最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

23話 騙された

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 何かを言いかけるが止める。
「・・・さん!」
「何か聞こえない?」
 全員が耳を顰める。
「アイシャさん、フィールさん!」
 トートが走って来る。
「トート!どうして?」
「ハァハァ、逃げてください!」
 息を切らしながら必死に訴える。
「落ち着けトート」
 フィールがトートの両肩を掴み軽く揺する。
「さっき『影』さんが来て・・・」
 トートはさっき得た情報を手短に話した。
「・・・わかった。全員ここから撤退しろ。それと上官達にこれを話して軍を全部撤退させろ」
「皆さんは?」
 フィール達についてきた1人が問う。
「俺たちはラズリ達に知らせる」
「あの自分も・・・」
「行くよ!トート」
「はい!」

ー現在ー
「と言うわけなんです」
「では彼らが上手く伝えていれば」
「死人は出てないはずだ」
 レオとフィールが安堵する。
「よかったです」
「お礼ならトートにね」
「ありがとございます。トート」
「いえ、自分も情報がなければどうすることもできませんでした」
「行くぞ」
 ラズリが立ち上がる。
「そうね。戻りましょう」
「いや、あそこに」
 ラズリは巨大な大砲を見る。
 
 アイシャ、フィール、トートは辺りの捜索。ラズリ、レオは大砲を調べる。
「デカいな」
 遠くで見てもデカいとわかったが近くで見るとより迫力がある。
「ラズリこちらに」
 レオの声のした方向に行く。
「ここ」
 そこには人一人くらいの高さがある扉があった。
「開けて見ますか?」
 ラズリは頷く。
 扉は取っ手に触れると自然と開いた。
「えっ?」

「すごいですね。これ全部お二人だけで?」
「・・・」
「あの・・・」
 トートは2人の方見てすぐに口を閉ざした。
 仮面越しではあるものも二人の緊張が伝わってくる。まるで何かに怯えているように。
「(どうしたんだろう)」
 そう思いながらも聞くのは憚れた。
 2人が足を止める。
「えっ?」
 トートは目は自身の目を疑う。そこには跡形もない空間があった。自分は分からず聞こうとしようとする。
「戻るぞ」
 フィールさんは深刻そうに言い来た道を戻る。
「あの・・・」
「後で話しましょう」
 アイシャさんも後に続くので自分も続・・・。
 ドオオオオ
 とてつもない密度の魔力が全身を襲う。
 冷や汗が流れて、全員が金縛りにあったように動かない。
「急ぐぞ」
 2人は急いで走る。魔力が放たれた場所はラズリさん達がいるところだ。
「(何が起こって)」
 戸惑いながらも自分は2人の後を追いかける。

「ラズリ!レオ!返事して・・・!」
「ここだ」
 ラズリさんが顔を出す。
「この魔力は何?」
「しっ」
 ラズリさんは人差し指を口元で立てる。
「こっちだ」
 そこにはレオさんがいた。そしてマントに包まれた眠っている金髪の少女がそこにいた。
「その子は?」
 フィールさんが眉間に皺をよせ問う。
「大砲の中にいた。恐らく動力源だろう」
「なっ!!」
「生きてるの?」
 アイシャさんが驚きながら問う。
「えぇ生きてます。とりあえずこの子を保護して帰りましょう」
 自分らは帰路に着く。

ー5日後ー
 皇帝は正式に神聖イニティーム帝国を従属したと報道した。しかし皇帝は2つのことは伏せた。
 1つ目はアデリア帝国及び神聖イニティーム帝国に騙されていたこと。
 2つ目は大きな大砲について。
 従属したとは言ったが、神聖イニティーム帝国は大砲により巨大な穴のみを残しただけだった。これを皇帝はイニティーム帝国が自ら国ごと爆破したと報道し、詳しい事はわからず終わりを迎えた。

「お兄ちゃん、早く、早く」
「待って。アシーちゃん」
 例の女の子はその後、引き取り手がない為、パイロンがしばらく引き取ることとなった。名前がなかったので少女は名前は「『アタナシアナ』となった。愛称は『アシー』だ」
 自分は絶賛、遊び相手をしている。

「やっぱり似ているな」
 アタナシアナを窓越しに見ながらライがいう。
 パイロン以外にライとセリアも話し合いに参加していた。
「”奴ら”が生きてる説濃厚だな」
 フィールが深刻そうに言う。
「フィール!」
 アイシャが叱るように言う。
「どうしましたか?ラズリ」
 先程から下を向いたままラズリを心配してレオが問う。
「いや、続けてくれ」
「やっぱり無理にでも探るべきだったな」
 ライがため息混じりで言う。
「そう指示した。これからも探らなくていい」
「いや、でも・・・」
「死人は出したくない」
「わかった。じゃあ周辺を探るのはいいだろう?危険だと思ったら直ぐに撤退するよ」
「わかった」
 ラズリは承諾する。
「それであの子はどうするの?」
 窓越しにトートとアタナシアナを見ながらセリアがいう。
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