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狂おしい朝2※

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 キスを唇に受けながら、ニーナは熱くて熱くて堪らない。
 汗が毛穴から湧き出してはシュミーズに張り付き、肌に張り付いて、くっきりと乳房や臍の形を浮き上がらせた。
 それはまさに、炎に包まれているような熱さ。


 少女は泣いていた。
 唸る真っ赤な炎。
 鉄粉の混じった火の粉が体めがけて降ってくる。火の粉は硬く、ピリピリと肌に細かい筋をつけた。
 目の前には、黒いフードを口元まで深く被った死神が、ギラギラと鈍く光るナイフの刃先をこちらに向けている。
「悪く思うな。しくじれば、こちらの命が危ういんだ」
 低くくぐもる声は、まるで機械を通したように抑揚がない。
「助けて」
 ニーナは涙で歪む視界の中で揺れ動く黒い塊に求めた。
「助けて」
 再度、口にする。
 死神は戸惑うように踵を引いた。
「お願い」
 孤児院の院長を筆頭に、蜜柑色のニーナの髪が気に食わないと折檻する職員から逃げるため、食材を運ぶ馬車に忍び込んで、やっと閉ざされた頑丈な門の外に出ることが出来たのに。
 食材を運ぶ馬車の御者は、何故か町外れの工場に停止して。
 御者は死神に姿を変えた。
「俺が何者かわかった上で言っているのか? 」
 低い声が上擦る。
「わからないわ」
 ニーナは嗚咽した。
「でも、きっとあなたなら、私を助けてくれるわ」
「根拠は? 」
「勘よ」
 だが、そのときのニーナには確信があった。
 この男は自分を救いに来てくれた王子様なのだと。


 熱くて熱くて、ニーナは夢か現実かわからない狭間にいた。
 二人は向かい合って立ったまま、互いの性器を擦り付ける。ぬるぬると、ニーナの会陰を滑っていくブレインの陰茎は、さらに硬さを増して肌を突かれれば痛いくらいだ。
「何を考えているんだ? 」
 今まさにニーナに侵入する寸前、ブレインは彼方をぼんやり見やるニーナに怪訝に問いかけた。
「昔のこと」
 心ここに在らずで、ニーナは答えた。
 死神は、ブレインの仕事をするときの格好に良く似ていた。
 夢と現実が混じり合う。
 失った記憶はごっそり抜けたまま、偽造された欠片が空白に嵌ろうとしているのだろうか。
「死神のくせに、私を助けてくれたの……ブレインに、よく似てたわ……」
 ニーナはブレインの心臓にピタリと耳をつける。彼は表情一つ動かさないのに、裏腹に拍動はどんどんとうるさく鼓膜を打つ。
「……夢を見ているのか? それとも、何か思い出したのか? 」
 掠れた声が頭上から降りてくる。
「夢……何だか今も夢を見ているみたい……」
 譫言のようにニーナが呟く。
 彼女は十三歳以前の記憶を取り戻したのではなさそうだ。ブレインが与えた冒険譚と、失くした記憶をごちゃ混ぜにしているだけだ。
 そう判断したブレインは彼女の左手の薬指に口づける。互いの体温によって、珊瑚の指輪は火傷するくらいに熱い。
「ニーナ。それなら、ずっと夢を見ていろ……二度と醒めないように」
 ブレインは愛液で塗れたニーナの膣内に亀頭を潜り込ませると、そのまま根元まで一気に埋めた。
「あ、ああ! 」
 何度も彼を受け入れている膣壁は、侵入を果たした肉棒をしっかり覚えていて、膣襞を蠢かせ締め付ける。
 熱く蕩ける媚肉は、彼の動きに合わせて蠕動し、ニーナは腰を揺すってさらに壁に擦らせて刺激させる。
「や、ああ……ん……気持ち良いの……そんなにぐりぐりされたら……」
「ああ……子宮が降りてくるんだろ……ニーナ……もっと俺を求めろ……」
「ああ……ブレイン……」
 ニーナはブレインの首に手を回すとしがみついた。
 ブレインの両手がニーナの膝裏を支えて、片足が床を離れる。もう片側の爪先も離れ、小さな体が宙に浮いた。
 繋がりがより深くなる。
 ニーナの支柱となっているのは、ブレインに貫かれている肉棒だ。
 先端が届いた子宮がずしりと重い。
 曲線を描く尻肉が揺れた。
「いやあああ! ああん! 」
 深く、浅く。ブレインは腰を前後させ、互いの快感を限界点まで持っていく。
「ニーナ。余計なことは考えるな」
「あああ! 」
「お前に過去なんてない。あるのは、俺との現実だ」
「あああ! ブレインのが私にぴったり嵌ってる! ブレインしか嫌なの! 他の人じゃ駄目なの! あああ! 」
 ガンガンと子宮口を打ちつけられて、ニーナはもう夢も現実も手放す。
 もう彼のものしか受け入れられない。
 ニーナの膣内が膨らんで、破裂しそうなくらいに膨らむ。
 彼のものに血流が集まっていく。
 精嚢が重たいくらいにずっしりして、今にも精管へ流れ出そうとしている。
「ブレイン! 赤ちゃんはまだ早いわぁ! 」
 子宮めがけて精液を噴射されたら、確実に受精するのが予測出来た。それくらいに、膣内にいるブレインは濃密だ。
「わかってる! ニーナ! 」
 ニーナの中にぶち撒けたい衝動と闘いながら、ブレインは歯を食い縛って耐えた。
 ブレインは爆発すれすれまでニーナを蹂躙し、限界に達した彼は悔しさを滲ませて勢いよく引き抜くと、ニーナの臍に熱い白濁を迸らせた。

 
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