大怪獣異世界に現わる ~雇われ労働にテンプレはない~

轆轤百足

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最終魔戦

巨大化

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 魔王軍との戦闘も終わり、夜が明けて日がのぼる。
 そして朝早くから俺はドワーフ達の集落から、だいぶ離れた森で木材の調達をしていた。
 戦闘の影響で、やはりいくつかの家屋が倒壊したので、それを立て直すための材料を得るためだ。
 しかし、集めているのは通常の樹木ではない。
 黒っぽい樹木、不動樫ふどうがしと言う木を選んで集めている。
 それは樹木でありながら、強度と密度は並の金属を凌いでいる。こいつを使用した建物は、よほどのことがなければ壊れることはない。
 また建築材としてだけではなく、その密度を生かして鍛練器具として利用できる。実際、隊長や副長はこの樹木を加工した器具を用いて肉体を鍛えているのだ。……俺用のも欲しいなぁ。

「しっかし、副長はすげぇよな。剣術だけでなく、建築にも精通してるんだからよぉ」

 そう呟きながら、また一つ不動樫を根っ子ごとむしりとる。
 家の立て直しは、副長が中心になって行われているらしい。不動樫の使用も副長が提案したものだ。

「ン゛マッ」

 クサマが不動樫を引き抜いて声をあげた。
 資材の調達担当は俺だけではない。ナルミとクサマも一緒に行っている。
 と言うよりも、こんな大質量の塊みてぇな樹木を丸々一本運べるのは、俺かクサマかオボロ隊長ぐらいだけである。

「クサマ! それを引っこ抜いて!」
「ン゛マッ!」

 まあ、ナルミは俺の頭の上でクサマに指示をだしてるだけなんだが。
 そして俺はクサマを見下ろした。俺から見れば、まだまだ小さいが、それでも人間から見ればかなりの巨体を誇る。
 ……この起動超人クサマの設計と開発は、ニオン副長がたった一人でやってのけたものだ。
 ここまで来ると、あの人はもう天才と言う言葉ですら物足りなく感じる。
 そして驚くことに、このクサマには一切の魔術的な技術は用いられてないらしい。
 にも関わらず、とんでもない機能をもっている。
 体高:三十五メートル。重量:約一二〇〇トン。
 浮遊、超音速飛行、自己修復の機能に加え、その巨体から考えられない運動性と機動力誇る。
 あきらかに物理法則を超越したものに見えるが、全て超技術でそう見えているだけなのである。

「……ねぇ、ムラト」

 色々考えていたら、ナルミが問いかけてきた。

「ん? なんだ」
「……気になったんだけど……なんか大きくなったんじゃないの?」
「……お前も気付いたか」

 周囲一帯を溶岩と化す戦略魔術のエネルギー吸収した後、俺は空腹に襲われていた。
 食事メシは全てが片付いてからにしようと思っていたのだが、時間がたつにつれ空腹感がなくなってきたのだ。
 そして気付いた時には九十メートルだった体高が、今や百メートルを越えていたのだ。
 それに合わせて体重も大きく増加していた。大地の振動から考えると、体重は十万トンを軽く越えているはずだ。
 どうやら俺の肉体は成長したらしい。
 ……原因はおそらく、今回の戦闘で大量のエネルギーを利得したためだと思う。
 四億度の熱核攻撃に加え、ドワーフ集落を壊滅させようとした戦略魔術。それらの膨大なエネルギーを、体内に取り込んだのが要因だろう。
 大量のエネルギーを吸収して、その一部が肉体の巨大化に振り分けられたのだろうか?
 空腹を感じていたのも、たぶん肉体を成長させるのに必要な物質を欲していたためだろう。
 ……しかし、俺は何も摂取していないが。
 にも関わらず、空腹がおさまり、巨大化した。
 いくら怪獣とは言え、物理法則を越えるとは思えない。
 何も取り込んでいないのに、質量が増すなどありえるのだろうか?
 いずれにせよ成長するための物質を、何らかの方法で得たとは思うのだが……。
 そして成長してからと言うもの、とある現象が起きている。

(ムラト、もっと大きくなるのかな? もっと成長してほしいなぁ)
(装甲ヲ綺麗ニシタイ。油ヲササナイト)

 ナルミとクサマの思考が俺の頭の中に入り込んできた。
 読心術なのか? あるいは精神感応の一種だろうか?
 おそらく成長と同時に何らかの、新たな能力を得たようだ。


× × ×


 ドワーフの集落ではニオンを筆頭に施工が行われている。
 ニオンの自前の工具は純度の高いマガトクロムで作られているため、頑丈な不動樫を加工することができる。
 デモンストレーションも兼ねて、ニオンは不動樫の加工を開始する。
 また彼の手際もかなりのものであった。

「……どうなってやがるんだ?」
「あんな頑丈な樹木を加工できるものなのか?」
「実にいい腕だな、あの兄さん。使ってる道具も相当なもんだぜ」

 職人気質のドワーフ達でも、その作業光景に舌を巻く。
 今まで加工不可能と言われていた樹木が、まるで普通の木材のごとく切られ、削られている。

「工具は多目に持ってきたので、どうぞご自由に使ってください」

 ニオンがそう告げると、ドワーフ達は並べられた工具箱に無我夢中に飛び付く。

「……なんて道具だ」
「こんな上等なマガトクロムは見たことねぇ!」
「勇者が持ってた剣が、なまくらに見えるぜ」

 各々に上等な鋸や鉋や鑿などを掲げて、味わうように道具の上質さを確かめる。
 それを確認すると、やる気がでてきたのか全員が掛け声をあげた。

「うっしゃあっ! 作業開始だ!」
「これなら前より良い家が作れるぞ!」

 ずんぐりむっくりな彼らは弾むように、材料である不動樫に飛び付いた。
 そんな中、やたら髭の長いドワーフが冷静な面持ちでニオンに問いかける。

「兄さん、聞きてぇことがある。あんたの持ってる道具に使われているマガトクロムについてだが、どうやってこんな純度の高い物を拵えたんだ」

 穏やかに返答するニオン。

「私達の領地では燃石ねんせきと言う燃料が普及しています。その燃料の成分を調整した物質を利用して精錬することで、純度の高い原料が得られのです」
「なるほど、その燃料が鍵か。ワシらの鍛冶や加工技術は遅れているのかのう?」
「いえ、そんなことはありません。私達が他を置いて進歩しすぎただけです。……本来、科学や技術の進歩は入念な準備が必要なはずです。それを怠ったがために、ひどい環境破壊が起きていた時期がありました。正しい発展ができなかった結果です、私達は急ぎすぎたのかもしれません」
「……なんとなく分かるよ。ワシらも無計画な採掘をして、鉱山を崩壊させたことがあるからな」

 ニオンの話を聞いて、ドワーフは納得したように頷いた。 
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