3 / 5
西川さんが消えた公園で-オメガバース独自設定について
しおりを挟む※※※
「お前、オメガなんだって?」
ほぼ徹夜で眠い目をこすりながら、久々に学校に行くと、
前の席の同級生がこちらを振り向いた。
そして、開口一番そう話しかけてきた。
俺はその言葉を理解するまで時間がかかり、ポカンと
口を開けて、そいつを見た。
※※※
公園で西川さんが消えて、俺はどうすればいいのかわからなかった。
交番での出来事のせいで警察が怖かった。でも自分で西川さんを探そうとしても手がかりがない。
俺は途方に暮れて公園のベンチに座り、そしてスマホを開く。
そこには俺と西川さんが作ったオメガ専用の掲示板アプリがあった。
そこに今起こった出来事を書き込もうとして、そしてやめた。
俺はわかっていた。全部、全部これのせいだ。
西川さんが連れ去られたのも、最近起きている失踪事件も。
警察は詳しく報道しなかったが、俺は失踪事件の被害者に見覚えがあった。
全員、オメガ専用の掲示板に参加している人たちだ。
被害者の性別は全員オメガで、さらに共通点として、俺たちが作った
オメガ専用掲示板アプリに登録している人たちだ。
つまり、俺たちの掲示板に参加している人たちの個人情報が流出して
それを頼りに犯人たちは組織的にオメガ狩りをしているのだ。
それが意味するところは、俺がこんなアプリを作ってしまったせいで
何も罪もないオメガたちが狙われて、連れ去られているという事実。
それだけでない。
報道では連れ去られた被害者の家族にも被害が及んでいるとあった。
詳しくは、家族が集団の男たちに暴行を加えられたり、
中には殺害されるという事態にまで発展している。
どうしてオメガを連れ去るだけでなく、組織はそんな非道なことまで
行うのか。
それを解明するにはオメガの性質を理解しなくてはいけない。
オメガはある特定のアルファと番うと、それまで出していたフェロモンを
番のアルファにだけ向けるようになる。
つまり、番以外のアルファはそのオメガのフェロモンを感じ取ることが
できなくなってしまう。
さらに精神的にも肉体的にも番は互いに依存しあい、深い絆で結ばれる。
番になったオメガはフェロモンも出さなくなり(番に対してだけは放出するが)
発情期も軽くなるので、一見してオメガとわからなくなる。
フェロモンや3か月に一度の発情期に人生の大半を悩まされ続け、学校や職場で
通常に生活することが難しいオメガは、常に精神的に不安定であることが多い。
しかし、番を得たオメガは精神が安定し、その後定職についたり、幸福な人生を歩むことが示されている。
さらにアルファにとっても番を得ることはメリットがある。
番とのセックスは通常のセックスよりも脳内麻薬の分泌量が多く、
人間が感じることができる快感の最上位と呼べるほどの快感を得ることができる。
また、番がいるアルファはそうでないアルファよりもより高いキャリア、
給料、さらには多くの富を得ることが、統計の結果示されている。
つまりアルファ、オメガ双方にとって「番う」という行為は人生において幸福をもたらすことが
研究の結果、示されているのだ。
しかし、その番ったオメガを番う前の状態に戻す方法がある。
つまりは、発情期度にフェロモンをまき散らし、雄を誘惑するオメガに戻すということだ。
その方法はアルファ側に番の契約を解除させることだ。
オメガから番を解除することはできないため、アルファ側が行う必要がある。
それか、番ったアルファが亡くなれば、オメガは番を求めて再びフェロモンを
放出するようになる。
つまりは、連れ去ったオメガの番の契約を無理やり解除させるために
その組織は番となったアルファを狙って、暴行を加え、脅して契約を解除させたり、
拒んだ場合はアルファを殺害することで、強制的に番の契約を解除させているのだ。
まさにオメガの人格を無視するような残酷な仕打ちが、それも組織的に行われている。
信じられないことに、この日本で。
そこまで考えて、俺は西川さんの最後の顔を思い出した。
西川さんは俺を庇って、オメガ狩りの男たちに連れ去られた。
あいつらは西川さんをどうするつもりだろうか。
いや、それだけでない。
今まで連れ去られたオメガたちはどうなってしまうのだろうか。
スマホに通知があり、また俺は目線を下に下ろした。
見るとSNSで通知があった。
差出人は、「西川さん」だった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載



久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる