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エウダイモニア
78話 罪悪感
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賑やかな声は近づくにつれ子供の笑い声であることに気づく。
「こ、孤児院?」
「ピンポーン」
裏手に周るとそこには先ほど別れたみんながいた。
「トート!ライ!」
フィールが子供を肩車したままこちらに手を振るう。フィールの声に反応し子供達の視線がトートとライに集まる。
「よっ!みんなの久しぶり。元気にしてた?」
ライがしゃがみながら言う。子供達は元気に頷く。
「このお兄ちゃんだーれー?」
「トート、自己紹介」
トートは自己紹介する。
「初めてまして、トートです。いつも皆さんにはお世話になっています。よろしくね」
堅苦しすぎたか子供達の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「トート君はパイロンの新入りよ」
見かねたセリアさんがフォローに入る。
「そうなんだ」
「お兄ちゃん遊ぼう」
トートはしばしば子供達と遊ぶ。しかし無尽蔵の体力についていけず、木陰で休む。遠くから見ていると、ある異変に気付く。
「お疲れ様です。トート君」
パーチミが近づく。
「パーチミさん、お疲れ様です。あのファーデンさんは?」
「ああ、お墓参りです」
トートは首を傾げる。
「世間ではストゥルティは全員、捕らえたってことになっていますが、何人かは死んでしまったんです」
え?、トートは目を見開く。トートがさらに質問しようとするが、
「ここを創る時、最も力を入れたのがこの孤児院なんです」
話しを逸らされてしまう。しかし『かかしの英雄』と関係がある様な気がしてそれ以上の深追いはやめる。
「ここの子達って」
「戦争孤児です」
戦争孤児、戦争によって親を奪われた子供達のこと。本来なら国が責任を持って保護しなければならない、しかし国は自分達の利益しか見ていないため、子供達を見て見ぬ振りをする。戦争の犠牲の内の一つだ。
「ラズリはそこ子供達をできる範囲で引き取ってここで暮らせる様にしてるんです」
パーチミが悲しそうな顔する。
「見捨てられた子供が歩む末路は2つ。1つ目は餓死、病死で死ぬ。2つ目は犯罪に手を染めて生き残る。どっちにせよ悲惨な末路です。全員という訳ではありませんが」
「ラズリさんは・・・」
トートは少し躊躇うも聞いてみることにする。
「ラズリさんは子供に特別な感情を抱いている様な気がするんですが・・・」
「それもきっと分かると思います」
パーチミは子供達の方を見ていた。だがその目は何処か遠くを見ている様だった。
「お兄ちゃんー」
子供達に呼ばれそれ以上聞くことを止め、再び子供達の遊びに付き合うためトートは戻る。
『エウダイモニア完成を祝って、かんぱーい」
この村は初め戦争で怪我をした者、または自ら辞職した者達で構成されていた。そして彼から今では、他国から逃げてくる者達の手引きや職のために技術支援、教養を教えるなどを行なっている。
『いやー、まさか本当に創ってしまうとはね。驚きだよ!』
『ですが、これからです。ここを偽善だという人達は多いでしょう。そこをどう乗り切って行くかが今後重要です』
『パーチミさんはお堅いね。まっ、前代未聞の挑戦だ、案外気楽にやった方が上手く行くかもよ?』
『お前はもっと引き締めろ』
仲間の一人が突っ込む。
『だが!分かる』
勢いよく酒を飲みグラスを勢いよく上げる。
『この村が起動に乗ったらどれほどの奴らが幸せや平等を受理出来て、不幸を減らせる。そして、その活動に参加しているってだけでニヤニヤが止まんねーな!おい!』
村の完成に笑い合う。だが一人参加しない者がいた。
『ラズリ』
屋根の上から笑い合う者達を眺める。
『参加しないのですか?』
ラズリは黙り込む。
『ラズリ、君は自由・・・』
『語る未来はあれど歩む未来はない』
その言葉を最後に会話は終わる。
パーチミは子供達と遊ぶトートを見る。
トート君、すみません。私達は君に全てを押し付けることになってしまう。何故ならもう私達はラズリに何かをしてあげることは出来ないから。私達はあの幼い子に全てを押し付けた。それがどれほど、あの子を苦しめるっと分かっていながら私達はあの子を地獄へと送り込んだ。あの子はきっと自分のせいだっと言う。しかし、自由に生きろっと言いながらあの子の手を離せなかったのは私達なのだ。
「(君はあの子の過去を知ってしまった時、どんな行動を取るのだろうか。どうか拒絶だけはしないでおくれ。いや、その選択ですらラズリ、君は肯定するのだろう)」
勝手な願いだと思いながらもそう願ってしまう自分に呆れ、ため息を吐く。
「こ、孤児院?」
「ピンポーン」
裏手に周るとそこには先ほど別れたみんながいた。
「トート!ライ!」
フィールが子供を肩車したままこちらに手を振るう。フィールの声に反応し子供達の視線がトートとライに集まる。
「よっ!みんなの久しぶり。元気にしてた?」
ライがしゃがみながら言う。子供達は元気に頷く。
「このお兄ちゃんだーれー?」
「トート、自己紹介」
トートは自己紹介する。
「初めてまして、トートです。いつも皆さんにはお世話になっています。よろしくね」
堅苦しすぎたか子供達の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「トート君はパイロンの新入りよ」
見かねたセリアさんがフォローに入る。
「そうなんだ」
「お兄ちゃん遊ぼう」
トートはしばしば子供達と遊ぶ。しかし無尽蔵の体力についていけず、木陰で休む。遠くから見ていると、ある異変に気付く。
「お疲れ様です。トート君」
パーチミが近づく。
「パーチミさん、お疲れ様です。あのファーデンさんは?」
「ああ、お墓参りです」
トートは首を傾げる。
「世間ではストゥルティは全員、捕らえたってことになっていますが、何人かは死んでしまったんです」
え?、トートは目を見開く。トートがさらに質問しようとするが、
「ここを創る時、最も力を入れたのがこの孤児院なんです」
話しを逸らされてしまう。しかし『かかしの英雄』と関係がある様な気がしてそれ以上の深追いはやめる。
「ここの子達って」
「戦争孤児です」
戦争孤児、戦争によって親を奪われた子供達のこと。本来なら国が責任を持って保護しなければならない、しかし国は自分達の利益しか見ていないため、子供達を見て見ぬ振りをする。戦争の犠牲の内の一つだ。
「ラズリはそこ子供達をできる範囲で引き取ってここで暮らせる様にしてるんです」
パーチミが悲しそうな顔する。
「見捨てられた子供が歩む末路は2つ。1つ目は餓死、病死で死ぬ。2つ目は犯罪に手を染めて生き残る。どっちにせよ悲惨な末路です。全員という訳ではありませんが」
「ラズリさんは・・・」
トートは少し躊躇うも聞いてみることにする。
「ラズリさんは子供に特別な感情を抱いている様な気がするんですが・・・」
「それもきっと分かると思います」
パーチミは子供達の方を見ていた。だがその目は何処か遠くを見ている様だった。
「お兄ちゃんー」
子供達に呼ばれそれ以上聞くことを止め、再び子供達の遊びに付き合うためトートは戻る。
『エウダイモニア完成を祝って、かんぱーい」
この村は初め戦争で怪我をした者、または自ら辞職した者達で構成されていた。そして彼から今では、他国から逃げてくる者達の手引きや職のために技術支援、教養を教えるなどを行なっている。
『いやー、まさか本当に創ってしまうとはね。驚きだよ!』
『ですが、これからです。ここを偽善だという人達は多いでしょう。そこをどう乗り切って行くかが今後重要です』
『パーチミさんはお堅いね。まっ、前代未聞の挑戦だ、案外気楽にやった方が上手く行くかもよ?』
『お前はもっと引き締めろ』
仲間の一人が突っ込む。
『だが!分かる』
勢いよく酒を飲みグラスを勢いよく上げる。
『この村が起動に乗ったらどれほどの奴らが幸せや平等を受理出来て、不幸を減らせる。そして、その活動に参加しているってだけでニヤニヤが止まんねーな!おい!』
村の完成に笑い合う。だが一人参加しない者がいた。
『ラズリ』
屋根の上から笑い合う者達を眺める。
『参加しないのですか?』
ラズリは黙り込む。
『ラズリ、君は自由・・・』
『語る未来はあれど歩む未来はない』
その言葉を最後に会話は終わる。
パーチミは子供達と遊ぶトートを見る。
トート君、すみません。私達は君に全てを押し付けることになってしまう。何故ならもう私達はラズリに何かをしてあげることは出来ないから。私達はあの幼い子に全てを押し付けた。それがどれほど、あの子を苦しめるっと分かっていながら私達はあの子を地獄へと送り込んだ。あの子はきっと自分のせいだっと言う。しかし、自由に生きろっと言いながらあの子の手を離せなかったのは私達なのだ。
「(君はあの子の過去を知ってしまった時、どんな行動を取るのだろうか。どうか拒絶だけはしないでおくれ。いや、その選択ですらラズリ、君は肯定するのだろう)」
勝手な願いだと思いながらもそう願ってしまう自分に呆れ、ため息を吐く。
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