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2-6 少年立志編:ティナちゃんのテスト
131 斧はいいぞ
しおりを挟むナグモさんとの戦闘訓練で色んな武器を使って相手してくれていた時の話だ。
その時、「斧というのは破壊力がある武器です、大剣よりも槍よりもね。そしてその魅力は使い方が簡単な所です、力任せに振る、これだけで済みますから。先読みは必要ですが、当たれば確実に大きな傷を与えれますよ」と説明してくれた。
それにケトスやイブが言っていた「間合いに入っても力任せに振れば解決する! だから魔物は斧をよく使うんだよ」という言葉。
地面に深く刺さるほどの鋭利な刃先、重心が先端の斧に偏っているから……みんなの言う通り、それこそ振り回すだけで良さそうだ。
持ち手を1番根元にまでやり、ウッグがしていたように地面に引きずる形で持った。
様子が変わったのに気づいたのか、優勢なのには変わりないウッグ達が沈滞をしているのが見える。
体はこれまで以上に損傷がひどく、頭からの流れてくる血液で右目も左目もぼやけてまともに見えない。左の上半身は魔素で何とか動かしているが、永遠に痛みが続いている。
僕が半歩ずつ進んでいくと、向こうも大股で1歩ずつ近づいてくる。
お互いの刃先が届くほどの間合いに入ると、武器を持っていないウッグが先手を切って両手両足で地面を蹴り飛び、近づいてきた。
その安直で慢心的な行動に、僕は意識的に上げていた口端が自然とさらに上がった。
そして次の瞬間、空中にいるウッグの体は一瞬で真っ二つになり、僕は体全体に血飛沫を浴びた。
『ガゥィィッ!!??????』
攻めようとしていた他のウッグは思わず立ち止まり、困惑したような目を向ける。ガサガサと木々を移動していた二体の動きも止まったようだ。
攻撃が当たれば簡単なことだ。油断して甘い立ち回りが出るとは思っていたから、来ると思った位置に斧を振るだけでこうなる。
最初の慎重に獲物を狩るようなウッグの姿は、今は形も何もない。
手負いの敵程気を付ける~とか何とかっていうことわざの大事さがよく分かるな。いい教訓になった。
斧を地面に刺し、一度地面に投げた小刀を拾って木の上の音が止まった部分に投げた。
2本投げたうち1つが当たったようで、一体は3mほどの高さから落下した。落下直後にもう一つを眼球目がけて投げて目を潰した。事実上の無力化だ。
地面を這い、目に刺さった小刀を抜いたがその目は開くことはない。
その状態だったらまともに石を投げることもできないよな。
斧も投擲技術もまだまだな僕だけど、勝つためなら使うし、全部に全力だ。
そうしないと弱い僕みたいな奴はお前達に勝てないんだ。
残りは三体、大剣と大斧と中遠距離のどこかにいる一体だけとなった。
本来なら一度様子見を挟む流れなのだが、左半身が動かない状態で戦闘が長引くとそれこそ負けてしまうから早期決着を望み、近づいていく。
接近しようとすると片腕のウッグが大剣を振り下ろしてきたが、一度体を止めてタイミングをずらして高く飛び、顎を下から上へ蹴り上げた。
『グガッ!!?』
「痛――ッ!」
口から血が吐き出て体に走る激痛に顔が歪むが、この機会を逃すわけにはいかない。
上体が伸びたウッグに追撃をして肩から上を斧で刎ね飛ばして倒すと、遅れてカバーに入ってきた斧のウッグと木から降りてきたウッグに下半身だけの死体を蹴って渡した。
(なんで降りてきたんだ? 戦略とかが機能しなくなったのか?)
味方の死体の重さに体をふらつかせているウッグの首を飛ばして、残りは斧のウッグだけとなった。
連携していた集団も、一度崩れたらこれほどまでに脆くなるものなんだな。
僕が斧を構えると、そのウッグの足が竦んでいるように見えた。
あの時のゴブリンと一緒か……今更怯えてもダメだろ。例え口を開いて懇願してきたとしても遅すぎる。
この世界にいい魔物はいるのだろうか。まぁいいか。そんなこと今はどうでもいい。
気持ちを落ち着かせ、僕は最後のウッグの体を切り二つに分けた。
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