最愛の敵

ルテラ

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エウダイモニア

75話 失望

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 皇帝と食事をした日。
 ラズリは赤ワインをいろんな角度から見た後、グラスを静かに置く。
「替え玉作成をやる」
「え“?マジ?」
 ライの質問にラズリが頷く。
「元よりそのつもりなんだろう?」
「どう言うことだ?」
 ファーデンは要領が掴めず問う。
「皇帝の娘さんはまだ幼いのでそれを言い訳に参加を見送ることが出来ますが、皇后は原則、皇帝が参加するイベントには共に出なければいけませんから。しかし危険があるかもしれない。そこで」
「ラズリが皇后の真似をするってことだよ」
 レオに続けてライが言う。ファーデンが苦虫を噛んだ様な表情をし皇帝を見る。
「ま、まぁ。そうだ」
 咳払いをする。
「皇后に許可は取ってあるんですか?」
 アイシャが質問し、皇帝は頷く。ラズリは少し考えた後、分かった、っと承諾する。

 つまり、トートと踊ったラズリはライで、今皇帝と踊っているのはラズリ、
「(まあ、オムニブスの件もあるからなるべく巻き込みたくないって言うのが本音だろうな)」
「(しかし、トートに知らせる訳にはいかない)」
「(トートの前で話したら断れないっと踏んだか)」
「(しっかりしてるわね。皇帝陛下)」
 そんな思いも知らずトートは二人のダンスを眺める。ちなみな初日に挨拶しにきたのは本物の皇后だ。
 そんなことを思っている間にダンスは終了。
 皇帝と皇后(ラズリ)が席に戻ると自由に貴族達がダンスを踊ったり雑談したりパイロンに群がる。

 パイロンが群がられている間、ラズリは煌びやかな空間を眺めていた。
「(何と無駄な時間だ)」
 前も今も何も変わらないな。議会に出たことはあった。出たと言っても皇帝の護衛で皇帝の影に潜んでいたにすぎなかったが。
 何の生産性もないあれに何の価値がある。何故赤は赤なんだ。何故1日は24時間しかないんだ。そんなことを考えている方がよっぽど有意義だと思うほど無駄な時間だった。お前達の時間は無限なのかもしれないだが、国民の時間は有限だ。今だってこれは税金で賄われている。それなのにその国民は蚊帳に外。それを当たり前だと思うこいつらはどれ程、傲慢なんだろう。
「なんて愚かなんだろうね」
 さもそこにあったかの様な声、静かで場の空気を害さない。それで異質な声に思わず反応が遅れる。辺りを見渡す。
「上!」
 誰かが叫び指を指す。皇帝と皇后の上、少しでっぱりのある壁に2人の人影がある。皇帝と皇后はすぐにその場から離れる。
「何者だ!」
「私は『ソロモン』」
「僕はオムニブスの『セイレ』です」
「(オムニブス!)」
「(セイレ!ラズリさんが言っていた!?)」
「(オムニブス?セイレ?)」
 トートは状況が掴めずにいる。
「おっと、今日は争いに来た訳じゃありません。真実をお見せしに来ました。動かないで下さい。人質がどうなっても知りませんよ」
どう言うことだ?
 ソロモンが指を鳴らすと巨大なモニターが表示される。そこには女性と幼い少女が目隠しと手足を縛られていた。
「サラ!エミール!」
 皇帝が叫ぶ。そうモニターに映し出された二人は皇帝の妻と子供だ。
「落ち着いて下さい。皆さんが余計な真似をしなければ危害は加えません」
「ライ、よせ!ボソ」
 イヤリングの通信機で『影』を呼ぼうとするライをレオが制す。ライは止められ諦める。
何をするつもりだ?
「手始めに。パイロンの皆さんにはこれを着けてもらいます」
 投げられたそれは魔力遮断器だった。パイロンはそれを着ける。
「ではそろそろ本題に入りましょう。この映像をご覧下さい」
 モニターが切り替わる。
『さぁ、No.1、訓練の時間だ』
 白髪の少女が映し出される。目は前髪に隠され見えない。白髪?トートはその考えのまま硬直する。その白髪の少女は頑丈な椅子に縛りつけられる。
『やれ』
 その命令で少女の腕に注射が刺され液体が注入される。すると少女は暴れ出し悲鳴を上げる。
 貴族達は口元を押さえる者、顔背ける者達、各々で嫌悪を現す。
「お気持ちはおっさしします。ですがどうか最後まで見て欲しい。これはあなた達が知らなければならないことだ」
 三文芝居の様な演説。だがそれが興味をそそられる。
 また映像が変わる。そこには血塗れの白髪の少女と2体の無惨な遺体が転がっていた。映像はそこで止まる。
「『かかしの英雄』は人工的に作られたのです」
 どよめきが部屋を埋め尽くす。そして三文芝居の様な演説は続く。
「そして、かかしの英雄は血の味を知りあの様な残酷な行動を取ったのです」

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