当に大賢者なら納得するが、僕には信じがたい話だね。本には大賢者は人属だと書いてあったし、それほど寿命を延ばす魔法もないはずだ」

「確かに私は数百年前に死にましたぁ…。でもそれを蘇らせてくれた、ある1人の少年がいたんですよぉ~」

そう言うと同時に、ジョーカーとフォルカスの視線が俺に向いた。2人の目は、俺の予想の答えを代弁しているようなものだった。

「おい…まさかそれって」

「えぇ、レイ君。あなたですよぉ~」

もう俺の頭はパンク寸前だった。

しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...