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5-2 最上位種発芽編:王都強襲
261 もう逃げないよ
しおりを挟む「いつまで逃げるつもりだ……!!」
「うわっっとっと……」
魔族を連れていくような形でケトスから離れていき、お互いが戦い場所を作った……って言ってもここらへん来たことないな。どこらへんになるんだろ、ここは。
周りの建物は相変わらず壊されていて、大きな街路を挟んだ向こう側はまだ建物が残っている。
……魔族はここから門の方に移動をして行ったってことか。
「もう逃げないよ」
場所的にもここが良さそうだ。ここにしよう。ここなら広いし、人目に付く……ひとめにつく……うーん、まぁ、やるしかない。
僕以外の人を僕が演じて、僕より目立たせる。つまりこのお面をつけている間は本気を出してもいいんだ。別人格が~!! ってのをリアルにやる機会なんてないからな、ちょっとワクワクはしてる。
でもキャラは作っておかないといけないな、声も少し変える必要があるか……? ん、ん”ー……。
とりあえず男性じゃなくて女性っぽい感じでいってみるか、声もこの体ならまだ出来そうだし。声変わりもまだ迎えてないしな。
「なんだ、今更怖気付いたか」
「……?」
なんで? あ、色々と考え事してたからか。というか、待っててくれたんだ。案外優しいのか?
「怖気づくわけ。むしろぼ――わたしの攻撃がどこまで通用するかが楽しみでワクワクしてるよ」
「ワクワク、だと?」
「ウキウキでもいいぞ」
なんだか自分を解放したようでテンションが上がってくるな。
「ホザけ! 下等種族が!!」
お、剣を使うのか。魔法タイプじゃないみたいだな。
そして既に目は黒くなって、金色になってるから……ノアが魔素を解放してた時と同じ状態か。黒くなるの分かりやすくていいな。
──本気、か。
「ふんッ……!!」
凄まじい速度で連続的に振られた剣の衝撃波が、幾つもこっちに飛んできた。衝撃波。後ろは状態を保ってる建物がある。避けるのはダメか。
「すぅ……ッ!」
飛んでくる方向に沿わせるように武器を振るい、全ての衝撃波を相殺。理論上小刀の剣速でも行える。
重なりながら目の前に来た追加斬撃を全て小刀で殺し、こちらも同じように衝撃波を飛ばしてみた。
「はんっ、真似事を!」
同じシチュエーション。恐らく魔族は同じように剣で消すようにするだろう。それを予測し、一気に魔素を使って自己強化スキルの重ねがけを行い、地面を蹴った。
「プライドが高い奴は、次の動きが読みやすいっていうけど」
案の定、剣を構えている魔族が見えた。
「やっぱり」
じゃあ、試したかったことを試すか、と。
――って、アレっ? なんか魔素が感じやすい……。
なんだこれ、何が起こってる?
体が軽い、体に流れる魔素が明確に明瞭に分かる。
相手が纏う黒い魔素も同時に見える。
……つまりは、調子がいい。
違和感は違和感ではあるが、これはいい違和感だ。
「……これなら」
試したいと思っていたことを急遽変更することにして、魔素を線状に伸ばすことにした。
武器に魔素を纏うのを試したかったけど、せっかくなら挑戦だ。
「──」
空中の魔素と僕の魔素の差別化。
反発をするように。
自分の魔素が自我を持つように。
自然の魔素に包まれるように……。
「シッ!!――どうだ!! 同じように相殺をしてやったわ!!」
魔族が何か言ってるがそんなことどうでもいい。
とりあえずは、想定通りに動いてくれたみたいだな。
――ピンッ。
「できた……っ!」
お世辞でも綺麗だとは言えない。
ぼやけてるし、長さも足りない。
だけど今まで練習していた中で、最もいい出来だ。
「貴様、なにを……」
「以前にオマエら魔族が見せてくれた技さ」
伸ばした線に魔素を追加投入後、膨張させて魔法へと転換させる。
僕はこれが成功した時にやってみたい技があった。この技なら見栄えがいいと思う。
「……『熱界ノ光』!」
櫛が重なるように、キレイで、殺傷性の高い魔法の出来上がりだ。
「ヌゥッッ――ッ!!!」
魔族を挟む形で伸びた魔素ラインが膨らみ、魔法陣が線状に所狭しと展開されていく。
その魔法陣から出た熱光線が魔族の身体を貫く。上へ、下へ、どこに逃げても逃れられないように──拘束するように。
できた。
ようやく実現したかったことができた。
「でも……なんでできた?」
できた喜びと、なぜ出来たのかが理解ができない。
未だに魔素が多くなった気がするし、僕の魔素も自然の魔素も敵の魔素も感じやすくなったような気がする。
前もなんかこんなことあったよな、いつだっけ……。んぅ~?
「フンヌッ!! 効かぬッ!!」
「……おぉ、マジ?」
「この程度の魔法……! やはり所詮は人間!!」
意図せずに出力を絞っていたのか? あ、魔素を線状にすることに意識を持っていかれていたのか。
「なるほど」
魔法は中級の魔法技術を応用した複合魔法。だから使用された魔素は予想以上に多かった? そもそも魔素は足りていた?
体の外に出た魔素はどうなるって言うのもまだ知らない。
そもそも座標を連続指定で補うことが出来る技術じゃないのか?
頭がグルグルする、思考が同時に三つも四つも幾つも処理をしていく。
次には成功するように勝手に計算がされていく。
「……気分が悪い」
ぷはと口をあけた。
熱がこもって仕方ない。
お面の下で、ぼくはベロを出した。
「うぇ、自分が、自分じゃない気分だ」
でも、この感覚ならまだできるはず。いけるだろう、ぼくの身体よ。
反応なんて返ってこないけど、分かる。いけるはずだ。
それじゃあ、次は本来やろうとしていたことをしてみよう。
――魔素の放出を最大限に。
力を込めると、よく分かる。
いつもの僕が出せる最高よりもさらに上。本当に、この体はぼくの身体なのか……?
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