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第10章

第178話

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「僕の剣を止めたのは、君が初めてだよ」

「そりゃどーも!」

フォルカスも何かしらの籠をもらっているのか、剣術ではほぼ互角だ。

「せいっ!」
「やぁー」

空中で激しく剣を交えていると、フォルカスの背後にエレナとフローリアが蹴りと拳を叩き込んだ。
だが、その攻撃がフォルカスに当たる事はなかった。フォルカスの背中に2本の黒い腕が生えており、2人の足と手をしっかり掴んでガードしていたのだ。

「流石に普通のままだと分が悪いからね、少し手を増やさせてもらった。これくらいハンデがあっても良いだろ?」

「悪趣味な術だな」

「レイ君、危ないですよぉ~♬」
「………撃つ」

下の方に視線を向ければ、ジョーカーと姫が巨大な魔法陣を創り出していた。
すぐにフォルカスから離れると、魔法陣から黒い炎を纏ったドラゴンが飛び出してきた。ドラゴンはものすごい速さでフォルカスに飛びかかり、大きな口でフォルカスを丸呑みにした。

「まじか…」

「効いてないみたいですねぇ♬」

「温度は悪くないけど、僕を殺したいならもう少し質の良いものをお勧めしておくよ」

かなり強力な魔法に見えたが、フォルカスは余裕そうな笑みを浮かべ、ドラゴンの背中から黒い炎をムシャムシャ食べながら出てきた。

「閃光術」

「うっ?!」

フォルカスが炎を食べながら手を上に向けると、光る球体が現れあたりを一瞬で太陽のように照らした。その眩しさに、その場にいた全員が目を瞑ってしまう。

フォルカスを除いてー。

「おっと♬」

目を開けてフォルカスを追うと、フォルカスの剣をジョーカーが素手で掴んでいた。
よく反応したなと感心する間も無く、ジョーカーは内ポケットからトランプを数枚空中に投げた。トランプはコウモリに変わり、コウモリ達はフォルカスに噛み付いていく。

「姫、危ないですよぉ~」

姫の腕を引いてジョーカーが離れた瞬間、コウモリ達は全て光を放って大爆発を起こした。
黒い煙が立ち込める中、突然強い風が吹いて煙が晴れた。

「僕を殺したいなら、それ相応の殺意と意志を持たないと難しいよ」

現れたフォルカスの耳はエルフのように尖っており、背中には天翼族のような白い翼と魔物のような黒い翼が生えていた。

「お前、なんだよその姿…」

「僕はエルフと天翼族の混血種だからね。まぁそのお陰で、子供の頃から周りに煙たがられたけど…この体もそれなりに気に入っているよ」

「まさに殺戮の天使って感じだな」

俺の言葉をよそに、フォルカスは一冊の本を取り出して適当に開いた。本を開いた瞬間、黒い影のような物が飛び出してエルフの島中に飛んでいく。

「幻想術」

フォルカスが短く唱えた刹那、エルフの島から爆発音が響いた。それと同時に、ファルファラが空高く飛んでいき島に光線を再び放つ。

「何をした?」

「エルフの民達に、少し夢を見てもらっているだけだよ。今頃仲間を敵と認識しているだろうね」

「あっそ…全針操作」

今度は俺が詠唱すると、島の上空に巨大な時計盤が現れた。そして反時計回りに腕を回転させると、針が回っていき黒い影がフォルカスの本に戻っていった。

「今の魔法は…そうか、あの龍の女の子が元に戻れたのもそれのおかげか。なかなか面白い魔法を使うんだね、君は」

「術使いのお前に言われたくねぇよ」

再び剣を交えるが、どんなにスピードを出してもフォルカスは全て防いでいく。おそらく何かしらの術を使っているのだろう。
フォルカスは俺たちの攻撃をはじき返しながら、嬉しそうに嗤った。

「ははは!どうした、その程度じゃ僕は倒せないよ?」

「倒す気はありませんからねぇ♬」

「正直俺は迷ってるけどな!」

ジョーカーと剣を同時に突き出すが、フォルカスの背中から生えている腕にガッシリ掴まれてしまう。
そのままの状態で、フォルカスはじっと俺たちの顔を見比べた。

「君達は一体何を企んでいるんだい?」

「今言ってもお前は信じないだろうから、お前を拘束してから話す」

「…面白そうだね。なら、最後にもっと楽しい演出はどうだろうか?」

フォルカスが指を鳴らすと、どこか遠くで小さな爆発音が鳴った。それと同時に、何かの生物の雄叫びも響いてくる。

「何だ…?」

「レイー!なんかドラゴンがいる!」

「……は?」

エレナの指差す方に目を凝らすと、天翼族の島の土雲が消えていき、中から巨大な白い龍が姿を現していた。
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