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再構築される関係3※

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 熱い飛沫を胃に流し込んだ直後、ニーナは上目遣いでブレインを見る。
 とろん、と色香を含んだ眼差し。
「ねえ、ブレイン」
「何だ」
「エレーナさんが言ってたわ。昔、ブレインと一緒に仕事をしていたって」
 ふと、ブレインが黙り込んだ。
「ブレイン? 」
 彼が纏う空気が冷えた。
「……どこまで聞いた? 」
 抑揚なく問いかけるその声は、ゾッとするほど低い。
「どこまで? 」
「……何も聞いていないのか? 」
 ブレインの整った細い眉が上がった。
「一緒に仕事をしていたって、それだけよ? 」
 何やらまずいことを口走ってしまった。
 ニーナは焦ったが、今、引いたら二度とこの話題は出ないと踏んでさらに突き詰める。
 義理の父であり、恋人でもあるブレイン。それなのに、ニーナは彼に関して何も知らない。
「どんな仕事? エレーナさんも宝石細工師だったの? 」
「いや。違う」
「じゃあ、ブレインが髪結師? 」
「違う」
 宝石細工師として王都では名の知れた職人の父だが、それまで以前の話は聞いたことがない。彼の褐色の肌からして異国の血が入っているのは明らかだが、出自も、家族も、宝石細工に携わるまで何をしていたのかも、何もわからない。彼は頑なに口を閉ざすばかりで。
「それより、随分と余裕だな」
 そして今回も、真相は闇へと紛らわせられる。
 ブレインはニタリと口元を吊り上げた。
「あっ! 待って! 」
 ニーナの腕を引いて直立させるなり、勢いつけて反転させたブレインは、せっかく着た木綿ドレスの後ろのボタンを外しにかかった。
 いつもなら、淫猥な舐め合いで仕舞いとなる。
 激しい夜の営みによるニーナの体を気遣って。
 しかし、今朝はさらにその続きが始まろうとしている。
 ニーナが禁句を口にしたことが、彼の中の燻りに火をつけてしまったようだ。
 まるでお仕置きだと言わんばかりに、荒々しくボタンが外されていく。
「だ、駄目! 昨夜、したばかりじゃない」
 ニーナは抵抗を見せるが、まるで手品師にかかってしまったかのように、ボタンの外れたドレスがするりと足元へ滑り落ちた。
 ブレインはニーナの両腕を掴んで、スポンとドレスから身を引き抜く。まるで脱皮するかのごとく、ニーナはシュミーズ一枚に剥かれてしまった。
 貴族の娘のようなコルセットはつけてはいないが、毎日の家事で鍛えられているニーナは、腰が細く尻がぷりっと膨らんで、体型が維持されている。それに加えて、子供から大人へと体つきがしなやかに変化しており。
 すっかり年頃の娘となっているニーナに、ブレインは「雄」の顔つきを露わにした。
 



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