【完結 R18追放物】勇者パーティーの荷物持ち~お忍び王女とダンジョン攻略。あれ? 王女のダンジョンも攻略しちゃいました~

いな@

文字の大きさ
上 下
16 / 103
第一章

第16話 村での昼ごはん

しおりを挟む
「おじさん! 俺が倒してくる、任せておいてくれ!」

「え!? ですがオークが五匹ですよ! 一人では危険すぎます!」

 なんだ、五匹か。

 もっと沢山の群れが畑を荒らしに来ているのかと思ったが、いや、見たのが五匹だけの可能性が高いか。

「私もちょっと魔法が使えるから一匹は任せて!」

「私も一匹は相手取れるわ、畑はどっち!」

 エイアとリーンが席を立ち、早速装備を確かめ始めた。

「出て左だ、たぶんもう林から出てくるところだったから、見えてくるだろう、頼む! 今畑を荒らされると冬には餓死者が出るかもしれないんだ!」

「よし、行くぞ!」

 俺は勢い良く開いていた戸から外に出てすぐ左へ走る。少し遅れて二人が走って来るのが分かった。

「見えてるわアイテール! でも五匹どころじゃないわよあれ!」

 その通りだった。パッと見ただけで二十近くのオークが見えている。

 森から畑は確かに少し離れているが後十メートルもないところまで来ている。

「大丈夫だ! 元からそのつもりで来たからな、任せておけ!」

 村の柵を飛び越え、俺はあぜを走りながら頭上に風の刃を浮かべ、まずは畑に入りかけている三匹に向かって飛ばした。

 風の刃は、シュッと音を一瞬だけ立て、飛んで行き、三匹の首を飛ばした。

「ウインドカッターを三つも! 私も負けないぞ! ウインドアロー!」

「やるにゃ、アイテールにエイア。にゃら私もにゃ! ウインドアロー!」

 二人も俺に続き、後続のオークに向かって魔法を撃つ。

 俺も負けじと続け様にまた三つのウインドカッターを撃って、合わせて八匹のオークが倒れた。

 そこまで行くとオークも俺達に気付き――。

 ウボォォォ! と叫ぶと持っていたこん棒を振り上げ向かってきた。

「二人は魔法を! ウインドカッター!」

「「任せて!はいにゃ!」」

 これで、十三匹が倒れ残りが五匹、俺は腰のダガーを抜き放ち、驚いている一番手前のヤツの首を目掛け、右手を振り切る。

 ザシュッと、太い首の半分近く切り裂いた時、二人の撃った魔法は二匹を撃ち抜き、残り二匹。

 魔法では近すぎるが、ダガーでは届かない距離、三メートル残っている――。

 ――俺はオークに向けて空振りするような距離でダガーを振り切った。

「それじゃあ届かないにゃ!」

「アイテール! 早すぎよ!」

 俺は走るのを止め、歩いてオークの間を抜けると、こん棒を振り上げていたオークはその場で崩れるように倒れていった。

「なんで倒れてるの!? 絶対届くはず無いのに!」

「そうにゃ、おかしいにゃ! 獣人の私が魔法使えるくらいおかしいにゃ!」

「そう言えばそうだな、リーンはなんで魔法使えるんだ?」

 獣人が魔法を使うのは聞いたこともない。

「俺のは簡単だぞ? 魔力で切ったからな。良くやるだろ、固い敵を切る時魔法で武器を補強するヤツだ。あれを伸ばしてやれば五メートル近くは伸ばせる」

「そんな事できるなんて聞いた事もないよ? ね? リーンの魔法も不思議だけど」

「確かに武器の補強はするけど、私もそんにゃの聞いた事にゃいわ。魔法は頑張ったらできたにゃ。獣人でも初めてじゃないかにゃ? 攻撃魔法が使えるにょは」

「凄いな。それより気になってたんだが」

「あっ、私も凄く気になってるんだけど」

「「言葉尻の、にゃは口癖リーンのにゃってなに?」」

 リーンは一瞬だけ思案顔になったが、ハッとした顔に変わり。

「そ、それは子供の頃使ってて直している最中なの、その、猫系の獣人はたまに大人でも使っているけど、そんなに珍しくはないわよ、それより、畑を踏み荒らされなくて良かったわね」

「そうなのか、まあその言葉遣い可愛いから似合ってるぞ」

「うんうん。私もそう思うな。アイテールのを舐めてる時なんてすっごく可愛いもの」

「おーい! お前達大丈夫かぁー!」

 宿からおそるおそる出てきた御者のおじさんが、呼んできましたので、俺達は宿に戻りながら手を振った。

 おじさんや、知らせに来た人も、その時食事をとっていた方達もゾロゾロと宿の前に出てきていて、ちょっとした集まりになっている。

「来ていたオークは全部倒せたぞ、今はそのまま置いてあるから早めに回収してくれるか? 買い取ってもらえると助かるんだが宿のご主人さん、オークはどうだ?」

「五体か、それならうちの食材倉に余裕で入るな。全部買わせてもらうぞ」

「いや、十八匹だ」

「何!? そんな数がいたのか! いや、うちのは魔法がかけられているから入るには入るか、それだけいるなら冬の保存用にもなるな、よし、一体銀貨一枚で良いなら買い取りしよう」

「良いのか? 解体していないが、冒険者ギルドなら大銅貨八枚が良いところだぞ?」

「村の畑を守ったんだ、ちょっとしたご祝儀だ。待ってろ、おい誰か手を貸してくれ! オークが十八匹だから台車と人手がいる」

 そう言うと客以外、旅装束ではなく、服に畑仕事をしていた泥や、手に農具を手に持っていた数名は各々『台車取ってくるぜ』『任せときな』と走って、台車を取りに行った者や、農具を宿の壁に立て掛け早速畑に向かうもの達が。

「んじゃ、細かくて悪いが銀貨······十八枚だ、よし、俺も行くとするか!」

 そう言い宿の横にあった荷台を引き、畑に向かった。

「お疲れ様、よし食事を注文して食べて出発······食事は出るのか?」

「あ~、あはは。ご主人さん行っちゃったしね」

「お昼ごはん食べ損ねてしまうようね」

「行ってしまったな、ここはあの主人が一人で料理をしてるから、それなら出ないだろう、俺も今から注文と思っていたのだが」

 客の一人もそんな事を呟いている。

 解体して持ってくるようで、まだまだ時間がかかるようだし、昼飯抜きは辛いので、俺達は保存食でお昼をすませ、午後の移動が始まった。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...