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第1章

第41話 勇者と賢者……

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「ユウリ、君がオークリーダーを倒したというのか!」

「はい、魔法で倒しました。えっと、ほらここに傷跡があるでしょう」

 ギルドマスターだけではなく、他の冒険者も一番大きかったオーク、オークリーダーを見て、驚いているようだ。

 その額を指差して小さな穴が空いているのを確かめてもらった。

 クラスメイト達は、それどころではないのかな? 森から魔物が出てきたのは自分達が原因なんだと分かったからね。

「確かにあるようだが、頭に一ヶ所しか傷がないように見える、まさか一撃で倒したと言うことか?」
「いやいや、オークリーダーだぞ、最低Bランクパーティーで挑む魔物だぞ」
「マジかよ、眉間に一発だぞ」
「オークリーダー、滅多に出没しないが現れれば少なくない犠牲が出ると言うのに……」

 ええー、冒険者の先輩達、早口で被せるように俺をそんなに持ち上げようとしないで!

 俺を誉めちぎる冒険者達に比べでもクラスメイト達は……。

「なあ俺達ヤバくね?」

 ヤバいよね~。数こそ少なかったけどスタンピードが起きたんだからねぇ。

「あれだ、討伐イベント発生したのにアイツが邪魔したってことか?」

 いやいや、討伐イベントってゲームじゃないから!

「ねえねえちょっと、あの兄妹二人とも将来有望な美形の卵じゃない?」

「うんうん、頭に変な帽子かぶってるけど好みかも。」

 え? 美形? 俺が? 君も俺のこと無視してたよね!
 ってか変な帽子で悪かったね!

「まだチュートリアルだろ? 俺達は逃げることが正解のルートのはずだ……いや、あそこは俺達が倒すべきだったのか?」

 いやだからゲームと違うからね! ロリっ子から聞いたんじゃないの!?

「あっ、私もそう思ってたよー、みんな逃げちゃうんだもん」

 嘘っ! やっぱりみんなゲームと思ってるのかな……。

「委員長、コイツが僕達の獲物を横取りしたってこと?」

「ああ森辻、僕達に用意されていた経験値大量獲得イベントと、街を救う英雄への道イベントを横から奪ったようだね」

 森辻……委員長……お前達もか。

 途中から、冒険者の声が聞こえなくなり、冒険者ギルドにはクラスメイト達の喋り声だけが続いている。

「静かにしろ!」

 ダンと石畳の床を踏み鳴らしクラスメイト達を黙らせたギルドマスター。

「ユウリ、またお前に助けられたようだ。このオークリーダーがいる群れは、通常の群れより格段に対応が厳しくなる」

「チッ」

「バラバラな行動しかしない群れと統率の取れた群れとではまったく違うからな。ありがとうユウリ」

 途中、金谷の舌打ちが聞こえたけど、ギルドマスターには感謝され、回りを見ると冒険者達はうんうんと頷いていた。

『ね、ねえ友里くん。さっさと説明して、報酬もらって街を出ない? 何人かイルを見る目がヤバい感じだし、この姿の私を見る目も……』

『ダメダメですの、魔物をいじめるといっぱい来ちゃいますの、早く行くのです』

 茜ちゃんと、その頭の上、俺を見上げるイルの言う通りだなと思い、ギルドマスターに報酬を頼み、魔石を二人で拾い集めてオークリーダーを収納してしまう。

 オークリーダーは、俺達の旅先でステーキなんかになってもらうつもりなので、買い取りはしてもらわない。

「そうか、買い取れたら少し私も購入するつもりだったが残念だ。ゴブリンの魔石と、緊急依頼が出ていたからな、数が虚偽の申告をされていて、いつもより高めになったが、本来の一人銀貨二枚の報酬しか出せない」

「はい、それで大丈夫ですよ」

 ごねても仕方がないからねと、イルが手を出して、ギルドマスターから銀貨四枚、二人分をもらった。
 ニコニコしながら戻ってきて、二枚を茜ちゃんに渡し、空いた手で茜ちゃんの手を掴み、出発の準備万端なようだ。

『銀貨四枚だと、四万円ってこと? あっ、そうか、本来なら二人分じゃなくて沢山の冒険者が受け取るんだからそんなものかな?』

『焼き串が沢山買えますの!』

 疑問に思う茜ちゃんとは真逆で、今にもよだれが垂れそうになってるイル。

『くくっ、特別ボーナスとかは無さそうだね、よし、クラスメイトの怒られるところを見たい気もするけど、行こうか』

『『は~いですの~♪うん行こう!』』

「ギルドマスター、俺達は旅に戻りますので、これで失礼しますね」

「ああ、今回も王都危機を救ってもらい感謝する。優秀な冒険者には残ってほしいが、縛り付けることはしない。だが戻ってきた時には歓迎しよう」

 ギルドでの用事が終わり、外へ出ようと歩きだしたんだけど、俺達の前に回り込み、ニヤニヤと笑う森辻と委員長。

 無視して遠回りしようとするが、二人も同じように動き通してくれない。

「道を空けてくれるかな? 俺達はこの後街を出るんだ」

「いや、お前達二人は勇者である僕の仲間に相応しいようだ、歓迎しよう」

「そうです、こちらの勇者、そして僕が賢者。君達は強いようだし、旅などせずに僕達の仲間になるべきです」

「……断る。勇者に賢者と言うけどゴブリンとオークが出て、すぐに逃げ出すようなあなた方の仲間になる気はまったく無いから退いてくれるかな」

 茜ちゃんに身体強化をかけ、イルを抱えてもらい、二人の壁をすり抜けてギルドの外に出てもらった。
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