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第10章

第180話

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遥か上空で、2匹の龍が激しい戦闘を繰り広げていた。1匹は炎の様な紅い鱗を持つエレナ、もう1匹は天使の翼の様な白さを持つ古龍ヴァルガザーグだ。
エレナがブレスをはくと、古龍はそれをひらりとかわし周りの雲を掴みながらエレナの体に巻きつこうとする。だが別の場所から姫が魔弾を放ち、更にフリーエルの魔法で魔弾の威力を強化した。魔弾は古龍の背中に直撃し、エレナはその場から一時退却した。

『いや~かなり強いよあの子』

「………知ってる、早く殺そう」

「ダメですよ!天翼族を護る龍なのですから」

『あれ、何これ?』

エレナが辺りを見回すと、3人の周りにはいつのまにか白い雲が発生していた。雲はみるみる3人を囲んでいき、気づけば3人は雲の中から抜け出せなくなっていた。

『動けない!?』

「土雲…!」

古龍の口からは天翼族の島を囲んでいた土雲が吐き出されており、3人は高い濃度の土雲に拘束されてしまった。

「………フワフワなのに、固い。おもしろーい」

『そんな事言ってる場合?!』

3人が動けなくなったのと同時に、古龍は世界を揺らすような声を出しながら大きな口を開けて迫ってきた。3人ともその場から逃げようとするが、土雲に固く体を拘束されて体が全く動かない。

『ヤバイよ!レイー!助けてー!』

「……仕方ないな」

姫が2人に聞こえない声で小さく呟いた瞬間、辺りに激しい風が吹き荒れた。風により雲だけでなく古龍も流されていく。

「フリーエル!大丈夫ー?」

「エレナ、無事ですか?」

「シオン!」

『あーロゼッター!』

3人が声のした方に視線を向けると、不死蝶ファルファラに乗ったシオン・ロゼッタ・フローリアがいた。ファルファラはその美しい羽をはためかせ、更に強い風を発生させて古龍を海に叩きつける。

「エレナ、マスターを探してくるので古龍をお願いできますか?」

『わかった!』

ロゼッタはその場から飛び去り、それと入れ違いで天翼族の民とペガサスに乗ったエルフの民が加勢に来た。先頭には天翼族の長・アステリオとエルフの長・フランがいる。  

「お前と共に戦う時が来ようとは…人生何があるかわからんな」

「お互い、娘に全て任せっきりってわけにもいかないでしょう?」

『うわぁ~…あの2人すごい強そう。よし、私もいくよ!』

エレナも張り切って、古龍封じに戻ろうとした時だった。エレナの近くにいた姫の足元に、巨大な魔法陣が出現したのだ。魔法陣にはエレナの世界で使われていた文字が書かれている。

『それって…』

「……×××××××××」

エレナにしか聞き取れない言葉が紡がれた瞬間、姫の体は光に包まれていった。



「マスター!」

エルフの島の上で、ロゼッタは上空で佇むレイを見つけた。近くにジョーカーとフォルカスの姿もなく、その魔力も感じられない。
ロゼッタはすぐにレイの元に近づいたが、その雰囲気に異様な何かを感じた。レイの顔はどこか暗く額には大量の汗をかいていた。

「マスター、どうかしましたか?」

「ロゼッタか…なんでもない」

レイはそれだけ返すと、1人古龍のもとへと飛んで行った。



海に造られた監獄・フォンセプリズンに、ジョーカーとフォルカスは正面から入っていった。周りでは看守達が止まるよう騒いでいるが、ジョーカーは全員眠らせいく。

「君の未来眼はかなり厄介なものだね、ジョーカー。今はアナスタシアと呼んだ方がいいのかな?」

「やめてくださぁい♬その名前の私は、随分前に死んでますから」

2人は最も深い階層へと降りていき、フォルカスは自分が収容されていた檻の扉をゆっくりと開いた。

「では、少し暇かもしれませんがその時になったらまたお迎えにあがりますねぇ♪」

「大丈夫だよ。たった20年待てば、その分の退屈な時間を吹き飛ばす事が起こるんだ。大した事じゃない」

フォルカスは拘束魔法を自分にかけ、檻の壁にもたれかかった。ジョーカーはそれを見届け、黒い霧となって消えていった。

「世界を創った者が、自分の欲を埋めるためにその世界を壊すなんて皮肉なものだね」

そう呟くと、フォルカスは檻の天井を見上げた。正確にはそのもっと先、空より更に高い所で自由に暮らすものに視線を向けた。

「…君の瞳には、何が映っているんだい?ベラム」

その声は誰にも聞かれる事なく、監獄の冷たい空気に消えていった。
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