【完結】鳥籠の中で義理の兄は弟から溺愛され、連続殺人から守られる

氷 豹人

文字の大きさ
30 / 48
第五章

蔵の中の情事

しおりを挟む
「はっ……ああん」
 女と大差ない嬌声が室内に響く。いかがわしい喘ぎが己の口から零れたことを、吉森は否定したくて堪らない。
 浅黄の袷をすっかり剥かれ、素っ裸にされた吉森は、冷たい床石に足を投げ出し、いやいやと首を横に振った。吉森の脚の間に身を置いた森雪は、視線の先にある中心を真っ赤な舌を覗かせ舐ってみせた。
 ちらつく唾液に光る舌先が、丁寧に表面を形通りになぞって、思い出したように付け根をきつく吸う。そのたびに吉森は喉奥から声を漏らし、足の指先を反らせ、身を硬くする。
「僕以外の代わりなんていないと、そろそろ効いてきた頃ですかね」
「な、何?」
「近頃、女遊びがすっかりご無沙汰になりましたね。まあ、物騒な事件が続いて、それどころじゃなかったでしょうが」
 言いながら、森雪は懐から竹製の耳かき棒を取り出した。何の変哲もない、床屋によくあるそれだ。物品に問題はないが、出す機会に一言物申したい。何故今なのか。しかも、何で常備しているのか。理解不能。
 しかし、吉森の疑問はすぐさま解決された。
 最も避けたい答えを的確に用意して。
「あっああああああ! 」
 びくんと体が跳ね、吉森は所構わず金切り声を蔵中に響き渡らせた。幾ら塗り壁が頑丈で外に声は漏れ聞こえないかといっても、限度がある。まるで断末魔。森雪もさすがに平静を装えず、苦笑する。
「静かに」
「無理だろ!」
 あろうことか、陰茎の窪みに、その耳かき棒の先端を差し込まれたのだ。耳かきの先に軟膏が塗られたことでおかしいと気付くべきだった。引っ掛かるような抵抗感のせいで悲鳴を上げれば、角度を変えて押し進める。するすると、嘘のように沈んだ。
「嫌だ!森雪!」
 ぞくぞくと背筋に走る震えと共に、下腹が渦を巻かれたように熱く痺れる。毛穴から吹き出す脂汗はひっきりなしにポタポタと垂れ落ち、床に黒い染みを幾つも作る。
「い……や……森、雪……」
 初めの勢いはすぐさま萎み、苦しくて息さえ出来なくなって、堪らず吉森は目を瞑って奥歯を噛み締める。
 必死に耐える吉森の姿に何かを見出したらしく、森雪は意地悪く口元を吊り上げると、先端の棒をぐりぐりと回転させた。
「あああああ!嫌だ!」
 瞼を閉じることすら許されない。眦に浮かぶ涙を拭う余裕さえなく、吉森は洟まで垂らして泣き出す。最早、恥など何だのと矜持に構っていられなかった。
「痛い痛い痛い!もう……やめて……嫌……!」
 棒が引き抜かれる。願いは叶えられた、と思ったら違った。安堵したのも束の間、再び潜る。その摩擦力が半端なくて、吉森はわけもわからず首を横に振り続ける。膨れ上がった尿道口を行き来して、受け入れている形ごと醜く変化する。卑猥な光景に、涙は止まらない。ジンジンと痺れるのは、痛みのせいだけではない。
「嘘……だ!もう……いや、嫌……だ」
 無理繰り広げられる背徳行為に、感じてしまっていた。悶えて、吉森はとにかく放出することだけを考える。
 煽るように森雪は根元から握ってきた。上下に擦られると、より異物感を意識させられた。
「ひあああああ!」
 冷めた目が、拷問によってねじくれた部分に落ちる。乱れ狂う痴態に対し、静まり返ったその態度が、余計に吉森の体の炎を渦巻かせる。とにかく、この熱ごと外に吐いてしまいたい。どくどくと脈打つ血は全身を駆け巡った。
「どうしました?もう限界ですか?」
 わかっているくせに、森雪は解放を与えない。弱い部分を攻められ、今、命令されればなし崩しに森雪に従ってしまうのは確かだ。
 こんなこと、有り得ない。見下していた相手から陵辱され、しかも考えにも及ばなかった行為で、それが快感になるなんて。悪い夢を見ているとしか思えない。
「もう、事件には首を突っ込まない。約束出来ますか?」
 森雪の声が遠い。羞恥と痛み、そして快感が頂点に達したとき、吉森は己の中の全てを解き放った。細い管を駆け抜ける感触はしたのに、しかし、吐き出せずに逆流する。もどかしさに鳥肌が立つ。
「お願い。もう出したい!こんなの嫌だ!」
「この件から手を引く。さあ、言いなさい」
「嫌だ!絶対、言わない」
「それなら、このまま放置するまでです」
「鬼だろ、お前!」
 それでも、屈服してしまう言葉は口に出来ない。たとえなけなしの矜持を捨てようとしても、最後の最後で引っ掛かって、吉森という人間の変化を留まらせる。
「俺は……絶対、絶対……お前なんかに……」
 負けない。吉森は眼光を一点に集中させる。
 その的にされた森雪は、しばらく無表情で視線を受けていたが、ややあって小さく溜め息をついた。
「結局、あなたの思い通りだ」
 苦々しく吐き捨て、森雪は棒を引き抜いた。
 途端、吉森の先端から白濁が飛沫を上げた。内に溜まっていたもの全てが床に広がる。一滴すら皆無の状態になるや、吉森はぐったりと床にうつ伏せになり、ハアハアと荒い呼吸を繰り返す。なかなか心臓の動きは平常にならない。
 そんな状態の吉森を宥めるように、森雪の手が汗まみれの背中を撫でた。
「な、何故……こんなこと……を」
「最早、あなたを一人にさせておくわけにはいかない」
「ど……どう……して……」
「守っているからですよ」
「俺の……ことを……? 」
「当然でしょう」
 守る。一人にさせない。確かにそのための手段として、何かにつけて吉森を抱けば、目を離すこともなく直に腕の中に留めて置くことおくことが出来る。しかし、どんなに作戦だと諭されても、やはり吉森の体をいいようにする口実としか思えない。特に先程のような卑猥な行いは、完璧に森雪の嗜好だ。
「お、俺は……自分の……命くらい……」
「自分で守れると。随分な自信だ」
「ひあっ……」
 先程まで異物の入っていたものをぎゅっと握られて、飛び上がった。喉から変な声が出る。
「僕にこんなことをされて、抵抗すら出来ないくせに」
「それでも……それでも、俺は……兄なんだ。誰が……弟に……守られ……て、満足する……」 
「僕は、兄さんを守ると……」
 きっぱりと断言する吉森の目に、強い光が宿っていることを確かに見て、森雪はその先の台詞を区切らざるを得なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

処理中です...