132 / 210
第7章
閑話・小話詰め合わせ⑪(前編)
しおりを挟む『喧嘩するほど仲が良いなんてくそくらえ』
「指名依頼?」 『ぴゃぁ?』
「うん、レイ君に来てるわよ。」
ある日、ギルドから召集があったので向かってみるとアリアさんから1枚の紙を渡された。依頼人は何故かティナになっていて、依頼内容は書いてなかった。
とりあえず騎士団本部に向かうと、正面玄関にティナとサレアがいた。ティナは俺に手を振っているが、サレアは俺を見るなり不機嫌そうになった。
「レイ君、来てくれてありがとう!あら、随分可愛い子を連れてるのね。」
「こんにちはティナさん、今日はもう帰って良いですか?」
「あぁ、貴様は早く失せてもらって構わん。」
「ちょっ、待ってよ2人とも!レイ君もまだ依頼をしてないでしょ?」
「なんですか、依頼って?」
「じゃーん!」
ティナは持っていた紙を俺に見せた。紙には見たことのない昆虫が描かれている。
「なんですか、これ?」
「私の甥っ子が描いた絵よ。もうすぐ甥っ子の誕生日だから、その昆虫を生で見せてあげたいのよ。」
「それなら1人で捕まえられるんじゃないですか?」
「その…私、虫とか苦手で…。それに、そのプロードビートルって言うんだけど、それがコルータの森にいるって言われてるけどかなりレアなやつらしくて。」
「あの魔物の多い森ですね。でも、それならこのおっぱい魔人がいれば大丈夫じゃないですか?」
「えっと…。」
「貴様、次それを言ったらしばくぞ。だが、たしかにこのガキの言う通りだ。何故俺たちが必要なんだ?」
俺とサレアの指摘に、ティナは言葉を詰まらせた。目をそらし明らかに何かを隠している様子だったが、吹っ切れたのか急に副団長フェイスになった。
「この前の討伐で私は確信しました!あなた達は、上に立つ者としての自覚がありせん!」
「え?」 「は?」
「なんで本当にわからないみたいな顔してるの!いい?2人があんな喧嘩みたいなことしてたから、団員達が困ってたのよ?その自覚はある?!」
「それは、このおっぱい番長が…。」
「何か言ったかすけこまし?」
「ほら、そうやってすぐに喧嘩しない!というわけで、2人にはプロードビートルを探しながら仲を深めてもらいます!」
「「………はぁ。」」
「大丈夫です、カイザーさんとルージュさんの許可はとってありますから!」
何故か張り切っているティナと対照的に、俺たちは大きくため息をついた。
「最悪だ…。」
俺たちは馬に乗りながら、コルータの森に向かっていた。先頭でティナさんはご機嫌な様子だが、後ろの2人はお通やモードだった。
俺は肩から虫カゴをさげ、サレアの背中には虫取り網がくくりつけられている。こんな所を団員に見られたら、恥ずか死しそうだ。
「今回だけは貴様に同感だ…。」
「別にテメェと意見があった所で嬉しくねぇよ。おまえはエースを殺した赤犬並みに嫌いだからな…。」
「とんでもないネタバレをくらったが、俺も貴様はハガ○ンのエンヴィー並みに嫌いだ。ヒューズを殺しやがって。」
「しっかり見てんじゃねぇか…。糞が…おっぱい魔人ふぜいが見下してんー」
「こら、なんでそんな暗い雰囲気なの!」
いつの間にかティナは馬を止め、こちらを見てプンスカといった表情をしていた。
「もう帰りたいです。こんなやつと1秒でも一緒にいたら乳好きがうつる…。」
「は?それはこっちのセリフだエロガキ。貴様こそ、その若さを使って女性に甘えているんだろう。」
「あ〝ぁ?だったらお前は毎晩セイラさんに、いえいえいえいえいえぃ!ぱふぱふぱふぱふぱふ!とかしてんだろ、このデカパイキンが。」
「なんだその人を馬鹿にしたような言い方は!」
「馬鹿にしてねぇわ、むしろ結構面白いからな。アニメもだけど見てもないのに批判するやつの帰宅方面は、向かってあちら側でーす。」
「このマセガキが。いいだろう、勝負してーガッ!」
サレアが剣を握ろうとすると、何かがサレアの頭を弾いた。見ると、ティナが剣の鞘で叩いたようだった。目の前でサレアは頭を擦っている。
「こら!同じ立場とはいえ、相手はまだ年下なのよ?」
「だけどこいつはー」
「ぶはははははははっ!こ、これだけでも今日来た甲斐があっーいだだだだだだだだ!」
腹を抱えて笑う俺の頭に、フェルが容赦なく牙を刺した。
「はっ!愛犬に懐かれないとは、動物は貴様の本性を見抜いてるらしいな!」
「んだとこら!フェルは俺の頭を噛むのが好きなだけだ!後で魔物に襲われても助けてやんねぇからな!」
「貴様の助けなどいらん!」
「先に見つけて依頼を終わらせてやる!」
『ぴゃっー!』
「あ、レイ君!サレア君もー!」
俺とサレアは森まで競争し、慌ててティナが後を追いかけた。
22
お気に入りに追加
5,935
あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界を【創造】【召喚】【付与】で無双します。
FREE
ファンタジー
ブラック企業へ就職して5年…今日も疲れ果て眠りにつく。
目が醒めるとそこは見慣れた部屋ではなかった。
ふと頭に直接聞こえる声。それに俺は火事で死んだことを伝えられ、異世界に転生できると言われる。
異世界、それは剣と魔法が存在するファンタジーな世界。
これは主人公、タイムが神様から選んだスキルで異世界を自由に生きる物語。
*リメイク作品です。


異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる