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第八話 喪失の哀しみに
第八話 五
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あかりはさっと相手に傷がないこと、呼吸をしていることを確認すると昴たちのもとに舞い戻った。
昴は和也と戦い続けていた。黒い光がぶつかりあっては明滅する。それでも昴が押しているのは明らかだった。彼は親指の腹を食い破って流した血で他の指も濡らすと、素早く九字を切り、禹歩を踏んだ。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女」
黒にきらめく光が和也を包むと、和也はそのまま動きを止めた。
「あかりちゃん、今だよ! どうか、彼の邪気を払ってあげて……!」
昴の切実な声にあかりはしっかりと頷き返した。
霊剣を和也の正面に構える。震えそうになる声を押し込んで、あかりは凛と前を見据えた。
「業邪焼払、急々如律令」
霊剣のまとう狐火が真っ赤な軌跡を描き、あたりの雪をも溶かす。救いの炎はあたたかく和也を包み込んだ。
崩れ落ちた和也の顔に苦痛の色はなく、ただ穏やかに眠っているだけのように見えた。
「和也……」
ふらついた足取りで時人が和也に歩み寄る。時人は頽れ、和也の身に顔を伏せると肩を震わせた。
あかりと昴は顔を見合わせると、今だけはと彼らを二人きりにさせることにした。その間に昏倒させた式神使いを回収する。昴は小さな結界に彼らを閉じ込めると、ふっと結界を消した。
そして静かに時人の背後に立った。
「時人くん、帰ろう」
「……」
「帰って、和也くんを弔ってあげよう」
時人は真っ赤になった目で昴を見上げると、無言で頷いた。彼は昴に許可を得ると、大事そうに小さな結界に和也を入れた。
離の結界を修復し、玄舞の屋敷に帰りつくまで、三人は一言も会話を交わさなかった。
昴は和也と戦い続けていた。黒い光がぶつかりあっては明滅する。それでも昴が押しているのは明らかだった。彼は親指の腹を食い破って流した血で他の指も濡らすと、素早く九字を切り、禹歩を踏んだ。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女」
黒にきらめく光が和也を包むと、和也はそのまま動きを止めた。
「あかりちゃん、今だよ! どうか、彼の邪気を払ってあげて……!」
昴の切実な声にあかりはしっかりと頷き返した。
霊剣を和也の正面に構える。震えそうになる声を押し込んで、あかりは凛と前を見据えた。
「業邪焼払、急々如律令」
霊剣のまとう狐火が真っ赤な軌跡を描き、あたりの雪をも溶かす。救いの炎はあたたかく和也を包み込んだ。
崩れ落ちた和也の顔に苦痛の色はなく、ただ穏やかに眠っているだけのように見えた。
「和也……」
ふらついた足取りで時人が和也に歩み寄る。時人は頽れ、和也の身に顔を伏せると肩を震わせた。
あかりと昴は顔を見合わせると、今だけはと彼らを二人きりにさせることにした。その間に昏倒させた式神使いを回収する。昴は小さな結界に彼らを閉じ込めると、ふっと結界を消した。
そして静かに時人の背後に立った。
「時人くん、帰ろう」
「……」
「帰って、和也くんを弔ってあげよう」
時人は真っ赤になった目で昴を見上げると、無言で頷いた。彼は昴に許可を得ると、大事そうに小さな結界に和也を入れた。
離の結界を修復し、玄舞の屋敷に帰りつくまで、三人は一言も会話を交わさなかった。
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