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第5章
第77話
しおりを挟む壁の上を沿うように飛行し、銃口を壁に向け等間隔で刻印していく。壁とその下の地面に、刻印を続けていき壁を一周する。
『マスター、もう少しで終わります。』
『壁の近くも異常なしじゃ。』
「ありがと!」
一周し終わったら、王城の真上まで飛んでいきロゼッタを上に掲げた。
「紅葉、スサノオ壁付近は大丈夫だよね?」
『大丈夫じゃ。』『心配ないぞ、主人よ。』
紅葉とスサノオの声が頭に響いた。
「よし、始めよう。『物質分解魔法』」
引き金を引いた瞬間、壁は全て手のひらサイズの立方体の石に分解された。そのままだと、全て崩れ落ちるので魔法袋に全て吸い取り収納した。
そのまま銃を握る手をおろさず、もう一度引き金を引く。
「このままいくぞ。『地母神の城壁』」
引き金を引くと、壁があった地面に土色の魔法陣が何十個も浮かび、高さ15mほどの壁が出来上がった。
「『鍛冶神の煌めき』」
そして最後に、銃口から銀色の光の雨が壁に降り注いだ。壁は土色から灰色へと変わり、前より比べ物にならないくらい硬くなった。無事に、切れ目のない壁が王都を囲むように出来上がった。
「よし…これなら超大型巨人でも壊せないだろ。」
『お見事です、マスター。』
『さすがじゃな。』『お疲れ様です。』
「みんなもありがとね。じゃ、報告しに行こうか。」
これで、王都の壁修復作業は無事終了した。
イフさんの所に戻ると、ティナさんも合流していた。2人とも出来上がった壁をコンコン叩いたりしている。
「お疲れ様です!無事終わりましたね。イフさんがいてくれて良かったです!」
「いや、僕は何もしてないよ。それより見事な魔法だった。壁の強度も予想以上に硬くできているみたいだよ。これは、陛下の褒美が楽しみだね。」
「レイ君にもう驚く気もなくなってきちゃった…。でもこれで一安心ね、前のはだいぶガタがきてたから。」
「じゃあ俺は王城に行ってきます。今日はありがとうございました!」
2人と別れて、俺は王城に向かった。
入口で案内を受け、リーゼロッテさんの部屋に向かった。
「失礼します。」
「あ、お疲れ様です。部屋から見ていましたが、貴方がこの国の敵じゃなくてよかったです。」
「あはは…一応、修復完了の報告を。」
「わかりました、陛下には私の方から伝えておきます。謁見の日程が決まり次第、レストリア伯爵の屋敷に知らせますのでそれまでしばしお待ちください。」
「わかりました!ありがとうございました。」
王城を後にして、3人をもう一度連れてきた。
「まだ時間たっぷりあるから、何かする?」
「私は特に。マスターとデ、デートくらいですかね…。」
「妾は何か魔物を狩る!そして帰ってきたら酒を飲むのじゃ!」
「私は主人殿についていきます。」
「そっか…じゃあ依頼でも行くか。あと4つ達成すれば初ダンジョンに行けるしな!」
登録してから、かなりの数をこなしランク上げのダンジョン挑戦まであと少しになっていたのだ。
「なら、早く終わらせて帰るのじゃ!」
「うわっ、ちょ急に走るな!」
「マスター待ってください!」
「主人殿も大変だな。」
俺たちはギルドに向かって走り出した。
----------ーー
王国出て、少し離れた地下に1つの研究所がある。
王国魔道士団の研究室などではなく非公認の研究所で、違法な魔法や合成獣などの研究が密かに行われていた。
1人の研究員が、室長に一通の手紙を持ってきた。
「ミゼリア博士、エスト皇国からの手紙が…」
「ふんっ、やっと返事をしてきたか。全く、対応が遅すぎる。」
そう言いながら男ーミゼリアは封を切り手紙の内容を確認した。
だが、1分も経たないうちにその手紙はビリビリに破かれた。
「ふざけるなっ!こっちが頼んだのは、我々の研究道具の手配だぞ?!何が共同研究だ、そんなの我々の資料が欲しいだけじゃないか!」
「で、ですがエスト皇国でしか造られない機材が必要なのでは…?」
「うるさい!もう一度スナッチに手紙を出せ!共同研究ではなく、機材だけをよこせと!」
「は、はい!!」
部下はミゼリアの剣幕に怯え、慌てて部屋を出て行った。
ミゼリアは近くの机に拳を叩きつけた。
「見てろよ…!俺があいつの力を解読できれば、お前の国だけでなくこの世界は俺のものにっ…!」
ミゼリアは怒りながらも、不気味な笑みを浮かべた。
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