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第5章
第76話
しおりを挟む俺とイフさんは、騎士団の本部から最短距離の壁の下にいた。
「かなり古いですね…。」
「そうだね、初代国王の部下ー王国魔道士団の初代団長が建国した際に造ったって言われてるけど…それからもう何百年も経つからね。壁の規模が大きいから、一部だけ直すのを続けるのも無理だし、かと言って一回で全て直すのも不可能。こうなるのも仕方ないか…」
「初代団長は凄い人だったみたいですね。」
「まぁ団長になるくらいだからね。それに歴代の団長の中でも、頭一つ抜き出てたらしいから。」
そこへちょうど馬に乗った騎士がやってきて、降りてイフさんに敬礼した。
「イフ副団長、レイティス副団長からの伝令です。住民達への対処は順調に進んでおります!9割以上は完了しているので、始めて問題ないとの事です!」
「伝令ご苦労様。じゃレイ君、お願い。」
「それでは、手を横に広げてくれますか?脇の下に手を入れるので。」
イフさんの脇に手を入れ、ゆっくりと宙に浮いた。伝令に来た騎士は、そばで驚いた様子で固まっている。
「それじゃあいきますよ!」
壁は、当然ながら進撃○巨人ほどの高さはない。それに厚さもせいぜい3mほどだ。俺は一気に壁の上まで飛び、イフさんをおろした。
「確かに気持ちいいね!それにこんな高さから街を見るのは初めてだ!」
「どうやって修復すればいいですかね?」
「ちょっと待ってね…。」
イフさんはしゃがんで壁の造りを見始めた。壁は、煉瓦のような物が並んで造られている。前世で見た、海外によくある物に似ている。
「やっぱり側面を見て思ったけど、ギリアス積みだね。」
「ギリアス積みって何ですか?」
「簡単に言うとね、同じサイズの石の向きを長い面と短い面を交互に並べてる感じかな。」
確かに、キレイに規則正しく並べられている。そのおかげで長い期間崩れる事もなかったのだろう。
「でもこれだけの数の石を、1人で造るとは初代団長は凄いね…。」
「そうですね。でも、どうやって修復したらいいですかね?」
イフさんは、石をコンコン叩きながら悩んでいる。
「そうだねぇ…出来るならこの古い石は全て無くしたいけどね。出来そう?」
「それなら魔法袋にしまって問題ないと思います。」
「魔法袋も使えるんだ。ほんと君には驚かされてばかりだね。」
「石を取り除くのはいいんですけど、その後はどうしましょう?」
「ギリアス積みは見栄えもいいからそのまま活かしたいけど…それだけの石を作れるかだね。」
「あの…」
「どうしたの?」
「壁に切れ目をなくす造りなんかどうでしょう?」
俺は頭の中に、50mくらいの人が中に入っているあの壁を思い浮かんでいた。あれと同じようなものなら、新たに石を造らずに、今壁がある地面を盛り上げればいいのではないか。さすがにあそこまでの高さはいらないが。まぁこの世界にも巨人族はいるらしいが、この大陸にはいないから高さはかえる必要はないだろう。
「この下の地面を盛り上げるって事?!」
その考えはなかったのか、イフさんは目を見開いた。
「本当に?!これだけの大きさの壁だよ?!」
「はい、それ位なら簡単かと。」
「あははっ、君は本当に何者なんだい?サレアと同じ転生者だと思えないよ。」
「ま、まぁそこらへんは…いろいろと…。」
「別に深く聞いたりはしないよ。ならそれで頼もうかな。それと、出来た壁の強度を上げる魔法は使えるかな?」
「はい、それも出来ると思います!」
「じゃあ完成したらそれを出来る限り最大限に使って、半永久的に壊れない壁を作ろうか。高さも厚さも、今と同じくらいでいいと思うよ。」
「わかりました!それじゃ戻りましょうか。」
真下に転移して、イフさんをさっきいた場所に戻した。
「今のって…転移魔法?使える人は何百年といなかったはずだけど…。」
「えぇっと…まぁその話はそのうち…。」
「そうだね、今は壁が先だね。じゃあ後は頼んだよ!」
俺は転移して、再び壁の上に戻った。
「『異空間の扉』」
扉を開け、紅葉とスサノオに来てもらった。そして屋敷に転移して、ロゼッタも連れてきた。3人とも壁からの景色を楽しんでいる。
「とりあえず、今からこの壁を造り直すから、紅葉とスサノオは刀の状態で壁のあたりの人の魔力を追っててくれる?子供とかが近づいたら教えてほしい。」
「わかった!」「心得た。」
「ロゼッタは『刻印』を使いたいから、銃になってくれるかな?」
「わかりました。」
3人とも武器に変身し、紅葉とスサノオを左右に帯刀してロゼッタを右手に持った。
いよいよ、壁の修復作業が始まった。
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