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第八話 喪失の哀しみに
第八話 四
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黒の上衣と袴は紛れもなく陰の国のものだった。相手はあかりの攻撃に怯んだようで、隙を見せた。あかりがその喉元に霊剣を突きつける。
「答えて。和也くんを、どうしたの」
「……」
「答えなさい!」
式神使いはあかりの怒気に気圧されて、ぼそりと答えた。
「……殺した」
「⁉」
動揺するあかりをあざ笑うように、背後からも声がした。
「死人は妖と同じで、我々の道具だ」
「だから式神にして使ってやったんだ……!」
気づけばあかりたちは三人の式神使いに囲まれていた。しかし、そんなことは些末事だ。今は和也のことで頭がいっぱいだった。
他家のあかりにもよく懐いていた和也の笑顔が思い出される。今朝だって笑って任務へ向かっていった。危険なのは承知の上で、それでも当然帰ってくるものだと信じて疑わなかった。こんなに呆気なく別れることになるなんて思いもしなかったのだ。
目の奥が熱い。喉の奥が苦しい。
しかしここで泣き崩れるわけにはいかないのだ。
あかりは歯を食いしばると、目を閉じてひとつだけ深呼吸をした。
(今の私にできることは、和也くんを苦しみから解放すること。ためらっては駄目。ちゃんと邪気を払わなくちゃ)
「あかりちゃん!」
昴の声にぱっと目を開く。
前方の和也が結界を張るのと同時に鳥の式神が飛来した。あかりは斬り上げざま回転して、背後に迫っていた蛇に剣を振り下ろした。和也の結界は昴が相殺していた。
積雪をものともせず勢いそのままに、あかりは一人目の式神使いの懐に入ると剣を一閃させた。式神使いは気を失って後ろに倒れた。
背後を軽く振り返ると、昴が時人を守りながら、和也と正面からやりあっていた。昴が将来を期待していただけあって、その攻防は激しいものだったが、昴の方が何枚も上手だった。あかりは安心して昴に背後を任せると、次の式神使いに向かって走り出した。
彼はどうやら鳥の式神使いのようで、何体もの式神を顕現させていた。あかりは向かい来る鳥たちを的確に斬り伏せながら、その式神使いをも倒した。
残るは和也を操っている式神使い一人となった。さきほどは怯んだ様子を見せた彼も、今度は強気で歪んだ笑みを見せた。その表情にあかりの神経が逆なでされる。言い尽くせない怒りと憤りに我を忘れそうになるのを必死にこらえた。
(早く和也くんを助けなきゃ! 感情に流されてる場合じゃない!)
あかりは霊剣を脇に下げると走り出した。そのまま斬り上げようとすると、高い金属音が響いた。
「式神使いが使えるのが式神だけだと思うなよ!」
相手は懐から取り出した短剣であかりの攻撃を弾き返した。
あかりは跳び退って相手から距離をとった。
(落ち着いて。短剣での戦いだって秋とよく稽古してるんだから、大丈夫)
あかりは大きく息を吸い込むと、再び相手に向かっていった。
霊剣を振り下ろすと防がれて、力で押し返される。その隙に相手が懐に飛び込んでくるが、あかりは半身だけずらしてその攻撃を危なげなくかわした。そして霊剣で斬り上げた。相手はかわしきれず、あかりの攻撃をもろに受けるとその場に倒れた。
「答えて。和也くんを、どうしたの」
「……」
「答えなさい!」
式神使いはあかりの怒気に気圧されて、ぼそりと答えた。
「……殺した」
「⁉」
動揺するあかりをあざ笑うように、背後からも声がした。
「死人は妖と同じで、我々の道具だ」
「だから式神にして使ってやったんだ……!」
気づけばあかりたちは三人の式神使いに囲まれていた。しかし、そんなことは些末事だ。今は和也のことで頭がいっぱいだった。
他家のあかりにもよく懐いていた和也の笑顔が思い出される。今朝だって笑って任務へ向かっていった。危険なのは承知の上で、それでも当然帰ってくるものだと信じて疑わなかった。こんなに呆気なく別れることになるなんて思いもしなかったのだ。
目の奥が熱い。喉の奥が苦しい。
しかしここで泣き崩れるわけにはいかないのだ。
あかりは歯を食いしばると、目を閉じてひとつだけ深呼吸をした。
(今の私にできることは、和也くんを苦しみから解放すること。ためらっては駄目。ちゃんと邪気を払わなくちゃ)
「あかりちゃん!」
昴の声にぱっと目を開く。
前方の和也が結界を張るのと同時に鳥の式神が飛来した。あかりは斬り上げざま回転して、背後に迫っていた蛇に剣を振り下ろした。和也の結界は昴が相殺していた。
積雪をものともせず勢いそのままに、あかりは一人目の式神使いの懐に入ると剣を一閃させた。式神使いは気を失って後ろに倒れた。
背後を軽く振り返ると、昴が時人を守りながら、和也と正面からやりあっていた。昴が将来を期待していただけあって、その攻防は激しいものだったが、昴の方が何枚も上手だった。あかりは安心して昴に背後を任せると、次の式神使いに向かって走り出した。
彼はどうやら鳥の式神使いのようで、何体もの式神を顕現させていた。あかりは向かい来る鳥たちを的確に斬り伏せながら、その式神使いをも倒した。
残るは和也を操っている式神使い一人となった。さきほどは怯んだ様子を見せた彼も、今度は強気で歪んだ笑みを見せた。その表情にあかりの神経が逆なでされる。言い尽くせない怒りと憤りに我を忘れそうになるのを必死にこらえた。
(早く和也くんを助けなきゃ! 感情に流されてる場合じゃない!)
あかりは霊剣を脇に下げると走り出した。そのまま斬り上げようとすると、高い金属音が響いた。
「式神使いが使えるのが式神だけだと思うなよ!」
相手は懐から取り出した短剣であかりの攻撃を弾き返した。
あかりは跳び退って相手から距離をとった。
(落ち着いて。短剣での戦いだって秋とよく稽古してるんだから、大丈夫)
あかりは大きく息を吸い込むと、再び相手に向かっていった。
霊剣を振り下ろすと防がれて、力で押し返される。その隙に相手が懐に飛び込んでくるが、あかりは半身だけずらしてその攻撃を危なげなくかわした。そして霊剣で斬り上げた。相手はかわしきれず、あかりの攻撃をもろに受けるとその場に倒れた。
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