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最終魔戦
魔族の正体
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頭の中に声が響き終わると同時に、俺は触覚を逆立てた。この器官で、音波、電磁波、放射線、熱、分子流などを総合的に検知・分析することで、周囲を捉えることができる。
その生体機能を利用して辺りを探ってみたが、俺達以外の存在は確認できなかった。
さきほどの声は俺だけでなく、足下にいる二人も感じたらしい。
「女王様! 下がってくれ!」
「今のはなんだ? 声? いや、直接頭に語りかけてきたようだ」
隊長の言葉に従いメリル様は、その筋肉の要塞の背後に身を隠した。
(心配するな、おれは敵じゃない。これは、直接お前らの脳に言葉を送ってるだけだと思ってくれていい。大事な話があるのでな)
また頭の中に声が飛び込んできた。まるでテレパシーのようだ。
これも魔術の類いなのか?
「あんたは、いったい誰だ? どこにいる、これは魔術のなせる力なのか?」
(いや、おれは魔力を持っていない。お前達が知らない物理法則を利用しているだけだ)
俺の問いに返答が帰ってきた。
つまり俺達が知らない自然科学を利用して、テレパシーのような力を使っていると言うことなのか。
「どこの誰だか知らねえが、言いてえことがあるんなら顔を見せたらどうだ」
オボロ隊長が周囲を見渡しながら言い放つ。
(すまないが、おれはそこにはいない。脳間での情報交換で、はるか遠くからお前達の脳に語りかけてるだけだ。本当なら、直接出向いたほうが信用は得られるんだろうが、多忙でな)
「……お前は、いったい何者なんだ? 人なのか? 魔力を持たねぇとか言っときながら、魔術じみた力を使って」
(おれは人だ。もう一度言うが、この声に頼らない会話も科学的なものだ。科学技術も極度に発達すると、神秘や奇跡と同類になってくる)
「おいおい、そんな難しい話はやめてくれ。オレはその手の話にはついていけないんだ」
「そのとおりだ、私達はニオンとは違い、その科学と言うものはよく分からん」
難しい話をされて、隊長は頭を抱えて困った表情をする。
それに賛同するかのように、メリル様は隊長の背後から顔をひょっこりと覗かせて頭をブンブンと縦に振った。
俺だって、科学技術の分野はあまり得意な方ではない。
(ニオン……懐かしい名だな。あいつは元気にしているんだろ?)
思いもよらない言葉が返ってきた。こいつ、副長のことを知っているのか?
俺は問いかけた。
「なぜ副長のことを知っているんだ? 副長とどう言う関係があるんだ?」
(あいつには剣術と知識を与えたからな。……もう、おれの剣の腕では、あいつには太刀打ちできんだろうな)
「……まさか、お前があの男の師なのか!」
メリル様が驚愕の声を響かせる。
彼女だけでなく、隊長も俺も驚きを隠せない。あの最強の剣士を鍛え上げた存在だと言うのだから、驚愕するのも当然だ。
(ああ、そうだ。そんなわけで、おれの話を信用してはくれないか? おれは断じて敵じゃない、むしろいずれお前達と一緒に戦うことになるだろう)
一緒に戦うだと? いったいなにと戦うというのか?
俺は足下の隊長に視線を送る。すると、隊長は少し考え込むと口を開いた。
「分かった、話を聞こう」
(信用を得られたかは分からんが、聞いてくれるだけで十分だ。さて魔族についてだが、もう奴らが出現することはない)
「なぜ、そんなことが断言できる。何か確証はあるのか?」
隊長が怪訝な表情で語る。
たしかに確実な証拠があるわけでもないし、言葉だけでは納得できるものではない。
(笑うなよ、直接神に接触して確認したんだ。もう魔族の存在理由がなくなったんだよ)
笑いはしないが、冗談を言っているのか?
神が存在することは信じよう。しかし、神と接触するなど、そんなこと可能なのか?
「おいおい、何を言っている?」
俺と同じく隊長も不審に思っているようだ。
そんな中メリル様は何かを思い出したかのように、パッと顔をあげた。
「ニオンが言っていた、『発達した科学は神との対話を実現させる』そして『師は、もう一人の神との接触に成功した』と。ならば、お前は……本当に神と対話したのか?」
……ニオン副長が、そんなことを。副長が言ったことなら無下にはできない。
とは言え、本当にこいつが副長の師なのか確証はないが。
(高度な数学によって通常の感覚では実感できない超常や高次領域を割り出す研究もしたものだ)
一先ず、そんな理解不能な事を語る男の話を聞くことにした。
(魔族の正体は転生者だ。つまり別の世界で死んだ奴らが魔族として、この世界で甦ったものだ。これも神の力がなせることだ)
「ちょっとまて、別の世界とはどう言うことだ? 世界が他にもあるってぇのか?」
別の世界と聞いて、隊長は目を丸くした。
逆に俺は驚きはしない。と言うよりも俺自身が別の世界から来たわけだし。
つまりハルと言う幹部だけでなく、魔王含めた魔族全てが異世界からの転生者と言うことなのか?
(ああ、数えきれない程に宇宙は存在している。それらには、あらゆる体系の魔法、超能力、異能力などがあったりもする。また神のごとき超常の存在が生み出した宇宙もあれば、自然的に発生した宇宙もある。個々に原理も概念も違いすぎるんだ)
もはや言っていることがデカすぎる。とても理解しきれる内容ではない。
「すまんが、話を戻してもらうぜ。つまり魔族は、もともとこの世の連中ではないってことか?」
会話があらぬ方向に行きそうだったためか、隊長は魔族について問いかけた。
(連中の精神は別の世界のものであり、魔族の肉体はこの世界で生み出されたものだ。その魔族の体に異世界からやって来た精神を結合させることで魔族達は出現していたんだ。死んだ人間が甦り、別の世を徘徊する、まるで諦めが悪い哀れな亡霊だな)
「……とても信じられない」
(だが、それが本当だぜ。お嬢さん)
メリル様の小さな呟きも、しっかりと認識できていたのか返答があった。
「一番気になることなんだが、なぜ魔族はこの世にやって来たんだ? いや、なんで神は魔族を転生させたんだ?」
(しっかりとした理由がある。間違っても暇をもて余した神の遊戯じゃない)
俺の質問に迷わず答えが返ってくる。
はっきり言って一番重要な部分のはずだ。
なぜ魔族を出現させるのか。
(ある種の実験だ。この世の人類と魔族を戦わせるために、魔族を定期的に転生させていた。言うなれば、このメルガロスは神にとっての実験場だったんだよ)
「なぜ、そのようなことをするんだ? そんな争い事をさせて何をしようとしたんだ?」
(目的は人類の進歩だ。強力な力を持った魔族と競わせることで、この惑星の者達は進歩するのではないかと予測してたんだろう)
「進歩だと?」
(そうだ、だが今回の戦いでこの実験は失敗だという判断をくだした。しかし別のプランが上手くいき、魔族はもう必要ない段階にまでに到達したそうだ。ゆえに、もう魔族は不要らしい)
そこへ、メリル様が口を震わせながら言った。
「……この国が実験場だと、しかも失敗。……ならば私達の存在は……いったい」
ショックを受けたのか、メリル様は力なくその場に座り込んだ。
(話はそれだけだ、だからこそ心配せず魔族を皆殺しにするんだ。奴等はどの道、この世界では生きていけない。また機会があれば重要なことを教えてやる。いいかよく覚えておけ、魔王もこの恒星系に存在する星外魔獣も前座ですらない。戦いが激しくなるのは、もっと先だと言うことだ)
最後にそう言い残し、声は響かなくなった。
その生体機能を利用して辺りを探ってみたが、俺達以外の存在は確認できなかった。
さきほどの声は俺だけでなく、足下にいる二人も感じたらしい。
「女王様! 下がってくれ!」
「今のはなんだ? 声? いや、直接頭に語りかけてきたようだ」
隊長の言葉に従いメリル様は、その筋肉の要塞の背後に身を隠した。
(心配するな、おれは敵じゃない。これは、直接お前らの脳に言葉を送ってるだけだと思ってくれていい。大事な話があるのでな)
また頭の中に声が飛び込んできた。まるでテレパシーのようだ。
これも魔術の類いなのか?
「あんたは、いったい誰だ? どこにいる、これは魔術のなせる力なのか?」
(いや、おれは魔力を持っていない。お前達が知らない物理法則を利用しているだけだ)
俺の問いに返答が帰ってきた。
つまり俺達が知らない自然科学を利用して、テレパシーのような力を使っていると言うことなのか。
「どこの誰だか知らねえが、言いてえことがあるんなら顔を見せたらどうだ」
オボロ隊長が周囲を見渡しながら言い放つ。
(すまないが、おれはそこにはいない。脳間での情報交換で、はるか遠くからお前達の脳に語りかけてるだけだ。本当なら、直接出向いたほうが信用は得られるんだろうが、多忙でな)
「……お前は、いったい何者なんだ? 人なのか? 魔力を持たねぇとか言っときながら、魔術じみた力を使って」
(おれは人だ。もう一度言うが、この声に頼らない会話も科学的なものだ。科学技術も極度に発達すると、神秘や奇跡と同類になってくる)
「おいおい、そんな難しい話はやめてくれ。オレはその手の話にはついていけないんだ」
「そのとおりだ、私達はニオンとは違い、その科学と言うものはよく分からん」
難しい話をされて、隊長は頭を抱えて困った表情をする。
それに賛同するかのように、メリル様は隊長の背後から顔をひょっこりと覗かせて頭をブンブンと縦に振った。
俺だって、科学技術の分野はあまり得意な方ではない。
(ニオン……懐かしい名だな。あいつは元気にしているんだろ?)
思いもよらない言葉が返ってきた。こいつ、副長のことを知っているのか?
俺は問いかけた。
「なぜ副長のことを知っているんだ? 副長とどう言う関係があるんだ?」
(あいつには剣術と知識を与えたからな。……もう、おれの剣の腕では、あいつには太刀打ちできんだろうな)
「……まさか、お前があの男の師なのか!」
メリル様が驚愕の声を響かせる。
彼女だけでなく、隊長も俺も驚きを隠せない。あの最強の剣士を鍛え上げた存在だと言うのだから、驚愕するのも当然だ。
(ああ、そうだ。そんなわけで、おれの話を信用してはくれないか? おれは断じて敵じゃない、むしろいずれお前達と一緒に戦うことになるだろう)
一緒に戦うだと? いったいなにと戦うというのか?
俺は足下の隊長に視線を送る。すると、隊長は少し考え込むと口を開いた。
「分かった、話を聞こう」
(信用を得られたかは分からんが、聞いてくれるだけで十分だ。さて魔族についてだが、もう奴らが出現することはない)
「なぜ、そんなことが断言できる。何か確証はあるのか?」
隊長が怪訝な表情で語る。
たしかに確実な証拠があるわけでもないし、言葉だけでは納得できるものではない。
(笑うなよ、直接神に接触して確認したんだ。もう魔族の存在理由がなくなったんだよ)
笑いはしないが、冗談を言っているのか?
神が存在することは信じよう。しかし、神と接触するなど、そんなこと可能なのか?
「おいおい、何を言っている?」
俺と同じく隊長も不審に思っているようだ。
そんな中メリル様は何かを思い出したかのように、パッと顔をあげた。
「ニオンが言っていた、『発達した科学は神との対話を実現させる』そして『師は、もう一人の神との接触に成功した』と。ならば、お前は……本当に神と対話したのか?」
……ニオン副長が、そんなことを。副長が言ったことなら無下にはできない。
とは言え、本当にこいつが副長の師なのか確証はないが。
(高度な数学によって通常の感覚では実感できない超常や高次領域を割り出す研究もしたものだ)
一先ず、そんな理解不能な事を語る男の話を聞くことにした。
(魔族の正体は転生者だ。つまり別の世界で死んだ奴らが魔族として、この世界で甦ったものだ。これも神の力がなせることだ)
「ちょっとまて、別の世界とはどう言うことだ? 世界が他にもあるってぇのか?」
別の世界と聞いて、隊長は目を丸くした。
逆に俺は驚きはしない。と言うよりも俺自身が別の世界から来たわけだし。
つまりハルと言う幹部だけでなく、魔王含めた魔族全てが異世界からの転生者と言うことなのか?
(ああ、数えきれない程に宇宙は存在している。それらには、あらゆる体系の魔法、超能力、異能力などがあったりもする。また神のごとき超常の存在が生み出した宇宙もあれば、自然的に発生した宇宙もある。個々に原理も概念も違いすぎるんだ)
もはや言っていることがデカすぎる。とても理解しきれる内容ではない。
「すまんが、話を戻してもらうぜ。つまり魔族は、もともとこの世の連中ではないってことか?」
会話があらぬ方向に行きそうだったためか、隊長は魔族について問いかけた。
(連中の精神は別の世界のものであり、魔族の肉体はこの世界で生み出されたものだ。その魔族の体に異世界からやって来た精神を結合させることで魔族達は出現していたんだ。死んだ人間が甦り、別の世を徘徊する、まるで諦めが悪い哀れな亡霊だな)
「……とても信じられない」
(だが、それが本当だぜ。お嬢さん)
メリル様の小さな呟きも、しっかりと認識できていたのか返答があった。
「一番気になることなんだが、なぜ魔族はこの世にやって来たんだ? いや、なんで神は魔族を転生させたんだ?」
(しっかりとした理由がある。間違っても暇をもて余した神の遊戯じゃない)
俺の質問に迷わず答えが返ってくる。
はっきり言って一番重要な部分のはずだ。
なぜ魔族を出現させるのか。
(ある種の実験だ。この世の人類と魔族を戦わせるために、魔族を定期的に転生させていた。言うなれば、このメルガロスは神にとっての実験場だったんだよ)
「なぜ、そのようなことをするんだ? そんな争い事をさせて何をしようとしたんだ?」
(目的は人類の進歩だ。強力な力を持った魔族と競わせることで、この惑星の者達は進歩するのではないかと予測してたんだろう)
「進歩だと?」
(そうだ、だが今回の戦いでこの実験は失敗だという判断をくだした。しかし別のプランが上手くいき、魔族はもう必要ない段階にまでに到達したそうだ。ゆえに、もう魔族は不要らしい)
そこへ、メリル様が口を震わせながら言った。
「……この国が実験場だと、しかも失敗。……ならば私達の存在は……いったい」
ショックを受けたのか、メリル様は力なくその場に座り込んだ。
(話はそれだけだ、だからこそ心配せず魔族を皆殺しにするんだ。奴等はどの道、この世界では生きていけない。また機会があれば重要なことを教えてやる。いいかよく覚えておけ、魔王もこの恒星系に存在する星外魔獣も前座ですらない。戦いが激しくなるのは、もっと先だと言うことだ)
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