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淫靡に溶ける夢1※
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それを契機にニーナは空想が出来なくなった。
ブレインを空想の中の王子様ではなく、生々しい「大人の男」としか見られなくなってしまったからだ。
それからも不意をついてブレインはキッチンで湯浴みをし、買い物帰りのニーナと出くわすことが度々起こった。
そのたびにニーナは彼を「男」として意識してしまう。
おそらく、その頃からだ。
それを目撃した夜、決まってニーナがいかがわしい夢を見るようになったのは。
「あ……あん……」
唇から零れ落ちたのは、自分でも驚くくらいに甘ったるい声。
また、あの淫夢だ。
ニーナは朦朧としながら、夢が始まっていることに気づいた。
白く柔らかな胸の膨らみを包み込んだ大きな手が、緩慢に円を描く。親指が淡いピンク色の花芯を突いた。
「あっ……や……」
捏ねくり回され硬くなっていく尖りを、口に含まれる。ねっとりとした舌の蠢きに、ニーナの下腹部はじわりと熱くなった。
うっすらと目を開ければ、ニーナの乳房に顔を埋め、べろりと赤い舌を覗かせるブレインが。バチリと目が合った。
濡羽色の瞳は艶々に潤んで、恥じらうニーナをくっきり映し出している。
「父さん……」
掠れた声で呼べば、彼は乳首への吸い付きをやめて、ニヤリと頬を歪める。
「この淫乱が」
皮肉ったような笑い方。
やはり、これは夢の中だ。
ブレインは口角を吊り上げることなんてしない。
だからニーナは、調子に乗った。
手を伸ばして、彼の髪を指に通す。見た目はごわごわして硬そうなのに。触ればサラサラとして艶がある。鼻をくすぐるほのかな石鹸の香り。シャンプーの直後だからだろうか。掬った髪はしっとりと濡れていた。
「キスを……」
「キスがしたいのか? 」
「ええ……」
甘くねだれば、さらにブレインの口端が上がった。
たとえ夢であっても構わない。
今、ブレイン・ロズフェルという男を独占しているのは、このニーナで間違いないのだから。
舌にざらつく感触。互いに尖らせた舌先が絡み合った。それはまさに、今から始まる獣の交尾の前触れだった。
ねっとりとした唾液がぴちゃぴちゃと音を立てて混ざり合い、舌の表面から裏側へ、歯列から粘膜を経て喉奥へ。ブレインの舌はまるで別個体のようにニーナの口内を這いずり回した。
キスなんて誰ともしたことがない。
それなのに、夢の中にいるニーナは、ブレインの動きに合わせて巧みに彼を受け入れている。
脳が痺れるような快感。
ニーナは、何とも例えようのないこの甘い痺れが好きだった。
彼は早く次の段階に行きたそうで、見計らって唇を離すが、ニーナは許さなかった。すぐさま追いついて、彼の唇を塞ぐ。再び淫靡な水音が響く。
キスとは何て気持ちの良いものだろうか。
絵本の中の王子様とお姫様のキスは、可愛らしくチュッとして、くすぐったそうだったのに。
ニーナが知ったキスは、まさしく獣同士の貪り合い。
互いの魂すら吸い上げるような深い繋がり。
もっと、もっと彼が欲しい。
ニーナはブレインの後頭部に手を添えると、さらに深みを増して、その味を堪能した。
ブレインを空想の中の王子様ではなく、生々しい「大人の男」としか見られなくなってしまったからだ。
それからも不意をついてブレインはキッチンで湯浴みをし、買い物帰りのニーナと出くわすことが度々起こった。
そのたびにニーナは彼を「男」として意識してしまう。
おそらく、その頃からだ。
それを目撃した夜、決まってニーナがいかがわしい夢を見るようになったのは。
「あ……あん……」
唇から零れ落ちたのは、自分でも驚くくらいに甘ったるい声。
また、あの淫夢だ。
ニーナは朦朧としながら、夢が始まっていることに気づいた。
白く柔らかな胸の膨らみを包み込んだ大きな手が、緩慢に円を描く。親指が淡いピンク色の花芯を突いた。
「あっ……や……」
捏ねくり回され硬くなっていく尖りを、口に含まれる。ねっとりとした舌の蠢きに、ニーナの下腹部はじわりと熱くなった。
うっすらと目を開ければ、ニーナの乳房に顔を埋め、べろりと赤い舌を覗かせるブレインが。バチリと目が合った。
濡羽色の瞳は艶々に潤んで、恥じらうニーナをくっきり映し出している。
「父さん……」
掠れた声で呼べば、彼は乳首への吸い付きをやめて、ニヤリと頬を歪める。
「この淫乱が」
皮肉ったような笑い方。
やはり、これは夢の中だ。
ブレインは口角を吊り上げることなんてしない。
だからニーナは、調子に乗った。
手を伸ばして、彼の髪を指に通す。見た目はごわごわして硬そうなのに。触ればサラサラとして艶がある。鼻をくすぐるほのかな石鹸の香り。シャンプーの直後だからだろうか。掬った髪はしっとりと濡れていた。
「キスを……」
「キスがしたいのか? 」
「ええ……」
甘くねだれば、さらにブレインの口端が上がった。
たとえ夢であっても構わない。
今、ブレイン・ロズフェルという男を独占しているのは、このニーナで間違いないのだから。
舌にざらつく感触。互いに尖らせた舌先が絡み合った。それはまさに、今から始まる獣の交尾の前触れだった。
ねっとりとした唾液がぴちゃぴちゃと音を立てて混ざり合い、舌の表面から裏側へ、歯列から粘膜を経て喉奥へ。ブレインの舌はまるで別個体のようにニーナの口内を這いずり回した。
キスなんて誰ともしたことがない。
それなのに、夢の中にいるニーナは、ブレインの動きに合わせて巧みに彼を受け入れている。
脳が痺れるような快感。
ニーナは、何とも例えようのないこの甘い痺れが好きだった。
彼は早く次の段階に行きたそうで、見計らって唇を離すが、ニーナは許さなかった。すぐさま追いついて、彼の唇を塞ぐ。再び淫靡な水音が響く。
キスとは何て気持ちの良いものだろうか。
絵本の中の王子様とお姫様のキスは、可愛らしくチュッとして、くすぐったそうだったのに。
ニーナが知ったキスは、まさしく獣同士の貪り合い。
互いの魂すら吸い上げるような深い繋がり。
もっと、もっと彼が欲しい。
ニーナはブレインの後頭部に手を添えると、さらに深みを増して、その味を堪能した。
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