魔王とスライム悠々自適スローライフ

いな@

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第1章

第42話 もふもふ

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「よし、このまま街を出ちゃおう」

 冒険者ギルドを出てすぐに門を目指してもらう。
 後ろを見ているけど、追いかけてくる気配は、今のところなかったので、もう走るのをやめて歩いている。

『はい。――あっ、委員長のうっとうしいロン毛をカットしてから出てくれば良かったです! 身体強化をした今なら逆モヒカンでもできていたはずなのに!』

 そういえば、茜ちゃんの髪の毛を切ったのは委員長って言ってた事を思い出した。

 茜ちゃんは立ち止まり、クルリと冒険者ギルドに振り返ったんだけど、その勢いでイルは脇に抱えられているため、遠心力で振り回されてブランブランしてる。

「ぶら~んで~すの~♪ ぶらぶら~♪」

 まあ、楽しそうだから良いよね。

 でも振り返った時、ちょうど森辻と委員長が出てきた。
 それを見た茜ちゃんは『魔法はイメージ魔法はイメージ』と念話で呟きながら、魔力をためているようだ。

『茜ちゃん? なにやろうとして――っ!』

『髪の毛の怨みを受けよ悪の委員長! 聖女になった私が邪悪な毛根を天に送ってあげます! 根こそぎ成仏しやがって下さい! ツルツルすべすべ逆モヒカンに永久脱毛三年殺しアタァァァーック!』

「ぶら~ん~で~す~の~♪ ぶ~らぶら~♪」

 また門の方に体ごと振り返り、イルを振り回しながら、恐ろしい言葉を念話で叫ぶ。

 身体強化はまだまだ効いてるから、素早い動きで魔法を放った後、門へ向かう時に、恐ろしくて見たくはないけど見えた委員長の頭頂部が……。

 ……マジか、ほんのり光っているじゃん……。

 だ、大丈夫か? 聖女の力は癒しだから大丈夫だと思うけど、毛根を成仏させたら……。

 心配になり、走る茜ちゃんの頭の上からじっくりと見た冒険者ギルド前にいる委員長の頭は――ほっ、ご自慢のロン毛は無事に残っているように見えた。

 いや、三年殺しって、三年後に委員長の毛根が成仏しちゃうってこと……。

 ……委員長、消して委員長の味方をするわけではないけど、茜ちゃんの魔法が失敗する事を祈っておく。

 門をそのままの勢いで、出ていく人の間をすり抜けながら脱出に成功し、茜ちゃんは身体強化が切れるまで走り、オークリーダー達を倒した森の近くにたどり着いた。

「ふう、ここまで来れば追い付けないよね」

「楽しかったですの♪ アカネ、私も歩きますの、下ろしてくださいです」

「あっ、苦しくなかった? よいしょっと」

 脇に抱えたまま数キロは走っていたけど、茜ちゃんもイルも大丈夫そうだ……けど、何あれ。

「苦しくありませんの、楽しかったですの」

「そう? なら良かった、友里くんは大丈……夫? ……ね、ねえ、友里くん、何あの猫さん」

 後ろしか気にしていなかったからだけど、ゴブリンとオーク達を倒したところに、草原でもひときわ目立つ白猫がうずくまっている。

「猫さんですの? ふおー! 真っ白猫さんなのです!」

「あそこはまだ、ゴブリンの血が落ちてる辺りだよね、飼い猫じゃないし、近付けば逃げてくれるかな。茜ちゃん」

「任せて、イルちゃん、行きましょう」

 俺の思いに気付いてすぐに行動を始め、五十メートルほど先にいる白猫に向かって歩き始める。

 近付くにつれ、その猫はそこそこ大きいことに気付く。
 大人の猫、より少し小さいけど、たぶん成猫になりたてだろう。

 そして後少し、三メートルくらいまで近付いた時、その白猫が怪我をしていることに気が付いた。

「茜ちゃん、怪我をしているみたい。回復魔法を使ってみるからって、茜ちゃんもできるよね?」

「うん。やってみる。初めてだから、もし足りなかったら友里くんもお願いね」

「分かった、任せて」

 手が届くところまで近付き、しゃがみこんだ茜ちゃんは、そっとイルからも手を離し、両手で細かく体が上下する白猫を覆うようにして『ハイヒール』と唱えた。

 ポワッと手が光だし、街道側から見えてなかったわき腹の傷が少しずつ塞がり始める。

 細かな傷はすぐに治って傷口が見えなくなったけど、やはり深い傷だけ一人では時間がかかりそうだ。
 そして茜ちゃんが二度目のハイヒールを唱えた時、しゃがんられず、トサッと尻餅をついた。

「大丈夫茜ちゃん! 傷が深いから魔力を使いすぎたのかな? やっぱり俺も手伝うよ、ハイヒール!」

「ふぃ~、こ、これが魔力切れ、全力でマラソン走った後くらいしんどいよ。二回ハイヒール唱えただけなの……あっ、委員長に三年殺し使ってたわ……」

 俺も一緒にハイヒールを重ねがけしたからか、みるみる内に傷が塞がって、細かく上下していた体も、ゆっくりとした上下に変わり、落ち着いたことが分かった。

「猫さんもう痛くないですの? まだ起きませんの?」

「ん~、そうだねイル。あっ、茜ちゃん、薬草採取の籠に入れて起きるまで連れていこうか」

「はい。それが良いね、このまま放っていくのも心配だし」

 そう言って籠を出し、血とか汚れは俺が吸収して、真っ白艶々になった白猫。
 茜ちゃんがそっと白猫を持ち上げ、優しく籠に入れて背に担いだ。

 ちょっと猫さんの血を吸収した時、ゴブリンや、オークを吸収した時とは違う感覚があったけど、痛くも苦しくもなってないから気のせいってことにして、茜ちゃんの頭の上に戻った。

 街道に戻り、ゆっくりだけど先へ進んだ先にあった、ちょっと小高い丘を越えた所先に、小さな村が見えた。

「お家が建ってますの、少ないから村なのです」

 見晴らしの良い草原だったから見えたその村に、三時のおやつくらいの時間に到着して、今日はここで泊まる予定だ。
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