4 / 6
発情期とその反応-これからの方針について
しおりを挟む※※※※
西川さんはプログラマーとして在宅で働く男性だ。
仕事をしている社会人だが引きこもりがちで、一か月に一度家から出たらいい方らしい。
そんな西川さんと俺が出会ったのは、まさに奇跡としか言いようがないことだった。
※※※
高校一年の時、俺は初めて発情期を経験した。
それも学校から帰宅途中、人通りのある公道で突然発情期に襲われた。
体中の血液が沸騰するように熱くなって、息が上がり、全力疾走をした後のように心臓がどくどくと激しく脈打ち、苦しくてその場にしゃがみこんだ。
俺を見て通行人たちが足を止めた。
「…助けて」
手を伸ばそうとした。
助けてくれると思った。
しかし、ふらふらとこちらに近寄ってきた人は俺の腕を掴むと、無理やり立たせて近くの公園のトイレに連れ込もうとした。
下を見ると、その人の股間はズボンを押し上げて、パンパンに膨れ上がっているのがわかった。
その人だけじゃない。
今まで普通に道を歩いていた人たちの目の色が変わり、操られているようにふらふらとこちらに近づいて、トイレに連れ込もうとする人に手を貸している。
ぼんやりとした意識の中、やばいと思うのに、体がうまく動かない。
体中を複数の人の手によって撫でまわされる恐怖を感じながら、逃げることも抵抗することもできない。
ぶしゅーっ!
突然スプレーの音とともに、拘束が解かれ、俺は地面に投げ出された。
「早く!走って!」
優しそうな男性の声がして、腕を掴まれて走った。
「もう、大丈夫だろう」
発情期でただでさえ息が上がっているのに、結構走ったため俺は汗だくで、息も絶え絶えだった。
そんな男性はベンチに座らせると、ボロボロの小物入れを取り出す。
「ほら、これを飲みなさい」
男性はボロボロの小物入れから薬を取り出すと、ぐっと俺の口を掴みそのまま突っ込んだ。
「ちょっと水買ってくるけど、何かあったらすぐ大声出して」
そして近くの自動販売機で水を買ってきてくれて、俺に手渡した。
走らされて、苦い薬を水なしで口に突っ込まれて、その人に対する印象はあまりよくなかった。
俺は水を受け取ると、ぐっと半分くらいまで飲み干した。
「しばらくすると落ち着いてくると思うけど、それまで待っていようか」
男性は俺の隣に座ると何か話すでもなく、ぼーっとしていた。
そう、その男性が西川さんだった。
※※※
西川さんはその時たまたま一か月に一度くらいの外出で歩いていたところを
たまたま発情期になって襲われそうになっていた俺に出くわし助けてくれた。
そのまま、オメガ同士ということで他ではできない話で盛り上がり、友達になった。
そこから不登校学生の俺と引きこもりプログラマーの西川さんとこの掲示板のアプリを作成した。
いつも優しく俺の相談に乗ってくれていた西川さん。
同じ男のオメガの先輩として、発情期もフェロモンも何もかもが初めてで取り乱す俺に辛抱強く、オメガとしての生き方を教えてくれた。
そして、プログラマーとして働く大人で年上なのに俺の意見を立ててくれて、アプリを作ってくれた。
ぴこん。
スマホのSNSの通知音がなる。
俺はアプリの友達欄、『西川さん』との会話を開く。
チャット形式で流れているメッセージ画面が表示される。
「大丈夫だよ、僕は何とか生きてる」
「気絶したふりして、犯人の様子をうかがってる」
「僕は大丈夫だから、君にしてほしいことがある」
「掲示板アプリの参加者全員を強制退会させて、アプリを消去してほしい」
「バックアップはこっちで一応とってるから大丈夫」
「お願い。こっちのことは心配しないで」
西川さんからのメッセージがぴこん、ぴこんと表示される。
俺は口を押えて、ぐっとこみあげてくるものを飲みこもうとした。
しかし、嗚咽がこぼれて、一気に決壊する。
目頭がかぁっと熱くなって、涙がボロボロと流れていく。
「…うっ、ぐすっ、にしかわさん、…うぅ」
メッセージが流れていく。
「君を巻き込んでしまってすまない」
「また戻ったら二人で何か作ろう」
ぴこん。
「自分のせいだなんて思うなよ」
そこまで流れるとメッセージが止まり、
静かになった。
俺は西川さんにメッセージを送るべきか悩んだ。
もし西川さんのスマホで通知設定がオンになっていたら犯人たちに通知音が聞こえてしまうかもしれない。
どうしようかと悩み、西川さんとのメッセージを上の方にスクロールしていく。
それは19時くらいに西川さんに呼び出されたときにメッセージだった。
西川さん「ごめん、今日の夜空いてる?アプリのことで直接会って話したいんだけど」
俺「はい、昼は嫌ですけど夜なら大丈夫です」
西川さん「ありがとう。じゃあいつものファミレスでどうかな」
俺「わかりました。ピザとオムライスおごってください」
西川さん「遠慮しなさい。月末だ」
俺「経費です」
西川さん「ご飯は経費にならないです」
俺「飲み物です」
西川さん「ぎりカレーだけです」
俺「じゃあ、それで」
そこからだらだらとファミレスで話して時間を潰し、二人で調べ物をした後、公園に行った。
時刻は23:30を過ぎていた。
「…はぁ~」
大して手掛かりにならずに俺はメッセージを閉じた。
これからやることは決まっている。
まずは早く家に帰ろう。
西川さんから言われた通り、アプリ参加者全員分の強制退会処理とアプリの消去をしなければいけない。
そして。
俺はぎりっと手の中のスマホを握りしめた。
そしてその前に警察に通報しなければ。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる