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2-5 少年立志編:友人としての線引きを
123 上位血盟からの勧誘
しおりを挟む咄嗟に僕達は身構えると、それに対して手を横に振っていた。
「ははは、違うさ。私は元々人を見る目があって『鑑定』は持ってないんだ。長年培ってきたモノでね。ぼんやりとだけど人の得意なものが分かるんだ」
「オーラ……?」
「魔素の形状というか……説明しづらいけどそんな感じかな。私は学者ではないから詳しいところまでは分からないんだ。――だけど、その様子を見ると当たってたみたいだね」
「あ……」
「わかりやすいね。そうなると……魔法剣士系とクラディス君の方は……分からないな、複雑過ぎて見たことがないな。ケトス君と一緒で魔法剣士……?」
魔素の形状という言葉を聞いて、一瞬『魔素理解』が頭に過った。『魔素理解』は『魔素感知』をパッシブにするほどのユニークスキルで、僕にもざっくりとした形状が魔素に見て取れる。
(この人も『魔素理解』を……?)
一人で話すログリオさんの言葉の裏を探っていると、さらに一方的な話が積まれていく。
「……あ、そうだ、だったらイブをお世話してくれていたお礼として君たちに教えを説こうか」
と言いながら笑って、ケトスの方に指をさした。
「まず、ケトス君。自分の素質とは違う素質をするな、って言葉を聞いたことあるかい?」
「……聞き飽きるほど」
「だろうね」
「だろうねって……」
ログリオさんから飛び出したケトスへ向けての言葉に、ケトスは表情を変えずに返答をしていく。
「なに、私も剣闘士なのに魔導士と治癒士の勉強をしているから、私がやっていることをケトス君がやってるのに否定する理由は無いよ。むしろ僕は推奨してる」
「あなたは推奨っていいますけど、大体の大人は否定してきますよ」
「そりゃそうだ、彼らは失敗しているんだから。失敗してる人から出てくるのは失敗談ばかりだよ」
「……だけど、大多数が失敗してることを」
「君が成功したらいいじゃないか。やりたい事をやることに理由なんてない、そうだろ? それとも君のソレは見せかけのモノなのかい?」
決して顎は上げず、対等に話すログリオさんからの言葉にケトスに刺さったのをなんとなく感じる。ケトスは人の言うことを適当に流して聞いている様な人だけど、目をしっかり向けて話を聞いてるのを見るのは初めてな気がする。
僕とムロさんの進路相談の時もこんなこと言われたな。
「励むといい。さっき会ったばかりの人に言われた言葉を信じろって言うのも中々だと思うがね」
「……いや、成功してる人がいるって知れて気が楽になりました」
「私以外にも剣闘士協会や魔導士協会の上位冒険者の中には居るんだよ。みんな並々ならない努力をした結果なんだけどね。鵜呑みにせずに気に止めといてくれ」
ケトスは若干モヤモヤした状態のまま頷いた。それを見ると今度はこっちを見て話し始めた。
「クラディス君もケトス君と同じような感じだね。でも、あまり見た事がない感じなんだよね……」
「だ、大丈夫ですよ! そんな、気を使わなくても」
「イブを預かってくれてたお礼だ。それに後続の育成の為にも何か導けれるような事を言わなければね」
そう言って再びジィッと見つめてくるログリオさん。
そんな見られたら……なんか、色々とバレそうで嫌だ。僕って顔に出るらしいし……。
悩みながらもなにか絞り出そうとしてたログリオさんを止めようとしたけど、何か失礼なことをしてしまうといけないと思って思うように体を動かせなかった。
「スキル……ではないか、コレは。いかんな、久しいから鈍っている」
「あのぉ……そのオーラとかなんとかにはスキルとかって見えるんですか?」
「見えない。どういう系統に秀でてるか、どういうステータスかって言うのがぼんやりとわかる程度なのだが……。君は何歳だ?」
「12歳くらいです」
「12歳か。ケトス君は?」
「15歳です」
「そうか、なるほどなるほど」
呟く声が小さくなって、しまいには目線を外して何かを考え出したようだ。イブにアイコンタクトをしてみても首を傾げるからログリオさんの反応を待つことにした。
「……2人は、今、血盟入ってるよね?」
「僕は入ってます」
顎に手を置いたまま確認するように言ってきた。それにケトスは普通に返す。
最初に「リリーとマーシャルとは血盟主同士仲良くさせてもらっている」という話をしていたから、僕とケトスがどこの血盟と仲がいいのかっていう情報はどこかで得ているようだ。
「……僕は血盟は入ってないですね」
「声をかけられてる血盟は?」
「ない……、です」
キッパリと言ったが、リリーさんに社交辞令的に誘われたし、エルシアさんにも話の流れで誘われた。あれはスカウトって言うより、なんて言うんだろう……予約というか、強くなったら入れてもいいよ? ってニュアンスがあると思う。
僕の言葉を聞いて、また考え出した様子をみせると今度は直ぐに顔を上げて僕の手を持った。
「な、なんです――」
驚いて顔が強ばると、被っていた帽子を取って僕の目線まで高身長の腰を屈めて、
「クラディス君。私の血盟に来るつもりはないかい?」
と笑いかけてきた。
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