最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

44話 繋がる点

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 ラズリはようやく
「ああ」と簡潔に答える。
 男は下唇を噛み、俯く。
「殺されるのですか?」
 人々は囁き合う。
「いや」
 男はラズリの方を向く。
「嘘だ!仮に殺されなくても捕虜として奴隷のような人生を送るんだ。そうなるくらいなら・・・」
「死ぬか?」
「そうだ。止めて・・・」
「止めない。だが後悔なく死ねよ。取り残される人のためにもな」
 男は自身の指に嵌め込まれた指輪を触る。
「誰が死にたいと思う。しか・・・」
「お前たちは死なせない。安全を約束する」
 人々はヒソヒソと話し合う。無理もない。今まで信じていた国に裏切られ、敵国に助けられかけているのだから。
 だがここで信じてもらわなければ戦いに支障が出てしまう可能性もある。彼らには何としても信じてもらわなければならい。
「わ・・・私信じます」
 1人の女性が震えながらも手を挙げる。
「パイロンさんがいなければ今も辛い目の合わされていたと思うし・・・信じます」
 その言葉と共に「俺も」、「じゃあ」次々と賛同してくれる。
 人々の目には一筋の希望が見える。
 指輪を嵌めた男もまたそれに賛同する。
「何をすればいいですか?」
「全員の鎖を外し、スイマール帝国の兵が来るまでここで待機していてくれ。外の敵を倒す」
 ラズリは魔力を吸いとっていた部屋を思い出す。死体の山の中に服装・・・

「壁の上にいた奴らは全員白だな」
「どうやら部屋の中にいた人達のみのようね」
「1人は残しておけば・・・」
 レオが何か異変に気づく。
「どうした?」
「死体を調べるのにどのくらいかかりましたか?」
「全員って訳じゃないから20分くらい?それがどうしたの?」
「静かすぎる」
 その言葉に戦々恐々を覚え、町を見る。誰もいない。人も動物もなにもいない。
「な、なんで・・・」
「おかしいだって、昨日は・・・」
「ええ、賑わっていたよう・・・」
 レオの言葉が途切れる。昨日までは賑わっていたはずだ。なのになんで。賑わっていた?なんでそんなことが言えるんだ?俺らは壁の外かシートに覆われたシートの中しか行き来していない。
 レオは民間の屋根へと飛び移り窓を破壊し入る。
「お、おい。どうしたんだ急に」
 2人も後を追いかける。
「やられた」
「どういう・・・えっ!?」
 そこにはスピーカーが置かれていた。
「これで怪しまれないように録音していた音を流していたんです。俺達はそれを聞いてまんまと人がいると錯覚していた。電灯まで点けて」
「でも、それなら『影』が気づくでしょう?」
 確かに情報ではそんな情報入ってこなかった。
  ゾッ 
  ド ド ド
 3人の背筋が凍る。その瞬間3人は外へで構える。
「あっ!あそこ」

 誰も知らない。アデリアに向かう一つの影。

「皇帝陛下!地上が見えて来ました」
「よし総員、急いで上陸せよ」
「船はどういたしますか?」
「ヘルメスを使って使いものにならん捨てるぞ」
 スイマールは艦隊を捨て地上へと逃げ込む。

「敵、艦隊を捨て地上に逃げ込みました」
「こちらも上陸するぞ」
 アデリア軍も上陸する。
「皇帝に勝利をー」
『皇帝に勝利をー』

「逃げろー」
 スイマールはアデリアからひたすら逃げ惑う。
「撃てーー」
 ドン ドン
 ‘ギャーーー’
「何事だ!」
 突然アデリアの軍隊に向かって何かが放たれる。
「な、なぜ?」
 そこには戦車に乗った者や武装している者もいた。
「逃げろー」
 今度はアデリアが逃げる。しかし・・・
「後ろから敵です」
「背後を取られたと!?なぜだ」
 パニックになるアデリア兵達。

「皇帝陛下」
 軍服を着たライの姿があった。
「良き作戦を思いついてくれた」
「いえ、僕ではなくラズリの作戦です」

ー70日以上前ー
 一行は「羊のいざない」に行った際に遡る。
「植民地域からじゃなく?」
「探ってみ・・・」
「いや、いい。嫌でもぶつかるんだ。その時探ればいい。それと例の抜け道どうなった?」
「あぁ、トートには手短に話すために帝国まで続いてるって言ったけど実際は海の方の町にしか繋がっていないぽい」
「場所は?」
 ライは首を振るう。
「神聖インティーム帝国の方は崩壊が激しくてもうちょいかかる。町の方からも探してるけど下手な行動取ると怪しまれるから難しい」
「大量の人をどうやって本国に?」
 レオがライに質問する。
「仮説だけど姿を隠すアーティファク的な物を使ったんじゃないかな?深夜にそれを使って船まで移動。不可能じゃない」
「町の方を探そう。それよりライ、皇帝に会いこの作戦を伝えて欲しい」
 作戦の概要をライに伝える。
「了解」
 ニヤリとし答える。
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