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発情期とその反応-これからの方針について
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西川さんはプログラマーとして在宅で働く男性だ。
仕事をしている社会人だが引きこもりがちで、一か月に一度家から出たらいい方らしい。
そんな西川さんと俺が出会ったのは、まさに奇跡としか言いようがないことだった。
※※※
高校一年の時、俺は初めて発情期を経験した。
それも学校から帰宅途中、人通りのある公道で突然発情期に襲われた。
体中の血液が沸騰するように熱くなって、息が上がり、全力疾走をした後のように心臓がどくどくと激しく脈打ち、苦しくてその場にしゃがみこんだ。
俺を見て通行人たちが足を止めた。
「…助けて」
手を伸ばそうとした。
助けてくれると思った。
しかし、ふらふらとこちらに近寄ってきた人は俺の腕を掴むと、無理やり立たせて近くの公園のトイレに連れ込もうとした。
下を見ると、その人の股間はズボンを押し上げて、パンパンに膨れ上がっているのがわかった。
その人だけじゃない。
今まで普通に道を歩いていた人たちの目の色が変わり、操られているようにふらふらとこちらに近づいて、
トイレに連れ込もうとする人に手を貸している。
ぼんやりとした意識の中、やばいと思うのに、体がうまく動かない。
体中を複数の人の手によって撫でまわされる恐怖を感じながら、逃げることも抵抗することもできない。
ぶしゅーっ!
突然スプレーの音とともに、拘束が解かれ、俺は地面に投げ出された。
「早く!走って!」
優しそうな男性の声がして、腕を掴まれて走った。
「もう、大丈夫だろう」
発情期でただでさえ息が上がっているのに、結構走ったため俺は汗だくで、息も絶え絶えだった。
そんな男性はベンチに座らせると、ボロボロの小物入れを取り出す。
「ほら、これを飲みなさい」
男性はボロボロの小物入れから薬を取り出すと、ぐっと俺の口を掴みそのまま突っ込んだ。
「ちょっと水買ってくるけど、何かあったらすぐ大声出して」
そして近くの自動販売機で水を買ってきてくれて、俺に手渡した。
走らされて、苦い薬を水なしで口に突っ込まれて、その人に対する印象はあまりよくなかった。
俺は水を受け取ると、ぐっと半分くらいまで飲み干した。
「しばらくすると落ち着いてくると思うけど、それまで待っていようか」
男性は俺の隣に座ると何か話すでもなく、ぼーっとしていた。
そう、その男性が西川さんだった。
※※※
西川さんはその時たまたま一か月に一度くらいの外出で歩いていたところを
たまたま発情期になって襲われそうになっていた俺に出くわし助けてくれた。
そのまま、オメガ同士ということで他ではできない話で盛り上がり、友達になった。
そこから不登校学生の俺と引きこもりプログラマーの西川さんとこの掲示板のアプリを作成した。
いつも優しく俺の相談に乗ってくれていた西川さん。
同じ男のオメガの先輩として、発情期もフェロモンも何もかもが初めてで
取り乱す俺に辛抱強く、オメガとしての生き方を教えてくれた。
そして、プログラマーとして働く大人で年上なのに俺の意見を立ててくれて、アプリを作ってくれた。
ぴこん。
スマホのSNSの通知音がなる。
俺はアプリの友達欄、『西川さん』との会話を開く。
チャット形式で流れているメッセージ画面が表示される。
「大丈夫だよ、僕は何とか生きてる」
「気絶したふりして、犯人の様子をうかがってる」
「僕は大丈夫だから、君にしてほしいことがある」
「掲示板アプリの参加者全員を強制退会させて、アプリを消去してほしい」
「バックアップはこっちで一応とってるから大丈夫」
「お願い。こっちのことは心配しないで」
西川さんからのメッセージがぴこん、ぴこんと表示される。
俺は口を押えて、ぐっとこみあげてくるものを飲みこもうとした。
しかし、嗚咽がこぼれて、一気に決壊する。
目頭がかぁっと熱くなって、涙がボロボロと流れていく。
「…うっ、ぐすっ、にしかわさん、…うぅ」
メッセージが流れていく。
「君を巻き込んでしまってすまない」
「また戻ったら二人で何か作ろう」
ぴこん。
「自分のせいだなんて思うなよ」
そこまで流れるとメッセージが止まり、
静かになった。
俺は西川さんにメッセージを送るべきか悩んだ。
もし西川さんのスマホで通知設定がオンになっていたら
犯人たちに通知音が聞こえてしまうかもしれない。
どうしようかと悩み、西川さんとのメッセージを上の方に
スクロールしていく。
それは19時くらいに西川さんに呼び出されたときにメッセージだった。
西川さん「ごめん、今日の夜空いてる?アプリのことで直接会って話したいんだけど」
俺「はい、昼は嫌ですけど夜なら大丈夫です」
西川さん「ありがとう。じゃあいつものファミレスでどうかな」
俺「わかりました。ピザとオムライスおごってください」
西川さん「遠慮しなさい。月末だ」
俺「経費です」
西川さん「ご飯は経費にならないです」
俺「飲み物です」
西川さん「ぎりカレーだけです」
俺「じゃあ、それで」
そこからだらだらとファミレスで話して時間を潰し、
二人で調べ物をした後、公園に行った。
時刻は23:30を過ぎていた。
「…はぁ~」
大して手掛かりにならずに俺はメッセージを閉じた。
これからやることは決まっている。
まずは早く家に帰ろう。
西川さんから言われた通り、アプリ参加者全員分の強制退会処理と
アプリの消去をしなければいけない。
そして。
俺はぎりっと手の中のスマホを握りしめた。
そしてその前に警察に通報しなければ。
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