異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

文字の大きさ
133 / 210
第7章

閑話・小話詰め合わせ⑪(後編)

しおりを挟む

「今日は仲良くなるために来てるんだよ?!開始早々喧嘩してどうするの!」

「「すみません…。」」

森の前で、俺とサレアはティナに正座をさせられていた。フェルもティナの頭に乗り、頬を膨らませている。怒り方がとても可愛いが、今はそんなことを言っている場合ではない。

「はあ…とりあえず班を決めるわよ。はい、じゃあ3人で好きな棒を引きましょう。」

ティナは3本の棒を握り、俺たちの前に差し出した。王様ゲームのような感じだ。

「頼む、こんなアホとは別の班で…。」

「すけこましと虫探しはごめんだ…!」

俺は棒を勢いよく引き、恐る恐る確かめた。俺の棒の下側は赤く塗られており、サレアのは色がなかった。

「よっしゃー!」

「やったぞ!」

「もうクジなしで勝手に決めとけばよかったかな…。」

『ぴゃぁ…。』

ティナも色付きのクジを引いており、無事に俺とサレアは別の班で探す事になった。




「それにしても…なんだか大きい魔力を感じますね。」

「森の主でもいるのかしら。」

虫探しを始めて30分、俺は先程から感じている反応に違和感を感じた。この森は魔物が多いと聞くのだが、今のところ怖いくらいに何も遭遇していない。そして、遠くの方に1つ大きい魔力を感じていた。

「なんか面倒な事になりそうなんで、少しだけ避けていきます?」

「うーん…冒険者の人たちが襲われたりするかもしれないから、倒してもいいかも。」

「了解です。」 『ぴゃぁっ!』

とりあえず、みんなでプロードビートル探しを続行する事にした。



「はぁ、全然いない…。」

「本当ね。図鑑には、この森にいるって書いてあったんだけど…。」

『ぴぃ…。』

探し始めてから1時間ほどが経ったが、未だにプロードビートルの姿は見えない。それどころか、他の昆虫の姿もない。

「どこにいるー」

その時、少し離れたところから木がなぎ倒される音がして地面が少し揺れ始めた。

「なんだ?!」

「何かきてる!」

とりあえずティナと近くの木が密集していないところに来たが、音はどんどんこちらへと近づいてきた。

「なんか、やばそうですね…。」

「あれ、この感じ…」


「うぉぉぉぉぉおおおお!!」

『グォワァァァァアア!!』

ティナが呟いたと同時に、バカでかい蛇に追われるサレアが走ってきた。



「何やってんだテメェは!」

「何あれ!?」

「大変だ!何か出てきたぞ!」

「いや、どう見てもテメェを追いかけてんだろうが!」

「と、とにかく逃げなきゃ!」

サレアが俺たちの方に逃げてきたので、俺たちも必然的に逃げるしかなかった。走りながら鑑定すると、『マンジェスネーク(亜種)』と出てきた。特徴は、牙と皮膚に触れたものを殺す毒があるらしい。
俺は走りながら、隣で顔色を悪くして走るサレアに怒鳴った。

「おい!お前なんとかしろよ!あれ連れてきたのお前だろ!」

「ムリだ!虫は平気だが爬虫類は苦手なんだ!」

「か弱い乙女みたいな事言ってんじゃねぇよ!それが許されるのはヒロインだけだ!」

「2人とも危ない!」

「どわっ!」 「くっ!」

後ろを振り返ると、大きく開いた口が俺たちに迫ってきていた。なんとかかわすと、マンジェスネークはそのまま突っ込んでいった。
そのまま3人ですぐに逃げたが、マンジェスネークは方向転換して俺たちを追ってきた。

「おい、こういう時は二手に別れてどっちかが囮になる方がいいと思わないか?」

「くっ!貴様にしては良い案だ。よし行ってこい!」

「は?おまっ!」

サレアが珍しく同意してきたと思ったら、俺の腕を掴んでそのまま明後日の方向に投げ飛ばした。

「あっぶねぇ…あ。」

俺はなんとか着地してサレアをぶっ飛ばしに戻ろうとしたが、顔を上げたら目の前に大きな口が迫っていた。

「こんのムッツリメガネがぁ!覚えとけよー!」

『ぴゃぁー!』

俺はフェルを抱えて、とりあえず反対方向へと逃げ出した。



「もう!何やってるのよ!」

「ふんっ!前にルージュさん達の前で変な言いがかりをつけてきたお返しだ!」

「事実でしょ?!」

「そんな事はない!」

「へぇ…いつも帰ったらセイラさんにハグしてるくせに?」

「な、何故それを?!」

「とにかく、早くレイ君を助けなくちゃ。」

レイがマンジェスネークを引き受けた後、ティナはサレアに再び説教をしていた。
遠くで木が倒れる音がしているあたり、レイは逃げ続けているのだろう。

「あんなやつ、助ける必要はない。」

「ダメよ。同じ王国を護る仲間でしょ?少しは協力しなさい。」

「あいつと仲間なんかになった覚えは…まて、なんか音が近づいてないか?」

「え?言われてみれば…。」

サレアに言われティナは耳を澄ませると、確かについさっきより音が大きくなっている。2人は顔を見合わせ、音のする方を見つめた。

「おい、まさか…。」

「これって…。」

2人の予想通り、前方からフェルを抱えたレイがものすごい速さで走ってきた。




あの後、マンジェスネークは毒に気をつければ倒せそうだったがサレアにやり返すために殺さずに逃げ続けた。
そしてサレアの魔力の方へと走っていたのだった。

「あー!やっと見つけたぞエロメガネ!」

「貴様何故まだ倒していないのだ!」

「レイ君!早くこっちにーきゃっ!」

俺は頭にフェルを乗せ、ティナをお姫様抱っこしてそのまま走った。隣でサレアが死にそうな顔で走っている。

「おい!こいつどうするんだ!」

「ふっ…。俺に任せろ!」

俺はティナさんとフェルを空中に投げ、そのままサレアの足を掴んだ。

「貴様、何をー?!」

「ドーーンだYO!!!!」

そしてサレアを後ろに投げつけるとー


ーパックンチョ。

 
マンジェスネークはためらう事なく、サレアを丸呑みにした。
そして落ちてきたティナとフェルを抱え、俺は再び走り出した。

「ちょ、レイ君!何してるの?!」

「ははははは!やられたらやり返す、倍返しだ!さっきのお返しだ!」

『ぴゃぁ…。』

ティナは後ろを見ながら驚き、フェルは完全に呆れ顔をしている。

「あのままじゃ、サレア君が!」

「わかってます、すぐに終わらせますから。」

俺が空中に飛ぶと、マンジェスネークは口を開けながら俺の方へと体を伸ばしてきた。

「ティナさん、ちょっとフェルをお願いしますね。」

「え?きゃっ!」

ティナにフェルを預け、そのまま離れた所に投げ飛ばした。
そしてすぐに右手に氷の剣を作り、「八相の構え」をとった。

『グガァァァァァア!!』


「龍神の舞」


俺はマンジェスネークの周りを、高速で下の方へと回転しながら飛んだ。そして空中でティナとフェルをキャッチして、綺麗に着地した。

『グ、グギャァァアア!!』

振り返ると、マンジェスネークの体は輪切りのようになってバラバラになった。そして中からサレアが飛び出してきた。

サレアのところに駆け寄ると、サレアは嫌いなものに飲み込まれて気を失っているようだった。

「ふぅ…やっと終わりましたね。」

「まだ見つけてないんだけど…。」
  
「あ、プロードビートル見つけなきゃ!」


マンジェスネークが死んだせいか、今まで隠れていた魔物達がかなり出てきたが、そいつらを倒しながら虫探しを続けた。

起きたサレアと喧嘩をして、結局また説教をされたとかー。
しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...